皆さんこんにちは。
エンタです。
先日古くからの友人が亡くなりました。
こう思うと大事な人には出来るだけ元気なうちに会っていた方がイイですね。
皆さんも後悔のないように!
閑話休題
以前、「アンカー工における地下水圧による砂の吹き上げ対策」というタイトルで、その1から4まで4回に分けて現場日記のような形で書いた事がありました。
今回はその内容を1本に直して、原因の考え方から実際にやった失敗、最終的にたどり着いた対策まで、通しで読めるように直しました。
そもそも何が起きているのか|二重管削孔で砂が「吹き上がる」症状
なぜ二重管削孔を選ぶのか
グラウンドアンカー工の削孔では、崩れやすい砂質土・砂礫層や地下水位の高い地盤で、外側のケーシング(アウター)で孔壁を保護しながら、内側のロッド(インナー)で削孔・排土を行う二重管方式が使われる事が多いです。
単管方式だと孔壁が自立せずに崩れてしまう地盤でも、二重管なら削孔と同時に孔壁を保護できるので、崩壊しやすい地盤での定番の工法という位置づけです。
凄い昔の、グラウンドアンカー工が日本に入ってきた当初はシングル削孔でグラウンドアンカーだったそうで、非常に苦労したそうです。
ただし、この2重管方式でも地下水圧そのものを消せるわけではないので、条件が悪いと今回書くような「砂の吹き上がり」が起きます。
まず、どういう現象が起きていたのかを書いて行きます。
現場条件
- 削孔径:φ135
- 全長:15m
- 機械:クローラー式パーカッション(RPD3A-130C3A)
- 土質:砂礫・砂
通常通り削孔を進めていくと、7mを超えた辺りから2m〜3mの区間で急にジャーミング(ケーシングが締まって重くなる現象)が出るようになりました。
削孔水も若干ですが孔口まで上がってきます。

原因はこの川砂利です。
アウターケーシングとインナーケーシングの隙間にこの川砂利がぎっしり詰まって、スイベル側から抜けなくなりましたw
この層を抜けると完全な砂層になり、内圧が高いのでインナーケーシングまでガンガン砂が入ってきます。
2重管の接続作業のあの短い時間でも、気を抜くとインナーの中に砂が入って詰まります。
その現場では13本のアンカーを施工しましたが、そのうち3本くらいはインナーの中の砂が抜けなくなって、インナーごと引き上げて回収する羽目になりました(もぉぉぉぉって感じw)
厄介なのはここからで、15mの削孔を完了させて検尺棒を入れてみると、残尺を差し引いても削孔長が13m程度しか確保できていないんです。孔内洗浄はしっかりやっているにもかかわらず、砂がケーシング内に吹き上がってきてしまう。

インナーを再挿入して掘り直し、心配なので余堀(予定より深く掘っておく事)も多めにして検尺棒を入れ直しても、結果はやはり1m程度砂が吹き上がっている。
砂層の削孔はこういう地味なこちら側(オペ)の心の消耗戦になりやすいというのが、シンドイ部分ですねwww
原因を考える|クイックサンド現象と川砂利の目詰まり
なぜ孔内で砂が吹き上がるのか、現場の感覚だけでなく地盤工学の考え方で説明してみます。
地盤工学の教科書的な考えでは、地下水位が高い砂質土の中で水を上向きに流そうとする力(浸透水圧)が土粒子の自重による抵抗を上回ると、土粒子が水中に浮いたような状態になり、地表や孔内に向かって砂が噴き出す現象が起きるとされています。
これは一般に「クイックサンド現象」や「ボイリング」と呼ばれ、砂の弱い部分を伝って生じるものは「パイピング」と呼び分けられます。(それがケーシング内で起きるんです)
二重管削孔の場合、削孔と同時にケーシング内外で水位差・圧力差が生じやすく、特に地下水位の高い砂層・砂礫層ではこの現象に近い状態が孔内で起きやすい、という事です。
この水位差が土粒子の抵抗力を上回るかどうかの目安を「限界動水勾配」と呼ぶそうですが、正直これを現場でいちいち計算しながら削孔している職人はほとんどいないと思います。うちも含めて、実際には「この深さ・この土質だとだいたいコレくらい吹き上がる」という経験則で動いているのが実態です。ただ、経験則の裏にどういう理屈があるのかを知っておくと、初めて当たる現場条件でも当たりを付けやすくなる、というのが私の考えです。

そこに輪をかけて厄介なのが川砂利です。この現場のようにアウター・インナーの隙間に噛み込むサイズの礫が混じっていると、スイベルから排出されずに詰まり、ジャーミングと吹き上がりが同時多発的に起きます。
来るタイミングがある程度読めるようになってからは、ケーシング内の掃除を怠らないようにする事で被害は減らせましたが、根本原因である地下水圧そのものは掃除だけでは消えません。

私がやらかした失敗2つ|水量不足のポンプ選定と余堀のワナ
原因が分かったところで、実際に私がやってしまった失敗を2つ書きます。
失敗1|水用ポンプとコンプレッサーの容量不足
最初、少し舐めていて鉱研工業のMG-5というポンプを持っていきました。
結果、水量が全く足りずスライム(削孔くず)の排出が追いつきません。
コンプレッサーも50馬力のものを用意していましたが、これもスライムを上げきるには力不足だと分かりました。
そこでMG-5からMG-10へランクアップしたところ、スライムの上がりが目に見えて良くなり、川砂利もどんどん排出されるようになりました。
水量が増えた事で、ある程度砂を押しながら削孔できるようになったという事です。

