皆さんこんにちは。
エンタです。
法面の現場調査に行くと、削孔機の据付位置より先に、必ず頭を悩ませる事があります。
「これ、どうやって地上から上まで持っていくんだ」という話です。
閑話休題
グラウンドアンカー工や鉄筋挿入工は、削孔機を車の止まっている場所から法面上部の足場まで運び込めて、ようやくスタートラインに立てる工事です。
設計図に仮設の記載がどこまであるかで進めやすさは大きく違ってきますが、現場で実際に選ばれている運搬手段は数えると6通りに集約されます。
今日はこの6通りを1本に整理して、それぞれの向き不向きと、現場でつまずきやすいポイントを書いていきます。
①移動式クレーンで上げる|王道だけど通用しない現場も少なくない
まず真っ先に候補に挙がるのが移動式クレーン、いわゆるレッカーです。


ただ、現場に着く前から「今回もレッカーで」と決めつけてしまうと痛い目に遭う事が多々ありますw
移動式クレーンが機能しない現場には、だいたい共通のパターンがあります。
進入路そのものが狭くて車両が入れない、設置予定地の地盤が軟弱でアウトリガーを張り出せない、
周囲の樹木が邪魔でジブを振れない、機械のサイズに対して手配できるクレーンの吊能力が足りない、
垂直吊りしかできず斜め方向への前吊りができない、法面の高さや緩勾配のせいで作業半径が届かない、
そもそも敷地まで車両が到達できない、道路の縦断勾配がきつすぎる。
だいたいこの中のどれか、もしくは複数が重なって「使えません」という判断になります。
進入路の幅が確保できるかどうかは、他の何よりも先に確認すべき項目です。
あわせて見落とされがちなのが、大型移動式クレーンに取り付けられているセンサー類の繊細さです。

ジブ周りに集中して配置されているセンサーは、枝が触れるだけで誤作動や破損につながる事があり、見た目以上にデリケートな機械だと思っておいた方がいいですw
進入経路の途中に張り出した枝があるだけで、その先に進めなくなるケースも普通に起こります。
削孔機の重量・全長・搬入経路の3点をそろえて初めて、移動式クレーンが選択肢に入るかどうかを判断できます。
コンサルの計画図に25tクレーンが簡単に書いてある場合も有りますwww
②索道(集材機)で上げる|下ろせる場所は親ワイヤーの真下だけ
クレーンが届かない、あるいは進入路そのものが無い現場で使われるのが索道です。
仕組みとしては、法面の上方に一本の親ワイヤーを渡しておき、そのライン上を荷が行き来する形です。


動力側には大型のウインチがあり、これを使ってキャリアを山側・谷側へ走らせます。
ウインチのワイヤーはキャリア往復用とフック昇降用の2系統に分かれているのがポイントです。
実際の荷揚げは、キャリアを機械の真上に呼び込み、フックを下ろして削孔機の吊りリングに掛け、フックを巻き上げ、キャリアごと山側へ移動させ、法面上部の足場まで来たところでフックを下ろす、という順番で進みます。

索道の最大の制約は、荷を下ろせるのが親ワイヤーの真下だけという点です。ワイヤーが張られている間しか作業もできません。
親ワイヤーは容易に横移動できないので、たいてい施工法面の中央付近に固定して設置し、そこから左右に人力や小型運搬車で荷を振り分けるという運用が基本になります。
急勾配の現場ほど重量物の吊り下ろしそのものが危険を伴うため、なるべく荷を軽く分けたいというのが正直な本音です。
特に下ろす瞬間は緊張感が違います。
3t近いロータリーパーカッションを吊って下ろした事がありますが、あの感覚は経験した人でないと分からないと思いますw(メチャコワイ!)
発注者や設計コンサルは気軽に「索道でどうぞ」と言いますが、実際に組んでみると親ワイヤー直下という制約が施工計画全体を縛ってきます。
そのため受圧板のような重量物を索道現場で設置しようとすると、想像以上に手間がかかります。
③索道現場での重量物運搬|運搬車とカニクレーンの組み合わせで解く
索道現場で受圧板などの重量物をどう動かすか、という各論です。
まず前提として押さえておきたいのが索道自体の吊り荷重です。
現場で見かける索道は5.1t吊りか2.9t吊りのどちらかが多い印象です。
5.1t吊りであれば大型機械もある程度余裕を持って上げられますが、実際に多いのは2.9t吊りの方で、安全率を見ると実運用は2.5t程度が上限の目安になります。
例えば500kgの軽量鋼製受圧板を1枚設置するケースを考えてみます。
軽量とは言っても人力だけで動かせる重さではありません。
そこでまず足場上に、なるべく小型で受圧板が積める運搬車を索道で降ろします。

