本当の熱中症対策とは|深部体温を下げるアイススラリーとAVA冷却で職人を芯からしっかり冷やす!

皆さんこんにちは。

エンタです。

先日から熱中症対策の話ばかり書いております。

書けば書くほど、今まで自分が信じていた対策が「効いている気になっていただけ」だったと気付かされる毎日ですw

閑話休題

ファン付き作業服が根本的な熱中症対策ではない(あくまでも補助)と分かった今、じゃあ何が対策になるんか?

そこをイロイロ探してみたんです。

そうすると、けっこう有るんですよ。

今回は飲み物編と、物理的に冷やす編で書いてきます!

 

長い!と言われますが、書く方もまぁまぁ時間掛かって書いてるので読んで下さいw

この記事なんて3日間書いてます(1日数時間w)

エビデンス取ったりするのも大変なんですよ~w

熱中症対策 寒冷紗

ファン付き作業服で下がるのは表皮温度|大事温度は深部体温

ファン付き作業服は、汗が蒸発するときの気化熱を利用して「涼しい」と感じさせるモノです。

風が当たって汗が飛ぶ、その瞬間に皮膚の表面から熱が奪われる。

だから涼しく感じる。

ココは間違いなく効果あります。

ただし冷えているのは表皮です。

体の中心部の温度、いわゆる深部体温はそのままなんです。(この部分は前回のブログや、その他研究論文で沢山有ります)

周囲の気温と作業強度によっては、涼しいと感じながらドンドン体温が上がっていく。

コレが一番タチが悪い。

本人は「今日は涼しいわ」と思って作業してるのに、体の中はしっかり茹だっているワケです。(茹でカエル状態です)

参考までに、労働安全衛生総合研究所が公開している資料では、

扇風機を使ったプレクーリングで作業開始時の深部体温が0.4℃低下したものの、水に浸かる方法と比べると深部体温を下げる効果は弱かった、とされています。

風を当てるだけでは限界がある、という事ですね。

そして2025年6月1日に施行された改正労働安全衛生規則(第612条の2)では、熱中症のおそれがある作業を行う際、

悪化防止のための措置として「作業からの離脱」「身体の冷却」「必要に応じて医師の診察または処置」などの手順をあらかじめ定めて周知する事が事業者に義務付けられました。

対象となる作業は、WBGT28度以上または気温31度以上の環境下で、連続1時間以上または1日4時間を超えて実施が見込まれる作業とされています。

法令の条文にも、はっきり「身体の冷却」と書いてある。

つまり国も、涼しく感じさせる事ではなく、実際に体を冷やす事を求めているワケです。

 

ちなみに深部体温がどこまで上がったらヤバいのか。

日本救急医学会の熱中症診療ガイドライン2024では、最重症のⅣ度が「深部体温40.0℃以上かつGCS8以下」と定義されているみたいです。

GCSというのは意識レベルの評価スケールで、8以下というのはもう呼びかけに応じないレベルです。

40℃という数字を見ると「そんなん滅多に無いやろ」と思いがちですが、平熱36℃台の人間が40℃まで行くのに必要なのは、たった3〜4℃の上昇です。

炎天下の法面で、防護服みたいな長袖を着て、重い機材を担いで斜面を登る。

コレを2時間続けたら、3℃くらい平気で上がります。

だから「上がってから冷やす」ではなく、「上がりきる前に落とす」なんですよ。

グラスゴー昏睡尺度の解説
グラスゴー昏睡尺度の解説

上記意識レベルの表を現場に張っておくといざという時に役に立つと思います!


