WBGT31度で現場は止まらない|調べて分かった熱中症対策の本当

皆さんこんにちは。

エンタです。

7月も後半に入って、毎日しんどい暑さが続いています。

と言うか地獄の日々です。(私は調査ばかりですが、それでもシンドイ)

閑話休題

今回はWBGT値と熱中症の話です。

ただ、「水分を摂りましょう」で終わる記事にはしませんよぉーーーーw

私が気になっていたのは、「WBGT31℃で作業中止」というルールが実際の現場でどう運用されているのか、この一点。

なので、ゼネコン50社分の公表資料と、うちが入っている現場で配られるルールを片っ端から見比べてみましたw

結論だけを言うと、31℃超の扱いはどこも同じで、基本は気をつけて作業!www(現場は止まらない!)

熱中症対策


2025年6月の義務化から1年、2026年は?

2025年6月1日に改正労働安全衛生規則が施行され、第612条の2が新設された事で、職場の熱中症対策が罰則付きの義務になりました。

対象になるのは、WBGT値が28以上または気温31℃以上の環境で、連続1時間以上、または1日の合計で4時間を超える作業です。

法面の吹付もアンカーの削孔も、夏場はまず全部これに引っかかりますw

ここで押さえておきたいのは、義務になったのは次の3点だけという事です。

・熱中症の自覚症状や他覚症状がある人を報告させる体制の整備(朝一の体温チェックや顔色?)
・症状の悪化を防ぐための措置の実施手順の作成
・その体制と手順を関係作業者へ周知する事

怠った場合は6か月以下の懲役または50万円以下の罰金という罰則が設定されています。

お気付きでしょうか。

「WBGT31℃で作業を中止せよ」という条文は、省令のどこにも書かれていません。あくまでも危険!って言うだけw

そして2026年3月18日に、厚生労働省から「職場における熱中症防止のためのガイドライン」が新たに出されました。

2025年の職場における熱中症の死傷者数(休業4日以上)は1,803人で、統計を取り始めた2005年以降で最多だったらしいです。(厚生労働省データ)

一方で死亡者数は19人と、前年の31人から4割ほど減ったとされています。

倒れる人は増えて亡くなる人は減った。初期対応の手順化が効いたのか?。


WBGT値の基準|25・28・31・33の4段階

WBGT値は気温・湿度・輻射熱の3つから計算する暑さの指標で、気温だけでは分からない日射と湿気を含んだ体への負担を数値にしたものです。

一般によく使われる区分が次の4段階です。

WBGT値 区分 一般的な対応の目安
25未満 注意 一般に危険は少ないが、激しい作業では発生する
25以上28未満 警戒 定期的に休憩を入れて水分と塩分を補給する
28以上31未満 厳重警戒 搬送者が急増するライン。休憩の頻度を上げる
31以上 危険 原則として運動・作業は中止とされる水準
33以上 熱中症警戒アラートの発表基準
35以上 熱中症特別警戒アラートの発表基準

25・28・31は日本生気象学会の「日常生活における熱中症予防指針」、33と35は環境省の熱中症警戒アラートの基準です。

ただし、この4段階はあくまで日常生活を前提にした指針です。

労働の世界では、JIS規格に基づいて身体作業強度ごとにWBGT基準値が別に定められていて、「作業がきついほど基準値は下がります。」

法面の吹付やアンカーの削孔は身体作業強度が高い部類ですから、日常生活の指針で言う「31℃で危険」より、実際にはもっと低い数値で危ないという事になります。

WBGT


ゼネコン各社の熱中症対策を並べてみた

公表資料を見た限り、目立つのは装備の義務化と、時間そのものをずらす動きの2つでした。

大林組は2026年5月21日に、7月から8月の建設現場の作業時間帯を午前7時から午後1時に変更する取り組みを始めると発表しています。

標準的な作業時間帯が午前8時から午後5時ですから、拘束9時間が6時間になるという事です。

同社は前年度から、現場作業に従事する全ての関係者にファン付き作業服と、暑熱下のリスクを検知して知らせるウェアラブルデバイスの着用を必須にしているとの事です。

清水建設は、現場に気象センサーを入れてWBGT値を「危険」「厳重警戒」「警戒」「注意」の4段階で色分けし、事務所のモニターに常時表示する運用を都内の現場で行っているらしいです。

