皆さんこんにちは。
エンタです。
先週末久々に金華山行ったんです。
後日ふくらはぎパンパンでw
やはり常に行かないと鈍りますね・・・
身体は正直なので特にそうですね。
心も体も常に使っていきましょう!!

閑話休題
以前、グラウンドアンカー工の緊張管理について「試験の時間は圧縮・短縮出来ますよ」と書いたところ、
「それはどこに書いてあるのか」「どういう解釈でそうなるのか」という質問をいくつか頂きました。
なので今回は、グラウンドアンカー設計・施工基準、同解説(JGS4101-2012、公益社団法人地盤工学会)を実際に開きながら、
適性試験・確認試験のどこが短縮できて、どこは絶対に短縮したらダメなのかを書いていきます。
先に結論だけを言うと、基準書に書いてある保持時間は「目安」であって「絶対」ではない、そしてその変更権限は責任技術者にある、という一点に尽きます。
ただし、短縮していいのは「管理値を満足している事が測定で確認できている場合」だけです。ここを勘違いすると、ダメですよw
そもそも適性試験と確認試験は何が違うのか
時短の話に入る前に、ここが曖昧なまま現場を回している方が結構いるので先に確認していきます。
設計・施工基準の第8章では、アンカーの試験を「基本調査試験(引抜き試験・長期試験)」と「適性試験・確認試験」に分けています。
ざっくり言うと、基本調査試験は設計するための試験、適性試験・確認試験は造ったアンカーが設計どおりの品質かを判定する試験です。
適性試験は「設計と施工が適切だったか」を見る
適性試験は、実際に供用するアンカーを多サイクルで載荷して、荷重〜変位量特性から設計・施工の適否を判定します。
本数は施工数量の5%かつ3本以上(基準8.4)。サイクル数は一般に5サイクル以上とされています。
確認試験は「設計アンカー力に対して安全か」を見る
確認試験は1サイクル載荷で、設計アンカー力に対して安全である事を確認する試験です。
対象は適性試験に使ったアンカーを除く全数(基準8.5)。
つまり現場で本数が一番多いのは確認試験なので、1本あたり5分縮めば全体では何時間も変わるのはこちらです。
解説表-8.1(同基準 書籍p.104)の比較を、現場で使いそうな行だけ抜き出すとこうなります。
| 項目 | 適性試験 | 確認試験 |
|---|---|---|
| 目的 | 設計と施工が適切だったか確認 | 設計アンカー力に対して安全か確認 |
| 実施時期 | 施工時の初期段階 | 施工時 |
| 対象本数 | 施工本数×5%かつ3本以上 | 適性試験分を除く全数 |
| 荷重サイクル数 | 5サイクル以上 | 1サイクル |
| 計画最大荷重 | ランクA:1.25Td/ランクB:1.10Td | ランクA:1.25Td/ランクB:1.10Td |
| 新規荷重の保持時間 | 1〜180分(地盤による) | 1〜15分(地盤による) |
| 履歴内荷重の保持時間 | 1〜2分 | 1〜2分 |
出典:グラウンドアンカー設計・施工基準、同解説 解説表-8.1
この表の一番下の行、ここが今日一番言いたい所です。後でもう一度出てきます。
「時間を縮めていい」と書いてある場所はどこか
質問の本命は「どこに書いてあるのか」です。基準書の該当箇所を順番に見ていきます。
①引抜き試験の保持時間は「目安」と明記されている
まず基本調査試験(引抜き試験)の載荷方法の項です。

ここには、付録表-8.2は計画時の各サイクルにおける荷重保持時間の「目安」であり、
責任技術者の判断によって同表の保持時間を変更する事ができる、と書かれています。
さらに続けて、試験時においてクリープ係数などの管理値が十分な値を満足しており、測定を継続しても変化がないと判断される場合には保持時間を短縮してもよい、とはっきり書いてあります。
②変位の「安定」の定義は3分間で1mm
では「変化がない」とは何をもって判断するのか。ここも書いてあります。

各荷重段階で変位が安定したか否かは1分ごとの変位量をプロットして判断し、
一般には荷重保持時間の最後の3分間の変位量の変化が1mm以下になった時点を、
変位が安定したとみなす事が多いとされています。
現場での運用としては、3分間で1mmを一つの物差しにすれば良いという事ですね。
ちなみに解説表-8.1でも、引抜き試験と確認試験の「変位の安定」欄は「1mm/3min以下」と書かれています。
③適性試験の保持時間も短くしてよいと書いてある
そして適性試験。付録8-4の「3)荷重保持時間」に、こう書かれています。
「基本調査試験の引抜き試験の試験結果によっては、試験における荷重保持時間を付録表-8.6に示す値より短くしてもよい。」