飲み物編|アイススラリーは胃の中で溶けるから効く

まずは飲み物編です。

冷たい水や麦茶。

コレも効果アリです。

飲まないよりは遥かにイイ。

が、もっと効果があるんが、スラリー状の飲み物、いわゆるアイススラリーです。

アイススラリーというのは、細かい氷と液体が混ざったシャーベット状の飲み物です。

ポイントは、いかに胃の中で溶けないように維持させるか。

氷が溶けるときに周囲から熱を奪うので、胃や腸の中でジワジワ溶けてくれるほど、体の内側から熱を持っていってくれる。

コレが大事な様です。

まぁ氷でも良いんでしょうけど、現場でクラッシュ氷を確保するのもけっこう大変ですよねー。

そして氷の塊は喉を通らないので、一気に量が入らない。

流動性があるスラリーの方が、量も入るし粘膜に触れる面積も稼げる、という理屈らしいです。

休憩中の作業員 アイススラリー

研究で出ている数字はけっこう控えめ

「アイススラリーを飲めば深部体温がガクンと下がる」ワケではありません。

日本生気象学会が公開しているコラムによると、アイススラリー摂取による深部体温の最大低下量は、暑熱条件で0.36℃、涼しい条件で0.66℃、対照条件で0.13℃だったとされています。

つまり、涼しい所で飲んだ方が効果が大きい。

暑い所で飲むと、飲んでいる側から外気に熱を戻されるワケです。

コレ、現場で言うと「休憩所をちゃんと涼しくしてからスラリーを配れ」という話になりますw

炎天下の資材置場でスラリーを配っても、効果は半分になるかもしれない、という事ですね。

また筑波大学の研究グループが発表した内容として、アイススラリーを暑熱下の運動前に摂取すると、

常温の同じ飲料と比べて運動中の深部体温が低下し、過換気が抑えられ、脳血流量の指標が増加したとされています。

ただし一部の被験者では腹痛や下痢感などの胃腸障害が起き、その場合は効果が見られなかったとも書かれていました。

要は、一気飲みするなという事ですねwww

現場でも「効くらしいから一気に行け」とやると、腹を壊して逆に離脱者が出ますw

導入コストは正直メチャ高い

さくら製作所 アイススラリー 冷蔵庫 コンプレッサー式 マイナス5℃ 氷温対応 熱中症対策 省エネ GX22SM525-RH-W (ホワイト)

さくら製作所 アイススラリー 冷蔵庫 コンプレッサー式 マイナス5℃ 氷温対応 熱中症対策 省エネ GX22SM525-RH-W (ホワイト)
さくら製作所 アイススラリー 冷蔵庫 コンプレッサー式 マイナス5℃ 氷温対応 熱中症対策 省エネ GX22SM525-RH-W (ホワイト)

スラリーを作るには専用の冷蔵庫が必要です。

うちが入っている1次さんの現場では、コレを導入する事になりました。

実際、リース料がメチャ高いんですwww

最低2ヶ月以上の契約で、10万円/月〜。

機械本体もけっこうな金額なので、シーズンだけ使うなら借りた方がよさそうです。

正直、この金額を聞いた時は「うわ」と思いました。

でも熱中症で1人倒れて救急搬送、現場ストップ、労基署対応、となった時のコストを考えたら、まぁコレで少しでも良くなるのであれば安いモンかな、と。

“飲める氷”を簡単に作れる「アイススラリー冷蔵庫」。建設現場の暑熱対策をサポート(アクティオ)

会社において、常に作るのであればそれはそれでアリなのでトータルコスト考えると安くはなりますね。


物理編|AVAを冷やして深部体温を落とす

次に、物理的に冷やす方法です。

AVAって聞いた事ありますか?

動静脈吻合(どうじょうみゃくふんごう)、英語でArteriovenous Anastomoses、略してAVAです。

手のひら、足の裏、頬などにある、動脈と静脈を直接つないでいる血管の事らしいです。

普段は閉じているんですが、体温が上がると開通して一度に大量の血液を流し、そこから熱を逃がす。

言わば、人体に最初から付いているラジエーターですね。

このAVAを通る血液を冷やしてやると、冷えた血液が体内を巡って深部体温が下がる、という仕組みです。

この体温調節機能については、スタンフォード大学のクレイグ・ヘラー教授の研究グループによって解明されたとされています。

AVAはこのブログでも何回も取り上げているので知っている方は復讐の意味も込めて!