いわゆる不整地運搬車を足場に乗せておき、受圧板を積んで設置地点まで運ぶという流れです。
小型の不整地運搬車は見た目より軽量な機種が多く、索道現場のように足場上を往復させる用途にはよく合います。
次に必要になるのが、足場上で受圧板を吊るためのカニクレーンです。

カニクレーンは吊能力の割に本体自体が重いので、機種選定を誤ると足場側の負担が増えます。
参考までに、1.7t吊りクラスでも総重量1,290kg前後というモデルがあり、この程度が足場上での取り回しの目安になります。
索道現場では、工種選定の段階から仮設計画とセットで考えないと痛い目を見ます。
単価だけを見て「安いから法枠工」「安いから受圧板」と決めてしまうと、後から仮設費用が膨らんで結果的に割高になる事が珍しくありません。
こうした施工時にしか見えてこない仮設負担は、当初の見積もりに反映されにくく、元請側が持ち出しを被りがちな部分でもあります。
設計段階からある程度この負担を織り込んでもらえると、施工側としては非常にありがたいです。
④モノレールで上げる|通れても機械は通れない伐採幅の罠
みかん農園などで見かけるモノレールも、法面現場では立派な運搬手段の一つです。

小型機種でもおよそ500kgの積載が可能で、施工する法面を取り囲むように敷設されるケースが多いです。
ただしどのメーカーの製品でも最大登坂角度はおおむね45度前後にとどまり、地形の起伏によっては現場までかなり遠回りするルート設計になりがちです。
法面の外周、もしくはその近辺までしか到達できない事も多く、思ったほど施工地点の近くまで寄せられないというのが実感です。
鉄筋挿入工の現場でよく見るのは、最大積載量500kgクラスの1軸(レール1本)タイプです。
モノレールの終点に足場を接続し、そこから機械を横方向に移動させて施工位置に据え付けるという段取りになります。
レールの本数(1軸・2軸・3軸)によって積載荷重は変わり、機種によってはダンプやクレーンのオプションが付いていますが、リース費用はかなり張るのが実情ですw

索道より単純そうに見えて、実は運用面でけっこう大変なモノレール。
特に1軸タイプは台車の幅がおよそ600ミリ程度しかなく、削孔機側の幅がこれをはみ出すケースが多々頻発します。
モノレール業者は「モノレールが通れる幅」だけを基準に伐採するため、支障木が多少残っていても業者としては問題なしと判断してしまい、後から削孔機だけ通せないという事態になりがちです。
立木の多い山で削孔機を運搬するなら、経験上は最低でも1.2m程度の伐採幅を確保しておくと、ある程度は解決します。

足場材のような長尺物を運ぶ場合も、幅に余裕があった方がカーブでの取り回しが楽になり、レール沿いに吹付ホースなどの資材を這わせる際の作業性も上がります。
モノレール運搬は事故のリスクも相応にあるので、レール周辺の伐採幅を広めに確保しておく事が、視界の確保と安全性の両面で効果的。
設計段階でモノレールの荷台幅の倍程度を伐採対象にしてもらえると、支障木の扱いをめぐる後戻りが減るので助かります。
⑤張り出し足場とスロープ|チルホールで機械を引き上げる方法
移動式クレーンの作業半径があと10mだけ足りない、といった惜しい現場もあります。

こういう場合、無理に索道やモノレールを組むよりも、張り出し足場で解決した方が早い事が意外とあります。
しかも足場は設計上の数量に落とし込みやすいため、施工業者側の持ち出しが発生しにくいという利点もあります。
変更契約ってことですw

高低差を一気に稼げない場合は、足場側にスロープを設けて段階的に上げていきます。
右上がりのスロープ→踊り場→左上がりのスロープ→踊り場、というジグザグで高さを稼いでいくイメージです。

以前、このくらいの角度で機械を移動させた経験がありますが、率直に言ってかなり怖かったので、25度以下に収めるのを個人的な基準にしています。
引き上げに使うのはチルホールという製品です。

