皆さんこんにちは。
エンタです。
梅雨入りして、各地で大雨のニュースが流れる季節になりましたね。
この時期になると、毎年どこかで「盛土が崩れた」「斜面が動いた」という話が出てきます。
記憶に新しいのは令和3年7月の静岡県熱海市の土石流ですよね。あれが世の中を大きく動かしたと言われています。
閑話休題
今回は、その熱海の災害をきっかけに生まれたとされる「盛土規制法」の話です。
法律の話なので「うちは施工屋やから関係ないわ」と思いがちなんですが、いやいや、これがうちら法面・斜面をやる人間にこそ、大事な話です。
今回は条文を丸暗記する話ではなく、「現場で何が変わるのか」を現場の感覚でザックリ書いてみます。
ただ、私は法律の専門家ではないので、あくまで自分で調べて分かった範囲の話、という前提で読んでくださいね。

そもそも盛土規制法って、何がどう変わったん?
盛土規制法は、正式には「宅地造成及び特定盛土等規制法」と言うらしいです。
長いので、みんな通称で「盛土規制法」と呼んでます。
国土交通省の資料を見てみると、令和3年7月の熱海市の土石流災害を受けて、それまでの「宅地造成等規制法(旧宅造法)」を抜本的に改正する形で作られて、令和5年5月26日から施行されたとの事でした。
何が一番デカい変化かというと、調べた感じだと「全国一律で、土地の用途を問わず規制するようになった」という点。
昔の宅造法は、基本的に「宅地」を造る時の話だったらしいんですよね。
でも今回の盛土規制法は、宅地だろうが、森林だろうが、農地だろうが関係なし。
さらに、造成だけじゃなく「単なる土捨て」や「一時的な土石の堆積」まで規制の網がかかるようになったと書いてありました。
要は「危ない盛り方・捨て方は、どこでやってもアウト」になったって事みたいです。
「許可がいる/いらない」のラインはどこ?数字で押さえる

ここが一番よく気になるところですが、「で、結局どのくらいの規模からアウトなん?」って事ですよね。
横浜市や相模原市など各自治体が公開している手引きを見てみると、「宅地造成等工事規制区域」の中では、
おおむね次のいずれかに当たると、着手前に知事や市長の許可が必要になるらしいです。
- 盛土で、高さ1メートルを超える崖ができるもの
- 切土で、高さ2メートルを超える崖ができるもの
- 盛土と切土を同時にやって、高さ2メートルを超える崖ができるもの
- 盛土で、高さ2メートルを超えるもの
- 標高差30センチを超える盛土・切土をする土地の面積が、500平方メートルを超えるもの
- 土石の堆積で、高さ2メートル超かつ面積300平方メートル超、または面積500平方メートル超のもの
ぶっちゃけ、現場で「ちょっとした造成や土の移動でも、わりとすぐ引っかかる」ラインだなと思います。
高さ1mの盛土なんて、法面の仕事をしていたらそれ?まじで??どーでもよくない?って感じがします・・・
ちなみに、ここで一つ覚えておくと得をするポイント。
横浜市などの手引きによると、
都市計画法第29条の開発許可を受けて、その許可の内容に適合して行う宅地造成等の工事については、盛土規制法の許可が不要になる場合がある。
つまり「開発許可で既に安全が担保されている工事は、二重に許可を取らなくていい」という話しみたいです。
逆に言うと、開発許可の枠の外でちょっと土をいじるとか、単独で擁壁を作るといったケースの方が、むしろ盛土規制法に引っかかりやすいんだとか。
これは私の現場感覚の話ですが、「小さい工事だから大丈夫やろ」と思っていた現場ほど、後から「これ許可いるやつでした」となりやすい気がします。
最初の段階で当たりを付けておくのが安全かも知れないです。
我々みたいな専門工事の下請けでも、元請が許可を取り損ねていると現場が止まりますからね。他人事じゃないんですねw
※上の数字は宅地造成等工事規制区域での一般的な基準として書かれていたものです。
区域の種類や自治体ごとに細部の運用が違うようなので、実際の現場では必ず管轄自治体の最新の手引きで確認してください。
私自身、全自治体の原典まで突き合わせ確認はしていません。あくまで調べて出てきた代表的な基準として、です。