人体の天然ラジエーター AVA

12〜15度の水に15分|キンキンでは効かない

やり方はシンプルです。

12〜15度の水に、手のひらと足の裏を同時に15分程度つけておく。

コレだけです。

複数の資料を見た限りでは、10〜15℃程度の水に5〜10分つけるだけでも深部体温の低下がみられ、25〜30分程度続けると約1℃低下するという報告があるらしいです。

大事なのは、冷たけりゃ良いワケでは無いという点です。

水温が9〜10℃を下回るような、いわゆるキンキンの状態にすると、血管が収縮して血流が止まってしまう。

せっかく開いたラジエーターを、自分で塞いでしまうワケです。

なので氷水にドボンは逆効果。

「ひんやりして気持ちイイ」と感じる程度、ほどほどの水風呂程度で十分だそうです。

コレ、現場感覚とは真逆ですよね。

我々はどうしても「冷たいほど効く」と思って、氷をガンガン入れたがりますからw

現場に川があれば良い感じに冷えることが出来るのがその効果ですよ!特に夏の山の川はイイ感じの温度ですからね!

手を水冷に付ける作業員 AVA効果


驚いた熱中症の事実|「軽症は何℃」という体温基準は存在しない

ココからはシミュレーションの話です。

その前に、調べていて一番驚いた事がありました。

「軽症は何℃、中等症は何℃」という体温の基準、実は存在しないんです。

日本救急医学会のⅠ度〜Ⅲ度は、すべて症状で判定します。

めまい・立ちくらみがⅠ度、頭痛・吐き気・倦怠感がⅡ度、意識障害や臓器障害がⅢ度。

深部体温は診断基準に入っていません。

体温が出てくるのは、2024年に新設されたⅣ度だけ。

そのⅣ度の定義が上記の「深部体温40.0℃以上、かつ意識レベルGCS8以下」で、Heatstroke STUDYのデータでは院内死亡率23.5%と示されているそうです。

コレ、現場的にはかなり重要な話です。

つまり「体温計で36.8℃だったから大丈夫」という判断は、医学的には成立していない。

体温が正常でも、症状が出ていればⅡ度なんです。

我々が現場でやりがちな「熱ないから平気やろ」は、根拠が無かったワケですね。

👇👇コレ重要!👇👇

グラスゴー昏睡尺度の解説
グラスゴー昏睡尺度の解説

Ⅳ度以外は症状で見る|だから声掛けが効果的

裏を返すと、現場で我々が出来る判定は「症状を見る」しかない、という事になります。

体温計より、声掛けです。

返事がおかしい、足元がふらつく、汗が急に止まった、話が噛み合わない。

コレが出た時点で、体温が何℃かは関係なく現場から離脱させる。

法令が求めている「報告体制の整備」も、結局はココなんですよね。

自覚症状のある本人と、それを見つけた周りの人間が、誰に言えばいいのかを決めておく。

そして、症状が確実に見られるのであれば、即救急と、氷入り水風呂in!です

水風呂に入る作業員


手足冷却シミュレーション|重症では使い物にならない

AIでシミュレーションしてみました。

先ほどのAVA冷却で、15分間冷やしたら深部体温がどう動くか。

生理学的な目安(38℃未満=軽症域、38〜40℃=中等症域、40℃以上=重症域)に沿って計算してみました。

想定 開始 15分後 低下量 判定
Ⅰ度相当 38.0℃ 37.1℃ -0.90 ほぼ平熱域に戻る
Ⅱ度相当 39.0℃ 38.1℃ -0.95 下がるが受診は必要
Ⅲ・Ⅳ度域 40.5℃ 39.9℃ -0.65 危険域から出られない

※コレは公開されている研究値をもとにした試算です。実機での実測値ではありません。

恐らく重症になってからはすでい遅いので、全身を氷水に浸ける方がイイですね。

熱中症対策のガイドラインは0.15℃/分以上で冷やす事を推奨していますが、手足冷却で出せるのは0.043〜0.063℃/分。

推奨値の3割程度です。

重症の標準治療である氷水全身浸漬は、冷水浸漬(Cold water immersion)として冷却速度が毎分0.20〜0.35℃とされていて、40.5℃から10分で目標の38.0℃に!

やっぱ氷風呂の威力は半端ない!

救急が来るまでに復活する見込みも!!