数値を読ませるのではなく、色で分からせる。

外国人の作業員が多いので分かりやすいのは良いですね。

ただし、ここで一つ正直に書いておきます。

私が50社分を見た限り、「WBGT何度で作業を止める」という社内基準の数値そのものを公表している会社は、ほぼありませんw

出てくるのは装備・設備・体制の話ばかりです。

止める基準は外に出さない。これが今の業界の実態ですね。

危険でも気をつけて仕事w

31℃超は全社共通で「原則中止」という文言だった

では社内にも無いのかというと、そうではありません。

現場で配られる安全衛生管理計画や朝礼で読み上げられる書面には、ちゃんと書いてあります。

そして、その文言が50社ほぼ同じ。

厚生労働省と、中央労働災害防止協会・建設業労働災害防止協会などが主唱する「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」の資料に、

WBGT基準値を大幅に超える場合は原則として作業を中止する、という趣旨の記載があります。

ゼネコン各社の書面は、この一文をほぼそのまま書いているだけなんですよ。

だから全社同じになる。

独自に考えた基準ではなく、国が出した文言のコピーだからです。

現場のWBGT


WBGT31℃を越えても現場が止まる事は絶対にない

同じクールワークキャンペーンの資料には、「原則中止」の文言のすぐ後に、基準値を大幅に超える場所でやむを得ず作業を行う場合の留意事項が続いています。

単独作業を控えて休憩時間を長めに設定する事、作業中は心拍数・体温・尿の回数や色などの身体状況と、水分および塩分の摂取状況を頻繁に確認する事、の2点です。

「原則中止」の隣に、「やむを得ず作業を行う場合」の手順が最初から用意されているんです。

制度の設計として、止めない選択肢が想定されている!!!w

そこに省令の話が重なります。

義務になったのは体制整備・手順作成・周知の3つで、WBGT31℃で止めろという条文は存在しません。

だから31℃を超えても現場は止まらないし、止めなくても法令違反にはならないんです。

そして、これが一番ヤバイところなんですが、31℃は安全ラインではありません。

厚生労働省の資料によると、2024年の熱中症による死亡災害30件のWBGTの範囲は27℃から33℃だったとされています。

27℃で亡くなっている方が結構いるという事です。(高齢者も含まれるので)