つまり、事前に引抜き試験をやっていて地盤の挙動が掴めているなら、適性試験の時間は基準表より短くしてよいと基準書で認めているわけです。
ここを知らずに、表の分数を一秒たりとも動かしてはいけない聖典のように扱っている現場が本当に多いです。
私も昔はそう思ってましたw
実際にどこで何分縮むのか|4つの短縮ポイント
理屈は分かったとして、じゃあ実務でどこがどれだけ縮むのか。私が現場でやっている順番で書きます。
ポイント1|履歴内荷重は1〜2分でよい(ここが一番)
適性試験は多サイクルです。0.4Td→除荷→0.6Td→除荷→…と、必ず前のサイクルで既に経験した荷重段階を通過します。
解説表-8.1では、保持時間を「新規荷重」と「履歴内荷重」に分けて整理していて、履歴内荷重の載荷保持時間は1〜2分とされています。
一度経験した荷重域をもう一度通るだけの所で、新規荷重と同じ時間を止める必要はないという事です。
5サイクルの適性試験だと、履歴内を通過する回数はそれなりの数になります。
ここを毎回15分止めるか2分で通すかで、1本あたりの拘束時間は全く別物になります。
簡単に書くと登りの時の新規荷重の時だけ慎重に行き、下りの時はジャンジャン行く。
ポイント2|ランクの設定を最初に確認する
適性試験の載荷方法(付録表-8.6)を見ると、ランクAとランクBで最小測定時間が全然違います。
| サイクル | 試験荷重 ランクB | 試験荷重 ランクA | 最小測定時間 ランクB(砂質土・岩盤/粘性土) | 最小測定時間 ランクA(砂質土・岩盤/粘性土) |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 0.40Td | 0.40Td | 1分/1分 | 15分/15分 |
| 2 | 0.60Td | 0.60Td | 1分/1分 | 15分/15分 |
| 3 | 0.80Td | 0.80Td | 5分/5分 | 30分/60分 |
| 4 | 1.00Td | 1.00Td | 5分/5分 | 30分/60分 |
| 5 | 1.10Td | 1.25Td | 30分/60分 | 60分/180分 |
グラウンドアンカー設計・施工基準、同解説 付録表-8.6(適性試験の載荷方法)
砂質土・岩盤のランクBなら合計42分、ランクAなら合計150分。
3倍以上の差です。粘性土のランクAに至っては最終サイクルだけで180分、丸3時間ですからね。
ランクは供用期間や構造物の重要度による分類(解説表-6.1)で決まるものなので、現場が勝手に落とすものではありません。
ただ、設計時点でランクAが妥当なのかどうかは、着工前に発注者・設計者と詰めておく価値が十分にある項目です。

試験計画書を出す前に確認しておくべきポイント、という意味でここに挙げました。
と言っても役所もこの数字見てもサッパリなので、スススーっと通って行きますw
ポイント3|計画最大荷重は「上限値」なので下げてよい
適性試験・確認試験の計画最大荷重は、
ランクA 設計アンカー力(Td)×1.25
ランクB 設計アンカー力(Td)×1.10
と規定されています。
そして付録8-4には、「基準で規定する計画最大荷重は上限値であり、試験は実際に供用されるアンカーを用いて行う事から、現場の実状に即して責任技術者の判断で、これ以下に定めてよい。」と明記されています。
私は山の状態・削孔時の状況を見て判断していますが、多くの現場で1.20倍を採用しています。
理由は単純で、定着荷重で抜けないと分かっているモノを、あえてそれ以上の力で引っ張り続ける必要があるのか?という所です。
適性試験の判定は「計画最大荷重は設計アンカー力より大きく設定されており、これに耐えられれば設計および施工が適性であると判定する」という考え方です。
とはいえ地震時荷重のように一時的(瞬間的)に大きな荷重が掛かる場面は現実にありますから、余裕はきちんと見た上で、その上限をどこに置くかという話です。
ポイント4|物理的に縮める|ジャッキ2台使い
ここからは基準書の話ではなく、完全に現場の段取りの話です。
緊張定着の作業そのものは、ジャッキを2台に増やすのが一番分かりやすく効果的。
試験機側の測定時間は減らせなくても、その前後の据付・盛替え・撤去の待ち時間が並行処理できるので、1日の本数が素直に伸びます。
もちろん人員と反力側の段取りが要りますし、狭い法面で2台掛けは無理な現場も多いです。
ただ「測定時間を削る」より先に「待ち時間を削る」方が、リスクゼロで効果が出ます。
物理的な時間を削りたいのであればそう言う手もあると言うことを覚えて置いて下さい。
逆に、絶対に縮めてはいけない所
ここまで短縮の話をしてきましたが、削ってはいけない線もはっきり決まっています。ここを外すと試験が試験でなくなります。
変位が0.5mmを超えたら「延長する」しかない
適性試験の判定では、最大試験荷重時に付録表-8.7の経過時間で変位量が0.5mmを超えた場合、付録表-8.6の試験時間を延長すると規定されています。
| ランク | 地質 | 経過時間 | 変位量 |
|---|---|---|---|
| A | 砂質土・岩盤 | 20〜60分 | 0.5mm |
| A | 粘性土 | 60〜180分 | 0.5mm |
| B | 砂質土・岩盤 | 10〜30分 | 0.5mm |
| B | 粘性土 | 20〜60分 | 0.5mm |
グラウンドアンカー設計・施工基準、同解説 付録表-8.7(試験時間延長の目安)
延長した場合の最大試験時間は、ランクAで砂質土・岩盤120分以上/粘性土360分以上、ランクBで砂質土・岩盤60分以上/粘性土120分以上とされ、
その時のクリープ係数αが2.0mm以下であればよい、というのが付録表-8.8の判定です。

