鉄筋挿入工の頭部防錆油は本当に必要か|亜鉛メッキHDZT77と酸化劣化限界

皆さんこんにちは。

エンタです。

毎日暑いですねw

現場も朝から蒸し風呂みたいな状態で、こっちの体力の方が先に酸化劣化しそうです。

水分と塩分、しっかり摂っていきましょう^^


閑話休題

今回は「鉄筋挿入工の頭部に入れる防錆油(オイル)は、本当に必要なのか?」という話です。

以前から私は、オイルキャップの疑問や問題点をけっこう書いてきました。

今日はそれを、亜鉛メッキの耐用年数と防錆油の寿命という数字で、あらためて書きます。


オイルの酸化劣化限界って知っていますか?

「オイルにおける酸化劣化限界」って、聞いたことありますか?

防錆油は、金属表面を水分や空気、埃から遮断してサビを防ぐための油です。

ですが、油そのものが永遠に効き続けるわけではありません。

私の感覚で言うと、防錆油ってそのまま放置していると、1週間もあれば黒っぽく変色してきます。

これは管理者の方なら、だいたい経験でご存じなんじゃないかと思いますw(使った防錆油のペール缶のw)

下の写真は、防錆油の酸化劣化を色のグラデーションで並べたものです。

オイルの酸化限界

条件にもよりますが、頭部に入れて5年もすれば、けっこう劣化が進んだ色になってしまいますよね。

そもそも防錆油には、種類ごとに防錆できる期間の目安があります。

さび止め油はJISで種類が分けられていて、膜の性質や基油によってNP-0からNP-20まで区分され、膜厚が厚いものほど防錆期間が長くなるとされています。

つまり「防錆油を入れておけば無条件で一生安心」という材料ではなく、種類・膜厚・置かれた環境によって寿命が変わる、消耗品だという事です。

 

そもそも鉄がサビるのは、酸素と水分がくっついて、鉄が本来の安定した状態である酸化鉄に戻ろうとするからだと言われています。

防錆油は、その酸素と水分を金属表面から遮断する事でサビを防いでいるわけです。

ですが、油そのものが酸素や熱、埃と反応して酸化していくと、この遮断する力もだんだん落ちていきます。

気化性のタイプのように、時間とともに成分が飛んでいくものもあります。(クレ556の様なモノですね)

だからこそ「入れたら終わり」ではなく、「入れたところからカウントダウンが始まる」くらいに考えておいた方が、実態に近いんじゃないかと思います。

頭部の防錆油の実効的な寿命は、せいぜい5年程度と言われております。(グラウンドアンカーKJS協会)。

なぜなら、夏のくっそ暑い炎天下に晒され、最悪の場合は溶け出ていますよね・・・・

酸化は熱ドンドン進みます。

 

以前取ったアンケートでは62%が要らないと言う判断です。

防錆油の有無

ちなみに、このサイトの左側にアンケートのボタンがあります。

過去に「鉄筋挿入工の防錆油は必要か?」というアンケートも取りましたので、結果が気になる方はそちらも覗いてみて下さいw


防錆に一番うるさいアンカーですら、頭部の考え方は変わってきた

ここでグラウンドアンカー工の話を。

グラウンドアンカーは、法面の工種の中でも防錆・防食に一番うるさい工種です。

理由は、テンドンに高い張力がかかったPC鋼材を使っていて、腐食が進むと応力腐食割れや破断につながる危険があるからです。

だからグラウンドアンカー設計・施工基準(JGS4101-2012、地盤工学会)でも、供用期間2年以上のアンカーには、確実な防食(防食構造Ⅱ以上)を求めています。

同基準書では、頭部から引張り部にかけての防食が不十分だと、腐食による破断のおそれがあるので特に注意を要する、と明確に書かれています。

特に、定着具の背面や、引張り部との接続部といった境界部は、防食構造が不連続になりやすく、一番腐食しやすい箇所と言う事実があります。

それくらい、アンカーの世界は頭部まわりの防錆に神経を使っているという事ですね。

透明キャップ グリースレス
KJSグラウンドアンカー 透明キャップ グリースレス

アンカーの頭部の防食方法として、基準書(グラウンドアンカー工設計施工指針)では「頭部を防食性能のあるキャップで覆い、キャップ内に防錆油等の防食用材料を充填する方法が一般的」とされています。