31℃を「ここまでは大丈夫」の線だと思っている現場代理人が居るとしたら、相当に危ない認識なんですよねー

ぶっちゃけ、現場が止まらない理由は暑さの数値ではありません。

工期と金です。

命<工期

止めた分の日数を誰も面倒見てくれないから、止められない。

私もかつて元請けとして、そう判断してきた側の人間です。

エアコンの中で。

スペーサーを入れてモルタル吹付工


法面現場ならではの落とし穴

法面の現場には、平場には無い固有のリスクが4つあると私は思っています。

斜面は風が抜けない

切土法面は地形的にポケットのような形になっている事も多く、両側に尾根が張り出していると、谷側から風が入っても抜けていきません。

さらに法枠工が入っていると、格子の中で空気が滞留します。

モルタルを吹き付けた法面は日射で熱を溜め込みますから、そこから輻射熱が返ってくる。

熱を溜めた面に囲まれて風が抜けない。条件としては、かなり悪い部類です。

フルハーネスとファン付き作業服の相性

意外と語られていないんですが、フルハーネスとファン付き作業服は相性が良くありません。

ハーネスのベルトが胸から腰にかけて服を締め付けるので、ファンから送った空気の通り道が潰れます。

特に背中側と腰回りは、ベルトの真下でほぼ風が流れません。

ファン付き作業服を着ているから安心、という認識は法面では通用しないと思っています。

気休め程度ですよ。

しかも、ファン付き作業服は熱中症対策の根本対策では無いという事を知っておいて下さい。

あくまでも気化熱で涼しく感じる服wってレベル。

身体の深部熱を取るわけでは無いという事。

仮に法面上で熱中症になったら救出に時間がかかる

平場なら1分か2分で休憩所まで運べますが、法面はそうはいきません。

斜面の中腹で様子がおかしくなった人をロープで下ろして平場まで運ぶとなると、それだけで何分もかかります。

義務になった「症状の悪化を防ぐための措置の実施手順」を作る時に、ここをすっ飛ばしている人が多いんじゃないかと思います。

手順書に「涼しい場所へ移動させる」と書くのは簡単です。

斜面でのレスキュー作業

その移動に何分かかるのかを、実際に降ろして計った現場がどれだけあるでしょうか。

法面の緊急時手順は、降ろす手順とセットでしか成立しないですよね。。。。

最悪はモッコを用意してクレーンなどで降ろすと言う手順も必要かもしれないですね。

WBGT計をどこに置くか

WBGT計は、作業員が実際に作業しているエリアに置かないと意味がありません。

現場事務所の軒下や平場の日陰に置いた値では、法面上の状況を表していないからです。

 

私の実験結果では、平場に置いた値と、法面の上で測った値では1割ほど違います。

平場のWBGT 平場のWBGT

上記が今現在施工している現場のWBGTです。

平場

時間:11:35

湿度:37.4%

気温:39.9度

WBGT:32.6度

 

法面のWBGT 法面のWBGT

法面

時間:11:35 

湿度:35.5%

気温:47.3度

WBGT:36.4度

 

法面側が高く出ます。

写真は1日ですが、実際ここ数日は毎日測定しています。(毎日1割以上高い数字を記録しています。)

日射を受ける角度と吹付面からの輻射熱、それに風が抜けない条件が重なるからだと思っています。

※これは私が現場で測定数値であって、他の現場データに基づくものではありません。ご自身の現場で一度、平場と法面上の両方で測って比べてみて下さい。

なお、測定器は黒球が付いたJIS規格準拠のもを使用しております。

黒球が無い温湿度計では輻射熱が拾えないので、WBGT値としては成立しません。


工期に「作業不能日」を織り込み元請とお金の交渉

現場が止まらない理由は暑さではなく、止めた日を誰も見てくれないからです。要はお金の問題です。

逆に言えば、止めた日を最初から工期に織り込んでおけば、理論上は現場は止められます。

私が使っている考え方は単純で、7月から8月は稼働日数が減る前提で歩掛を組む、それだけです。

その根拠は、実はゼネコンが出してくれています。

大林組が発表した作業時間帯の変更、午前8時から午後5時が午前7時から午後1時になる、というやつです。

拘束時間で見ると9時間が6時間ですから、3分の1が消えます。

これは元請自身が「猛暑期は3割前後の稼働が減る」と認めているのと同じ事だと私は勝手に受け取っていますwww(都合が良い)

であれば、その3割分をどこかが負担しなければ計算が合いません。

下請けが黙って被る理由は本来は無いですね。

・猛暑期の実働が3割減る(元請の公表資料)
・ファン付き作業服とウェアラブルの装備費が人数分かかる
・休憩の頻度が上がる分、実際の手が動く時間はさらに減る
・作業不能日が出た場合の人工の空きを、自社が抱える

交渉の材料にはなりますよね。

会議中の現場担当者たち

言いにくい話なのは分かっています。

でも、単価の話を避けたまま「安全第一で行きましょう」と言っても、現場での施工会社は疲弊だけしてく。

止められない構造を放置したまま、精神論で31℃を越えさせているのが今の建設業。

危険だとみんな知っているのに、仕事しないと行けない。

まぁ実際はしょうがない部分でもあります。

気をつけてやるしか無い部分もあるとは思っていますけどね。

職人が倒れてから「基準は守っていました」と言っても、遅いですからね。

31℃という数字は、止める理由ではなく、交渉を始める合図だと都合良く私は思ってますw

 

そしてWBGTと言う数字はあくまでも目安であって絶対では無い。

いつもより一層気をつけて。

元請からすれば、役所に対しての指示しています、対策しています。

のアピールでしかなくて、役所もそれを分かっている。

そして下請けもそれを分かっている。

机上の空論を現場に落して書類にするだけの事なんでしょうね・・・

暑さにめげず頑張りましょう!

 

それではまた。

WBGT指数表を50度まで作ってみた結果

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