クリープ係数は次の式で定義されています。
α = (Sb -Sa)÷ log(tb/ta)
Sa・Sbは時間ta・tbにおけるアンカー頭部変位量(mm)です。
つまり「安定しないのに時間だけ短縮する」はアウトで、安定しない時はドンドン時間を延ばすのが正解です。
私は最長30分程度を標準に置いて、必要なら延長ありという考え方が合理的だと思います。
まぁ実際のところ、動きがピタッと止まれば、それ以降はそれ程挙動はないので、それ以降は短縮すればOKです。
確認試験の判定は分単位でシビア
確認試験(1サイクル)の載荷方法と判定はこちらです。
| サイクル | 試験荷重 ランクB | 試験荷重 ランクA | 最小測定時間(砂質土・岩盤) | 最小測定時間(粘性土) |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 0.40Td | 0.40Td | 1分 | 1分 |
| 2 | 0.60Td | 0.60Td | 1分 | 1分 |
| 3 | 0.80Td | 0.80Td | 1分 | 1分 |
| 4 | 1.00Td | 1.00Td | 1分 | 1分 |
| 5 | 1.10Td | 1.25Td | 5分 | 15分 |
グラウンドアンカー設計・施工基準、同解説 付録表-8.9(確認試験の載荷方法)
判定は、砂質土・岩盤なら2〜5分の間の変位が0.2mm以下、粘性土なら5〜15分の間の変位が0.25mm以下で、クリープ係数が2.0mm以下(付録表-8.10)。
ここまで来るとお分かりの通り、確認試験は元々かなり短い試験です。
全数やる試験なのでこれ以上削る余地はほとんどありません。
確認試験で時間が掛かっているとしたら、それは測定時間ではなく段取りの問題です。
載荷速度は急がない
意外と見落とされるのが載荷速度です。
付録表-8.3では、増荷重時は計画最大荷重÷(10〜20)kN/min、減荷重時は計画最大荷重÷(5〜10)kN/minの一定速度が目安とされ、
荷重の増減を急激に行わないようにと明記されています。
「早く終わらせたいからポンプを一気に回す」は、時短ではなくデータが乱れる可能性はあります。
イイ感じのデータが出ない方は、上げ下げに気を使って毎回一定にしてみると良いと思います。
短縮の判断は必ず責任技術者の名前で行う
ここまで書いた短縮は、全部「責任技術者の判断で」という前提が付いています。
- 試験計画書の段階で「保持時間は付録表-8.6を基本とし、管理値を満足した場合は責任技術者の判断で短縮する」と書いておく(※これ必須)
- 0.5mmや0.2mmの判定値を超えた回は、迷わず延長した記録を残す(これは地山の影響もあるのでとりあえず)
この2つをセットにしておけば、後から「なんで時間が短いんだ」と言われても、記録で説明が付きます。
と言いつつも、時短したのは誰も知らない?元請が知っていたとしても、緊張計画書に時短しますと書いておけばOK
よく現場で、安定しているのに60分きっちり保持し続ける方がいます。
悪いとは言いません。
ただ、安定してしまえばデータは変わりませんから、その30分は誰の役にも立っていない30分なんですw
逆に、動き続けているのに時間が来たから終わりというのは、駄目です。
基準書は「時間を守れ」と言っているのではなくて、「安定を確認しろ」と言っている。
時計を見るんじゃなくて、変位計を見る。
結局そこに尽きるんです。
うちも偉そうに言えるほど完璧に出来ているとは一切言いませんが、時計だけ見て仕事をするのはそろそろ卒業したいですねw
それではまた。