ここまでだと「やっぱりアンカーも防錆油を使ってるじゃないか」となりそうですが、私が注目しているのはその先。

同基準書では、頭部に充填する防食用材料について「漏れたり、蒸発したり、沈降したりしないような構造・材料とし、後で補充できるような構造とする」とも書かれています。

つまり基準書自身が、充填した防錆油はいずれ蒸発・沈降しうる前提で、あとから補充する事を想定しているわけです。

要は、頭部の防錆油は「入れっぱなしで永久に効く材料」としては扱われていない、という事ですね。

そして最近では、そのアンカー頭部の防錆油についても「入れない方向でいいんじゃないか」という動きが多少なりとも出てきています。

防錆に一番うるさいアンカーの頭部ですらそうなのに、鉄筋挿入工はいつまで頭部に防錆油を使い続けるのか?というのが、今回の私の問題提起w(何回言うねんって?w)

オイルキャップ


鉄筋挿入工の鉄筋はHDZT77メッキで50〜100年は錆びない

鉄筋挿入工(ロックボルト工)側の防錆はどうなっているのか。

鉄筋挿入工の鉄筋は、仮設で生材(メッキ無し)を使うケース以外は、溶融亜鉛めっきが基本です。

付着量は、よくHDZT77が指定されます。

これはJIS H 8641(溶融亜鉛めっき)の区分で、改正前の旧HDZ55に相当し、付着量で言うと550g/㎡以上、膜厚で言うと77µm以上のクラスです。

もともと「過酷な腐食環境下で使用する」ことを想定した、亜鉛めっきの中でも最上位クラスの仕様ですね。

では、この付着量でどのくらい持つのか。

溶融亜鉛めっきの耐用年数は、日本溶融亜鉛鍍金協会の大気暴露試験データをもとに、次の式で目安が計算できます。

耐用年数 = 亜鉛付着量 ÷ 腐食速度 × 0.9

 