山の地盤と違って、砂層・粘性土層は特に水の量と圧力が必要になるというのが、河川が近い現場です。
ベテランの職人ほど自然に体で覚えている事なんでしょうが、こういう機械選定は暗黙の了解で終わらせず、きちんと明記して残しておいた方がいいですね~w
削孔径φ135クラスであれば、ポンプは最初からワンランク上を用意しておく方が、結果的に手戻りが少ないです。
現場に着いてから容量不足に気付いて機材を呼び直すロスの方が、よほど痛いですから。
大は小を兼ねるです!
失敗2|余堀のしすぎでアンカー体が1m沈んだ
削孔完了後、検尺棒を入れるとだいたい多い時で7mほど砂が上がってきていて、ケーシング内は砂でいっぱいになり検尺棒が入りません。
削孔長そのものは確保していても、このままではアンカー体が入らないんです。

そこでインナーを抜かずにケーシング内を水で満たし、MG-10で水を送りながら回転・打撃を加えて、水圧で押し上げられた砂を外に排出する作業を繰り返しました。
これを何度か繰り返すと排出される砂の量は減っていきますが、最終的にはやはり多少残ります。

このとき私は1m余堀(予定より深く削孔しておく事)をしました。これが失敗でした。
1m余堀すると、ちょうど定着長のあたりで砂が止まってくれたので、そこから置き換え注入でグラウトを充填し、孔口からグラウトが満タンになった事を確認してからアンカー体を挿入しました。
ところが、意外にもアンカー体が入っていかないんです。
置き換え注入の間に、孔内で逆流が起きていたようでした。

短いケーシングを継ぎ足して打撃しながら上下に揺すり、最終的にケーシングは回収できたのですが、アンカー体は余堀した1m分まで落ち込んでしまっていました。
原因はおそらくグラウトの加圧です。注入圧によって余堀部分の砂が押し出され、アンカー体がその分だけ沈み込んだと考えられます。
砂層は脱水が早いので、一度落ち込んだアンカー体を引き上げるのはほぼ不可能です。
しかも仮設アンカーだったのでポリホースの被覆が薄く、ワイヤーを巻いて引くと簡単に千切れてしまいます。
結局、緊張余長が2m必要だったところが1mしか確保できなくなり、余長を延長する対応を取りました。
面倒でしたが、これしか手がありませんでした。
砂質土での余堀は、ホドホドにしておくべきというのが、この失敗で学んだ一番の教訓(テヘペロ)
今のところの着地点|グラウト先行注入という対策
ここまでの失敗を踏まえて、現時点で私が現場で使っている対策を整理します。
| 対策 | 内容 | ねらい |
|---|---|---|
| 1.水量を増やす | ポンプを一段階大きいクラスに変更する(MG-5→MG-10等) | スライム・砂の排出力を確保する |
| 2.コンプレッサーを大きくする | 50馬力クラスでは砂層で力不足になりやすい | 削孔水と併用して排出を安定させる |
| 3.余堀はホドホドに | 過剰な余堀をしない | グラウト加圧によるアンカー体の沈み込みを防ぐ |
| 4.砂が安定するまで待つ | 洗浄・水押しを焦らず繰り返す | 吹き上がりの量が落ち着くのを待つ |
そしてもう一つ、私が実際にやって効果があった方法が「グラウト先行注入」です。
通常は二重管削孔が終わった段階でインナーケーシングを回収してからアンカー体を挿入しますが、あまりに砂の吹き上がりが激しい現場では、インナーケーシングの先端からグラウトを先に送り、その後にインナーケーシングを回収するという手順に変えました。
先にグラウトでケーシング内に蓋をするようなイメージです。
一般的なセメントミルクの単位体積重量は水セメント比によって変わりますが、水の比重1.0に対しておおむね1.8程度になります。
水よりは確実に重いので、地下水圧がそこまで強くない条件であれば吹け上がりにくくなる。
ただし水位が高すぎる、あるいは水圧そのものが強い場合はグラウトごと押し戻される事もあり得るので、万能ではありませんw
その場合はまた別の方法で。

この方法にはデメリットもあります。
- グラウトに直接アンカー体を挿入する形(いわゆるドブ付け)になるので、抵抗が大きくアンカーの挿入しづらい
- インナーケーシングから機械の送水ラインまで全てにグラウトが入るため、洗浄の手間が大きい

グラウトは砂に対してすぐに脱水するので、注入後の表面はカチカチに固まります。砂に対する加圧が効きやすいという事でもあるので、この方法でも十分に定着部を確保しながら施工できます。

なお、水圧そのものが高くグラウトが押し出されてくるような現場も実際にあります。
私も過去に1回だけ経験しましたが、それはそれで焦りました。この場合の対応はまた条件が変わってくるので、機会があれば別記事で改めて書きたいと思います。
砂層の吹き上がりは、機械のスペックだけでも、段取りだけでも解決しない、地味に面倒な相手だと思っています。
水量・コンプレッサー・余堀・グラウトの入れ方、この4つを地盤条件に合わせて組み合わせるしかないというのが、今のところ私が現場でたどり着いている答えです。
うちも毎回完璧にできているとは言いません。むしろ今回書いた失敗のように、現場ごとに新しい詰まり方をされて痛い目を見る事の方が多いくらいです。
それでも、失敗をその都度言語化して残しておく事が、次の現場での判断材料になるんだと思っています。
それではまた。