最大3t程度まで牽引できるので、たいていの削孔機であれば対応できます。
大型の削孔機はカニ歩き機能を備えた機種も多く、機械自体がスロープの上を歩いて登っていく事もできます。
その場合もチルホールを補助的に併用しておけば、万が一のスリップに対する安全マージンを確保できます。
設計コンサル側がこの組み合わせをあらかじめ計画に織り込んでくれていると、施工側としては本当に助かります。
ただ、コンサル側もこう言った移動は分からないと思うので相談してくださいw
⑥直上げ|やぐらとチェーンブロックによる最終手段
スロープを作るスペースすら確保できない、極端に狭い現場もまれにあります。

そういう時の最後の手段が、機械を真上へ垂直に引き上げる直上げです。
簡易なやぐらを組んで、チェーンブロックで機械を吊り上げていきます。
機械本体の重量に十分耐えられる強度でやぐらを組む事が、この方法の絶対条件です。
私自身がこの方法を実施したのは過去に2回だけです。
移動式クレーンが物理的に入らない、あるいは届かないという条件が重なった時に、苦肉の策として選びました。
この方法で一番重視すべきは、やぐら部分の剛性です。

チェーンブロックは、実際の吊り上げ荷重の2倍程度の能力を持つものを選ぶようにしています。
吊り上げの最中は、1m上がるごとに機械の下へ単管を差し込んでいき、万が一の落下時でもその高さで止まるように保険を掛けます。
作業エリアの下に人を入れない事、安全帯の着用を徹底する事は言うまでもありません。
チェーンブロック側の吊りワイヤーも、できるだけ太径で新しいものを選ぶと安心感がまるで違います。
1日がかりで上げるくらいのペース配分で、焦らずゆっくり進める方が結果的に安全です。
コストの面で見えづらい工種なので、足場の数量を厚めに見てもらうか、機械の上下移動を別途の作業項目として計上してもらえると助かります。
1tを超える削孔機を扱う場合は、やぐらのチェーンブロック取付部の強度が特に重要になります。
単管を三角形に組むのは強度的に不安があるため、四角形に組んだ上で100Hクラスの形鋼を併用する方が安全性は高くなります。
6つの方法をどう選ぶか|条件別の比較
ここまでの内容を、現場で判断する時に使いやすいよう一覧にしておきます。
| 方法 | 目安の積載能力 | 向いている条件 | 最大の弱点 |
|---|---|---|---|
| 移動式クレーン | 機種により数トン〜 | 進入路と設置地盤が確保できる現場 | 道路幅・地盤・草木・作業半径のどれか一つでも欠けると使えない |
| 索道(集材機) | 2.9t吊り/5.1t吊りが主流 | クレーンの進入路が無い急峻な法面 | 荷卸しが親ワイヤーの真下限定で自由度が低い |
| モノレール | 1軸で500kgクラスが主流 | 法面を周回できる地形、比較的軽量な資材 | 登坂角度45度前後の制約、伐採幅が機械幅と合わない |
| 張り出し足場+チルホール | チルホールは3t程度まで牽引 | クレーンの作業半径がわずかに足りない現場 | 足場・スロープの仮設量が増え工程に影響しやすい |
| 直上げ(やぐら+チェーンブロック) | やぐら強度に依存 | 敷地が極端に狭くほかの手段が組めない現場 | 時間がかかり、コストが見積もりに反映されにくい |
この表を見て分かる通り、優先順位を決める基準は「積載量」よりもまず「進入路と地盤が確保できるかどうか」です。
そこがクリアできれば移動式クレーン一択で話が早く済みますが、クリアできない時点で索道・モノレール・足場・直上げのどれかを選ぶ事になり、選択肢はぐっと狭まります。
結局、現場条件から逆算するしかない
6つの方法を並べてみましたが、どれか一つが常に正解という話ではありません。
道路幅、設置地盤、法面の高さと勾配、支障木の量、そして予算。
この掛け合わせによって、その現場で選べる方法は自然に絞り込まれていきます。
大事なのは、最初から移動式クレーンありきで計画を固めてしまわない事です。
調査の段階で「今回はこの条件なら索道が現実的」「いや、足場とスロープで届きそうだ」と複数の選択肢を頭に置いて現場を見る癖をつけておくと、後になって仮設で慌てる場面が減ります。
こういった仮設備の選び方は設計側からは見えにくい領域が多いので、
施工側から早い段階で情報を出しておく事が、無駄な持ち出しを防ぐ一番の近道だとおもいます。
それではまた。