この式は、亜鉛皮膜の約10%が残った時点で素地からサビが出始める、という前提で組まれています(JIS H 8641の解説による)。

この式に、付着量550g/㎡と、環境ごとの亜鉛の腐食速度を当てはめると、同協会のデータではおおむね次のようになります。

メッキ 環境別対応年数
一般社団法人 日本溶融亜鉛鍍金協会

田園地帯なら腐食速度が小さく、耐用年数はおよそ110年

都市・工業地帯でも、およそ53年

海岸地帯でも、およそ45年

私たちが施工する山間部の法面現場は、環境としては田園地帯に近い場所が多いです。

そう考えると、HDZT77のメッキ鉄筋なら、条件次第で100年近く錆びない計算になります。

厳しめに見ても、生材以外なら最低でも50年は堅い、というのが数字から言える所ですね。

ちなみに、橋梁のような大型構造物になると、素材が厚いぶん付着量も800〜2,000g/㎡くらいになり、耐用年数は半永久的とされています。

また、屋内であれば同じ地域の屋外より5倍以上持つとも言われています。

鉄筋挿入工の頭部は屋外の暴露環境なのでそこまではいきませんが、それでもHDZT77クラスのメッキなら、数十年単位でサビに耐える力がある、という事です。

シュミレーター作ったので遊んでくださいw

亜鉛メッキ 白サビ


寿命の短い防錆油に約2,500円かける意味|オイル無しキャップへ

ここまでを整理します。

鉄筋挿入工の鉄筋そのものは、HDZT77のメッキで50〜100年持ちます。

一方で、頭部の防錆油は、私の感覚では5年程度で劣化・変色していきます。

つまり、鉄筋よりも防錆油の方が、はるかに先に寿命を迎えるわけです。

100年持つメッキ鉄筋の頭に、5年で劣化する短寿命の油をわざわざかぶせている、という構図になっているんですね。

私の思いつきや、個人的感想ではありませんよww事実ですw

鉄筋挿入工・ロックボルトの分野でも、頭部と頭部背面を亜鉛めっきと飽和ポリエステル塗装の二重防錆にして、

「防錆油は不要」と打ち出した工法も有りますよね。(実際はそこまで要らないとは思いますけど)

その工法では、飽和ポリエステル塗装が50年以上の耐久性を暴露試験で確認しているとされています。

つまり、油に頼らずメッキと塗装で長寿命の防錆を成立させる、という事自体は、すでに現実にあるという事です。

にも関わらず・・・・(メーカー在庫の関係か?設計コンサルの責任か!?)

設計思想の面でも、根っこは似ています。

NEXCOの切土補強土工法設計・施工要領では、永久目的で使用する鉄筋には、鉄筋径に対して腐食代1mmを見込む、という考え方が遠い昔から示されていますw

コレは昔は生材だったので1㎜みられていますが、この考えは今も変わりません。

いずれにしても、メッキや腐食代で長期の耐久性を担保するという発想であって、頭部の防錆油に長寿命を期待する発想ではない、という事です。

アルミキャップ 頭部処理

では、その頭部のオイルキャップにいくらかかっているか。

設計単価で言うと、オイル入りの頭部キャップは約2,500円くらいします。

正直、オイル1つあたりのコスト自体はたかが知れています。

ですが、鉄筋が100年持つのに、5年で劣化する油に毎回お金と手間をかける意味は、やっぱり薄いんじゃないかと思うんですよ。

実務的にも、頭部に油を充填する作業はそれなりに手間ですし、油の容器は現場で廃材にもなります。

オイル入りは若干高い気がしますw

油を使わないキャップにすれば、その充填の手間も、容器の廃材も減らせます。

環境面から見ても、必要のない油をわざわざ現場に持ち込まない方が望ましいのは、間違いないでしょう。

だったら、オイル無しのキャップに切り替えていった方が、コストも手間もスッキリします。

そして環境に配慮したキャップという事ですよ!!

環境にぃぃぃぃ!!!はいりょぉぉぉ!!

大事ですよねww

 

特に設計コンサルの皆さんには、ここを見直してほしいと思っています。

昔からの図面をそのまま踏襲するのではなく、鉄筋挿入工の頭部キャップの防錆油は、一度ゼロベースで考え直してもらえると嬉しいですw

それと!+シース管+先端キャップの排除!
全く意味のない製品)意味のない製品に税金を使うなって事です^^

シース

現場だけを見ていると「昔からこうだから」で流してしまいますし、数字だけを見ていると現場で本当に効果があるのか?が分かりません。

私は、現場と設計の両方を突き合わせて、こういう「なんとなく続いている仕様」を1つずつ疑っていく事が、

うちらの仕事の質を上げる近道なんじゃないかと思っています。

防錆油そのものを否定したいわけではありません。

昔はそれで良かったんです。

しかし、今は違うと言うだけなんです。

効果ある場所にはしっかり使用し、要らない場所からは外す。

その線引きを、メッキの耐用年数と油の寿命という数字で一度考え直してみませんか、という話でしたw

この辺は役所も言える事です。

業務委託にばかり任せずに、しっかり現場を見ることが今後の日本の土木に必要な事なんじゃない?って思います。

ただでさえ役所が現場を知る事が無くなってきているので、全体の品質を保持(担保)しているのが施工業者になってきています。

 

それではまた。

亜鉛メッキの規格と厚みと付着量の話し

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