グラウンドアンカーの自由長部注入が重要な理由|加圧注入との役割の違い

皆さんこんにちは。

エンタです。

グラウンドアンカーの注入で、「加圧すれば強くなる」「セメントミルクが地山へ浸透する」と聞いたことはありませんか?

私も以前は、定着部で加圧するより、自由長部までしっかり注入した方がリスクを抑えられるのでは?と考えていました。

方向としては間違ってはいません。 しかし、調べ直すと「アンカー体の加圧注入」と「自由長部の充填注入」は目的が違うんです。 ココを一緒にすると、施工管理の話がズレます。

加圧した供試体の形だけでは強度を断定できない

加圧状態で硬化させたセメントミルク供試体
加圧状態で硬化させた供試体

コレ、中心へ向かうような跡が見えますよね。

パッカーを使って圧力をかけた状態でセメントミルクを硬化させた供試体です。形を見ると、加圧の影響があったことは分かります。

ただし、この写真だけで「圧縮強度が上がった」とは言えません。 強度を比較するなら、同じ配合、養生条件、材齢、供試体寸法で圧縮強度試験を行う必要があります。 見た目と試験値は別の話ですからねー

加圧注入は万能ではなく、地盤条件で効果が変わる

無加圧で硬化させたセメントミルク供試体
無加圧で硬化させた供試体

こちらは無加圧で硬化させた供試体です。普通に供試体を採取した時に見かけるような層状の外観になっています。

地盤工学会の「グラウンドアンカー設計・施工基準」では、加圧注入はアンカー体周辺の地盤条件に応じた適切な方法で実施するとされています。 つまり、「圧をかければ全部良くなる」という事ではありません。

(片山直樹氏)論文研究では、均質なモデル地盤を使った試験の範囲で、加圧によるグラウトの浸透は確認されなかったらしいです。 砂地盤と砂礫地盤ではグラウトの脱水が見られ、条件によって摩擦応力やグラウト強度が増えた結果も示されていました。

ここで大事なのは、その結果を全ての現場へ当てはめないことです。 論文自体も均質なモデル地盤での検討です。 自然地盤は亀裂、地下水、粒度、密度がバラバラなので、加圧の効き方も変わります。

別の土木学会論文では、砂質地盤ではグラウトの脱水によって圧力が周辺地盤へ有効に作用しにくく、 粘性土地盤では条件によって割裂が生じることが報告されています。加圧注入は、単純な「浸透」だけで説明できないと言う事です。

自由長部は抵抗体ではないが、充填注入はかなり重要

グラウンドアンカー工の加圧注入状況
グラウンドアンカー工の注入管理

アンカー体は、テンドンから受けた引張り力を地盤へ伝える部分。 テンドン自由長は、アンカー頭部に作用する引張り力をアンカー体まで伝える部分。

自由長部をしっかり充填しても、そこをアンカー体の代わりに周面摩擦抵抗へ算入する考え方にはなりません。(基本は定着部のみ) 自由長部が途中で地盤へ強く拘束されれば、テンドンが自由に伸びるという本来の機能にも影響します。

しかし、自由長部の充填注入が無い方がイイかと言うと違います。

基準書では、充填注入の目的を、自由長部シース外側と地盤の空隙をグラウトで埋めて防食機能を高めること、 孔壁周囲の地盤の緩みや風化を抑えることと説明しています。 2012年版の基準書では、防食構造Ⅱ以上のアンカーは充填注入を必ず行う扱いです。

なので正確には、「アンカー体は設計どおり確実に造成し、その後の自由長部も目的に合った方法で確実に充填する」です。 そして、この自由長部の摩擦が定着部の摩擦も担っているって事です。 自由長部まで注入して抜けてくるアンカーはそもそもの定着地盤からミスっていると言う事になりますよねw

 

それではまた。

【参考資料】

グラウンドアンカー工におけるパッカーの作り方(その1)

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