皆さんこんにちは。
エンタです。
お盆も終盤ですが、私は普段通りアレコレ書類やってますw
この時期の炎天下は体もかなり削れますが、機械側も負けじと消耗していくんですよねw
閑話休題
今回は、ロータリーパーカッションの消耗品を「どこが減るのか」「なぜ減るのか」「いくらかかるのか」「どうやって延命するのか」という順番で書いていきます。
アンカー屋・法面の削孔をやっている方なら、全部見慣れた部品のはずです。
逆に言うと、見慣れすぎて「壊れたら替える」で終わってしまっている部品でもあります。
ロータリーパーカッションは消耗品のかたまり
ロータリーパーカッション(回転打撃式の削孔機)は、その名の通り「回して」「叩いて」穴を掘る機械です。
回転だけのロータリー式に比べて、硬い岩盤でも進みが早いのが最大の武器ですね。
ただ、その打撃が全部そのまま機械自身にも返ってきます。
ドリフター、シャンクロッド、カップリング、ロッド、ビット、ケーシング、スイベル、そしてハンマーを支えるカムフォロア。
どこを触っても「ここ、消耗品です」という部品ばかりなんですよ。
アンカー屋の施工単価が高いと言われる理由の大半は、正直ここです。
油圧ホース1本にしても、その辺の油圧ホース屋さんで買う一般品と比べれば、削孔機用は一般価格の3倍以上する物もあります。
恐ろしいほど高いですよねw

クリーニングスイベルとクリーニングアダプターの役割
そんな消耗品の中でも、特に高額でトラブルの多い部品から見ていきます。
まずはこれ、知っていますか?

クリーニングアダプターという部品です。

こちらの黄色い外観がクリーニングスイベルの全体で、先ほどのクリーニングアダプターはこの中に収まっています。
クリーニングスイベルというのは、ざっくり言えば「回っているロッドに、回っていない配管から水やエアーを送り込み、戻ってきたスライムを外に逃がす」ための部品です。
給水ポンプから吸水口を通してクリーニングアダプター経由でインナーロッドの中に水を送り、先端のビットから出た水が、ケーシング内径とインナーロッド外径のすき間を通ってスライムを押し上げてくる。
そのスライムを外へ排出する出口が、クリーニングアダプターの横に数カ所空いている大きめの穴、という訳です。
(部品の構成はメーカーによって呼び方が違います。鉱研工業さんの「アロー クリーニングスイベル」など、各社が同種の製品を出していますので、詳細は自社機の取説とメーカー資料をご確認下さい)
このとき厄介なのが、排出されるスライムです。
細かい物も大きい物も混ざった状態でパッキンの当たり面をこすりながら出ていくので、パッキンとスライムの間で摩擦が起きます。
このメチャクチャ硬い鉄の塊が、それで削られていくんですよ。
削られると当たり面が荒れて、パッキンの機能が効かなくなります。
そうするとクリーニングスイベルから漏れる。
多少の漏れなら大した事無いのですが、そのうちクリーニングスイベル本体まで壊れていきます。
このクリーニングアダプター+クリーニングスイベルのセット、うちが替えた時で30万ほどしました。
今はもっと高いです!もうまじでヤバイレベルで高いw
もの凄く高価な物なんです。

写真のクリーニングアダプターは、1.5㎜程度は削られていると思います。
ここまでいくと取替なので、もう使えないんです。
クリーニングスイベル(上の黄色い外側の写真)には、グリスアップ用のグリスニップルが付いています。
ココに毎日2回程度はグリスアップします。
それでも削られます。
消耗品なのでしょうが無いのですが、少しでも延命させたいのが業者の気持ちですよね。

エアー削孔がクリーニングアダプターの寿命を一気に縮める
そこで、これだけは極力やらない方が良いという削孔方法があります。
エアー削孔です!
スイベルを使用してのエアー削孔は、とてつもなく削ります。ドンドン壊れます。
2重管削孔をエアー削孔で行った場合、クリーニングアダプターの消耗が200時間以下になるそうです。
稼働時間を1日6時間として33日しか保たないって事ですから、1日約1万円捨てているようなもんです。
(この200時間以下という数字は、あるリース屋さんの整備士から聞いた、実機の整備実績に基づく話です。メーカーの公表値ではありませんので、その前提で読んで下さい)
理屈は単純です。
水堀りならスライムは水と一緒にドロっと流れて出ていきますが、エアー削孔では乾いた岩粉が高速で吹き出してきます。
サンドブラストと同じ事を、部品の内側で毎日やっている訳です。
そりゃ削れますよね。
ですから、出来るだけ2重管削孔は水堀りがオススメです。
どうしても水が使えない現場もありますが、水を減らしてエアーを加えるだけでもかなり違います。
ホコリもかなり抑えられるので、やはり水堀りが良いですね。
粉じんの話で言うと、粉じん障害防止規則でも、衝撃式削岩機を用いる作業などについて、発生源を湿潤な状態に保つ措置が定められています。
※条文番号の該当箇所までは私自身で突き合わせ確認していません。詳細は厚生労働省の粉じん障害防止規則の本文をご確認下さい。
機械の延命と作業員の健康保護が同じ方向を向いている、珍しく分かりやすい話だと思っています。
もちろん、水を使えば法面が不安定になる地質もありますし、排水処理の手間も出ます。
そこは現場条件との相談ですが、「エアーで掘ると機械が減る」というコストを最初から見込んでおくかどうかで、判断が変わってきます。
知らずにエアーで掘って、後から30万の請求を見て青くなるのが一番きついですからねw