法面屋にとっては「仮設じゃ逃げられない」って事
なんで法面屋がこの法律を気にすべきかというと、許可の対象になった工事では「ちゃんとした恒久の構造物で土を抑えなさい」という話になる可能性です。
目黒区などの手引きの説明を見てみると、許可対象規模の切盛が発生して途中で止まってしまうような工事では、盛土規制法に基づく許可が必要になって、コンクリート擁壁などの設置が必要になるらしいです。
そして「山留などの仮設物で土を抑えておくことはできない」と書いてあった点です。
つまり、「とりあえず仮設で押さえといて、後で何とかする」が通用しにくくなったって事みたいですね。
ええええええええええって感じです。ほんと??
これ、うちら法面屋からすると、のり枠工・モルタル吹付工・植生工・排水工といった「恒久的に斜面を守る仕事」がきっちり要求されるようになる、という事の様です。。。。
さらに、規制区域には「特定盛土等規制区域」というのもあるらしくて、国交省の資料によると、これは市街地から離れていても、地形条件から人家に被害を及ぼしうる斜面地などが指定されるとの事でした。
要は、山の中の斜面でも対象になり得るって事みたいです。
山ばっかりやってるうちらには無関係…とは言えなくなってきましたね。
技術基準そのもの(のり面勾配、排水施設、段切り、締固めの基準値など)は、政令・省令や各自治体の技術基準で細かく決まっているようです。
いろんな部分で仕事増えるのは良いとは思いますけど、やり過ぎ感も・・・
現場が踏みやすい地雷ポイント(着手前許可・検査・記録・維持義務)

法律が絡むと、施工の進め方そのものに問題点が増えます。
現場で特に気をつけたいのは次のあたりです。
まず、許可は「着手前」に取る必要があるらしいです。
これ当たり前のようで、急遽だと「先にやっちゃう」可能性がありますよね。
無許可で進めるのが一番ヤバいパターンですね。
急遽土砂が出ると言った場合、先に許可を取るか、1m以下で平べったく伸ばすか!?w
次に、工事中の中間検査や、完了後の完了検査といったチェックが入るとの事でした。
だから施工の記録(締固めの管理、排水の施工状況、出来形など)をきっちり残しておくことが、後で問題回避出来るはずです。
そして罰則。
各自治体や国交省の説明によると、無許可工事などの悪質な違反には懲役や高額な罰金が科されて、
法人には特に重い罰金が科される仕組みになっているらしいです。
もう一つ見落としやすいのが、工事が終わった後の話。
規制区域内の土地の所有者・管理者・占有者には、その土地を常時安全な状態に維持する義務があるとされているそうです。
危ないと判断されれば、擁壁の設置や改造を勧告・命令されることもあるんだとか。
つまり「作って終わり」じゃなく、「その後もちゃんと維持される構造物を作る」という発想が必要ですね。
ここまで「規制が厳しくなった」「注意する事がが増えた」と脅すような事を書いてきましたが、本音を言うとですね。
これ、うちら法面を守る仕事をしている人間にとっては、悪い話ばかりじゃないと私は思っています。
仮設で誤魔化さず、ちゃんとした擁壁やのり面保護工、排水工を入れる工事が「当たり前」になる。
作って終わりじゃなく、維持できる構造物を求められる。
無許可や手抜きの安かろう悪かろうが、罰則と検査でふるい落とされる。
これって結局、「ちゃんと施工する業者の仕事が増えて、ちゃんと評価される」流れです。
世の中の災害が増えるたびに、斜面を守る仕事の重みは増していきます。
熱海の災害がきっかけでできた法律だと言われていますが、二度とああいう事を起こさない為の仕組みです。
だったら、その仕組みの中で一番きっちり仕事ができるのは、現場を知っている我々現場の人間なんじゃないかと。
規制を「面倒な縛り」と捉えるか、「自分たちの腕が活きる場」と捉えるか。
私は、後者でいきたいなと思ってますw
しかし、吹付の砂を山盛りにするんですが。。。www
それではまた。