なぜ重症域だと効かなくなるのか

重症域で低下が鈍るのは、発汗機能が破綻して、環境から熱が入り続けるためです。

体温が上がり過ぎると、汗をかく機能そのものが止まってしまう。

そうなると、体は自力で熱を捨てられない状態になります。

その状態で手足だけを冷やしても、入ってくる熱の方が多い。

蛇口を開けっ放しでバケツの水を汲み出しているようなモンです。

「休憩のたびにリセットして、そもそも38℃を超えさせない」

AVA冷却方でⅠ度相当の38.0℃から15分で37.1℃まで戻せる。

コレはかなり優秀な数字だと思っています。

建設現場での休憩時間 AVA冷却機

こんな冷却機を作りたいと思って試算してたら。。。。


現場に冷却システムを作るといくら掛かるか

で、このAVA冷却を現場のシステムとして作れないかと、イロイロ調べてみました。

ザックリですが、50万円ほど掛かりますw

内訳は、手足を入れるボックス、チラー(冷却機)、フィルター部、電源。

この4点です。

チラーで水温を12〜15度にキープして、循環させながらフィルターでろ過する。

現場に冷たい水を作るシステムがあれば、足湯のような感覚で使えます。

休憩の度に、手と足を突っ込んで15分。

作業服も脱がなくていい。

安全靴と靴下だけ脱げばいいワケです。

コレ、現場事務所での運用としてはかなり現実的だと思っています。

ただし作るとなると、考えないといけない事が幾つか出てきます。

まず水の管理です。

何人もの手足が入る水を循環させるワケですから、フィルターは必須。(川があれば循環させるだけで良いかも)

日々の入替えと清掃をルール化しておかないと、そのうち誰も使わなくなりますねw

次に電源。

チラーを回すので、現場の分電盤から取るのか、発電機を回すのかで段取りが変わります。

そして置き場所。

日向に置いたら水温が上がって話にならないので、テントか日陰が要る。

50万円という金額よりも、こういう「毎日回す手間」の方が、実は導入のハードルなんですよね。

仕事以外の手間って誰もが面倒くさがるんです。

50万円を高いと見るか安いと見るか

50万円という数字だけを見ると、正直「高いな」と思います。

工事現場でいうと、足場の一部を組む程度の金額です。

ただ、この装置が防ぐのは1人、2人以上の現場からの離脱。

熱中症で1人搬送されたら、その日の作業は一気に落ちるか、最悪は止まります。

事故報告、元請への説明、労基署対応、翌日以降の人の手配。

現場が1日止まった時の損失を計算したら、50万円という数字の見え方は変わってきますよね。

そして何より、人が倒れるという事自体が一番の損失です。

そこにお金を掛ける事を、私は無駄だとは思っていません。

午前中に上がりきった深部体温を、昼休憩で一旦リセットしてから午後に入る。

コレが出来るかどうかで、夕方の事故率も変わってくるはずです。

熱中症対策


結局、熱中症対策というのは「涼しく感じさせる事」と「実際に体を冷やす事」を、キッチリ分けて考えないとダメ。

「予防する道具」と「治療する道具」も、分けて考えないといけない。

どうしても現場は「コレで何とかなる」と思ってしまいがちです。

ファン付き作業服も、日除けテントも扇風機も必要です。

でもソレは涼しく感じさせる側の対策。

深部体温という根本を対応して行くなら、飲み物ならアイススラリー、物理ならAVA冷却機(世の中にある??)

これを休憩のタイミングで確実に入れていくしかない。

うちも今年から手探りでやってみて、多分イロイロ失敗すると思いますw

冷やし過ぎて怒られるとか、リース料払って誰も使わないとか、そういう事は普通に起こるw(使えよ!)

でも、やってみないと何も分からんですからね。

現場の人間が試して、効いた効かなかったをまたブログに愚痴と共に書いていくw

 

それではまた。

ファン付き作業服は熱中症対策になるのか|深部体温と皮膚温の違い、サウナで分かる気化熱の限界

AVA血管を冷やす事で熱中症予防になるが、熱中症になった時の事も知っておく事!

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