主な消耗品と交換の目安を整理する
ここで、ロータリーパーカッション周りの消耗品を一度確認しておきます。
金額と寿命は機種・地質・使い方で大きく変わりますので、うちの体感と実績値としてお読み下さい。
メーカー公表の寿命ではありません。
| 部位 | 何をしている部品か | 減り方・壊れ方 | 当社での交換の目安(体感) |
|---|---|---|---|
| クリーニングアダプター | スライムの排出口。パッキンの当たり面を持つ | 内面がスライムで削られ、溝になる。割れる事もある | エアー削孔中心なら200時間以下という話も。水堀り中心ならかなり延びる |
| クリーニングスイベル本体 | 回転側と固定側をつなぐ | アダプターの漏れを放置すると本体まで痛む | アダプター2本~3本に1回は交換になる事が多い |
| シャンクロッド | インナーケーシングの打撃をロッドへ伝える | ねじ部の摩耗、打撃端面のへたり | ねじ部が減ったらリペアせず新品交換 |
| カップリング | アウターケーシングをつなぐ | ねじ部の摩耗、緩み、焼き付き | 同上。ねじが甘くなったら即交換 |
| ロッド | 打撃と回転を先端へ伝える | 外径の摩耗、曲がり、ねじ部の破損 | ねじ部が削れり、クラック入ったら交換 |
| ビット | 実際に岩を砕く | 超硬チップの摩耗・脱落 | 地質次第で大差。硬岩では消費が早い |
| ケーシング | 孔壁の保持 | 周面の摩耗、ねじ部の痛み | 地質と削孔長次第 |
| カムフォロア | ハンマー(ドリフター)をレール上で支える | 外輪の摩耗、ベアリングの割れ、ニップル不良 | 割れる前に、1箇所セット単位で交換 |
こう並べると分かりますが、ねじ部が減った物はリペアせず素直に新品を買う、というのが基本線です。
(リペアって出来ない事は無いんですが、弱くなるので基本出来ないと思ってください。)
シャンクロッドのねじ部摩耗、カップリングのねじ部摩耗などは、直そうとしないで新品買って下さい(笑)
何でもかんでもリペア出来るわけは無いので。
一方で、平滑な当たり面を持っている部品、つまりクリーニングアダプターのような部品には、表面を作り直せる可能性があります。
実際にリペアに出してみた結果を、次で紹介します。
消耗品のリペア(表面再生)は本当に使えるのか
以前、このボコボコになった表面を綺麗に復活出来る技術があると聞きました。
しかも、買うよりは安く、加工後は加工前よりも硬くなっていると。
という事で、1回試してみることにしました。
先日、そのクリーニングアダプターが加工から戻ってきました。

↑↑↑アフター
どうですか?

↑↑↑ビフォー
あの溝が無くなって帰って来ました。

↑↑↑アフター
ツルッツルです。

↑↑↑アフター
リペアした箇所はしっかり分かります。
触った感じでも若干の差異がわかります。
この精度は1/100レベルなので、パッキンにしたら問題無さそうです。

↑↑↑ビフォー
このボコボコが綺麗になって帰って来たので、見た目は満足です。
リペアで気を付けるべきは「母材が痩せる」事
問題は強度です。
と言うのも、このリペアの方法は、一度母材を若干なり削ってから表面を作り直すんです。
母材を削ると言うことは、当然そこは薄くなるので、全体強度が低下するという事です。
表面処理そのものは純正品のメッキよりも高強度い、という説明でした。
一般論としても、耐摩耗を狙う表面処理には溶射(特にHVOF=高速フレーム溶射)による超硬系コーティングがよく使われ、
硬質クロムメッキと硬さは同程度でも耐摩耗性は数倍優れる、と溶射業者の資料で説明されました。
※これは溶射加工業者の技術資料に基づく一般論で、今回うちが出した部品の工法まで特定したものではありません。依頼の際は加工内容と皮膜の種類を業者に確認して下さい。
ただ、表面がいくら硬くなっても、結局は母材が壊れればダメです。
削って盛る以上、リペア回数は2回程度が限界ではないかと思っています。
クリーニングアダプターが折れるのは大体が穴の部分なので、リペアした平滑面が折れる事は少ないと思われますが。。。
一度使って見ないと分からないので、しばらくは実験ですね。
とはいえ、リペアの金額もソコソコします。
新品40万~に対して劇的に安いという程ではないので、「新品を買った方がイイ部分もある」というのが正直なところです。
もう一つ、忘れないで頂きたいリスクがあります。
クリーニングアダプターが孔内・機内で割れた時は、かなりやっかいです。
取り出すのに困難を極めますので、寿命ギリギリまで攻めるのが必ずしも得ではない、という事です。
安く延命したつもりが、1日現場を止めて回収作業、では話になりませんからね。

カムフォロアはロータリーパーカッションの定番消耗品
アンカー屋には見慣れた部品ですが、これが壊れると大変な事になります。

全く知らない方もいると思います。
コレはカムフォロアというモノです。
ロータリーパーカッションのハンマー(ドリフター)を支え、レールの上を走るベアリングです。

上記写真の様に、前後左右のカドに付いてます。
左右に揺れても必要以上にはぶれず、機械の摩擦を最小限に抑えてくれるわけです。
部品としてのカムフォロアは、いわゆるスタッド形トラックローラで、NTNやNSKがカタログを出している一般的な機械要素部品です。
削孔機のカムフォロアは、まさに衝撃荷重を毎日食らい続ける使い方です。
「グリースをこまめに」というのが絶対欠かせない1日の仕事です!

古くなってくると、グリスニップルも駄目になり、中のベアリングも割れてきます。
写真のカムフォロアは割れてはいませんが、場合に寄ってはバキバキに割れます。
それくらい大きな力が加わっているんです。
カムフォロアは1箇所セットで交換する
そんな重要な部品ですが、実は結構高価なんですよw
取付箇所が4箇所有り、1箇所に3個使用します。その為、全部で12個いるんです。
壊れた箇所から交換していけばよっぽど大丈夫ですが、変えるなら1箇所セットで変えた方が壊れにくいです。
理由は単純で、1個だけ新品にすると、その1個に荷重が集中するからです。
外径が減った古い2個と、外径が出ている新品1個。
どちらがレールに当たるかは、考えるまでもないですよね。
だいたいですが、うちで買った時で1個あたり4,500円前後でした。
12個全交換なら5万円台。1箇所3個なら1万4千円ほどです。
今はもっと高いです!ドンドン価格が上がっていますのでマジタマランです・・・
安い韓国製もありますが、耐久性が悪いです。(当社比)
国内メーカーだとNTNかNSKでしょうか。
打込グリスニップルがちょっと気に入りませんけど・・・w

打込ニップルは、抜けやすい・入れにくい・グリスガンが掛けにくいと三拍子そろっています。
ただ、ここでグリスアップをサボると、内部のコロが割れて、割れた破片がレールを傷つけて、レールごと修理という最悪コースに入ります。
ニップルの形状に文句を言いながらも、結局は毎日注入するしかないんですよw
明日から出来る、消耗品の延命チェック
最後に、うちが実際にやっている(そして、しばしばサボって痛い目を見ている)点検内容を書いておきます。
- クリーニングスイベルのグリスニップルへ、1日2回~程度のグリスアップ
- カムフォロア12個へのグリスアップと、外周の当たり面・ガタの確認
- 削孔水の量と戻りの色を毎日見る。戻りが乾いてきたら水量を疑う
- スイベルからの漏れが出たら「まだ使える」ではなくシール、パッキンの交換時期のサインとして扱う
- ロッド・カップリングのねじ部は毎回ロッドグリスを塗る。ねじが甘くなったら迷わず新品
- 2重管削孔は原則水堀り。やむを得ずエアーを使う日は、その分の消耗を工程と原価に見込む
派手さは1個もありません。
ただ、200時間で40万~飛ぶ部品と、こまめなグリスアップで倍持つ部品の差を、1年積み上げるとどうなるか。
そこがアンカー屋の利益そのものなんですよね。
うちも偉そうに書いていますが、忙しくなると点検がぶっ飛びます。
実際、書類も請求書も間に合わなくなる時期がありますからねw
それでも、消耗品だけは減った分がそのまま現金で出ていくので、ここだけはしっかりやっていきたい!。
アンカー屋の施工単価が高いと言われる理由は、こういう消耗品がベラボウに高いからです。
ケーシングもしかりですが、何から何までとにかく高い。
でも、これら消耗品があって始めて仕事が出来るわけですから、単価の高い仕事をきっちりやっていくべきですね?www
そして不幸にもインフレでドンドン部品代も上がっているので、もっと酷いことになりそうです・・・
物価と単価がつり合わない状態です。
それではまた。



