皆さんこんにちは。
エンタです。
今日でお盆休みも終わりですね。
リフレッシュ出来ましたか?
夏も後半になります!
秋まで踏ん張りましょう!

閑話休題
現場を回っていると、図面通りにいかない場所って必ず出てきますよね。
特に急傾斜地対策の現場は、行ってみたら家屋の屋根が法面から数㎝にあった、なんて事もザラです。
今回は、鉄筋挿入工(ロックボルト工)で「設計通りに打設できない場所」が出た時、現場監督としてどう動くかを一本に整理し直しました。
打設できない場所とはどういう状況か
まず、状況を具体的にイメージしてみましょう。
検討断面に2本打設する設計で、従来工法(足場を組んでの削孔)、設計角度は30度としましょう。
あなたの立場は現場監督です。

この標準横断図の区間では、通常通り足場を組んで削孔すれば問題なく2本打設できます。
しかし、そこから10mほど進んだ断面の所に家屋などの構造物が背後にあった場合はどうでしょうか。
いわゆる急傾斜地対策工事で、こういう場面によく出くわします。
手前は良いけど、奥は家が迫ってきているw

上段はなんとか打てても、下段はどうやっても打設出来ない、という状況です。
ここで言う「打設できない」とは、設計角度30度に対して、現場での目安として使っている許容範囲(私は現場でおおむね±2.5度程度を目安にしています)を超えてもなお打てない、という意味です。
これはあくまで私が現場で使っている感覚値で、国交省や学会の統一基準として定められている数字ではありません。
地山補強土工法では、1本ごとの打設位置・角度の精度をあまり厳密にしなくてよいとされていますが、それでも家屋が背後にある以上、無理は禁物です。
足場を組むだけでも一苦労ですし、足場幅が2m程度確保できればまだマシな方です。
家屋が近い現場ほど、逆に確実に打設したい場所ですから、頭を悩ませるところです。
現場監督としてどう対応するか、順を追って考えていきます。
現場監督がまず行う「現状把握」と「現状対策」
打てない場所を見つけた時、ベテランはだいたいこの後の流れが頭に入っていると思います。
若い監督さんは、一度先輩に聞いてみるといいと思いますw
現状把握でやること
まずは現状を正確に数字で確認。
- どのくらい狭いか(正確に◯◯mまで測る)
- 機械は絶対に入らないのか
- 狭い範囲はどこからどこまでか(延長)
- 打設できない本数は何本か
- 養生はできるか
現状対策として考えること
現状の条件でどうやったら施工できるかを、複数案で考えます。
- 施工方法を変えれば打設できるか
- 手掘りで対応できるか
- 自穿孔方式に変更できるか
- 角度を大幅に変更してみるか
角度を変更する場合は、その角度で安定計算がどうなるかまで確認する必要があります。
他の工種に変更した場合の工期・金額への影響も、同時に考えておきます。

役所協議で「指示書」をもらうことの重要性
現状把握と現状対策の材料が揃ったら、役所に協議を行います(協議書や打合せ簿の書面で提出するのが基本です)。
流れとしては、まず現状報告です。
現場がこういう状況で、設計角度30度での打設が難しい、という事実を説明します。
その上で、現状で施工可能な工法案と、その場合の金額感(積算資料などをもとに)を提示し、比較材料として役所側に渡して選択してもらいます。
その際に「会社としてはこの方法が望ましいと考えています」という打診も添えておくと、協議がスムーズに進みやすいです。
施工価格は上がるにせよ下がるにせよ、現場では重要な判断材料になります。
場合によっては、施工方法や施工効率よりも金額が優先されることもあります。
協議はできるだけ前倒しで行い、現場を止めないようにするのが基本です。
そして必ず2つの選択肢を上げて、同時にメリットとデミリットを話す。
現場監督は、現在の状況だけでなく、少し先の未来(この先どうなりそうか)まである程度予測しておく必要があります。
とはいえ、図面と現状を突き合わせればおおよそ予測できるので、身構えるほど難しい話ではありません。
指示書をもらう意味
最終的に大事なのは、役所からの指示書をもらうことです。
例えば「その箇所は鉄筋挿入工を打設しない」という指示をもらっておけば、後に該当箇所で崩壊が起きても、施工した会社側に過失は問われにくくなります。
指示を出した施主側の責任として扱われるためです。
これは会社と現場監督、双方を守るための手続きでもあります。
まれに、協議書や打合せ簿を受け取らない担当者に当たることもありますが、その場合は提出した日付・時間を正確に記録しておくことが重要です。
口頭でのやり取りだけで済ませてしまうと、後から「言った・言わない」の水掛け論になりかねません。
メールや議事録の形で残す、写真に日付を入れて保存しておく、といった地味な積み重ねが、結果的に現場と会社を守ることにつながります。
とにかくメールを送っておくこと、足跡を残すことが重要になってきますので非常に重要な部分ですね。

私が実際に取る2つの選択肢
ここからは、私なら実際にどう対応するか、という話です。
これがベストというわけではなく、あらゆる方法が考えられますが、現場ではだいたいこの2択に絞られることが多いです。
選択肢1:同じ機械のまま角度を変更する
まず確認するのは、同じ機械で打設できる角度の範囲です。
現場の目安である±2.5度程度で打てるかを確認し、それでも無理なら、どこまで角度を振れば打設できるかを調べます。
例えば+10度まで振れば打てるとすると、設計角度30度に対して打設角は40度になります。

この角度をもとに、あらためて安定計算を行います。
役所から元設計の計算書を借り、元の検討断面での安全率を確認した上で、実際に施工できる角度で再検討します。
道路土工「切土工・斜面安定工指針」で、補強材による斜面安定検討の計画安全率は、本設で1.2、仮設で1.05とされています。
この基準に照らして、安全率が1.2を下回るようであれば、鉄筋挿入長を伸ばすなどして1.2まで引き上げます。

角度を変えた場合は、他工種との組み合わせで工期や金額がどう変わるかも合わせて確認しておきます。

選択肢2:自穿孔ロックボルトに変更する
物理的に機械が入らない場合は、自穿孔ボルトへの変更を検討します。
自穿孔といっても機械が入らない状況ですから、手掘りでの施工になります。
ただ、手掘りはかなり体力を使う作業なので、できるだけ範囲を絞り込んだ方が施工能率は上がります。
機械が入る範囲は角度変更で対応し、どうしても入らない範囲だけを手掘りにする、というのが現実的なやり方です。
手掘りでの削孔長については、私の現場感覚としては3m前後が実務上の限界目安になっていますが、
これは各現場土質にもよって変わりますし、職人の腕にも依存します。
そして、全国特定法面保護協会の積算基準では2.5mが最長になっています。
出来る出来ないの判断もあるので、正式な積算基準としては現場の判断になります。
実際の施工でも2m程度の削孔でかなり体力を使う作業になります(もちろん、慣れた職人さんはもっと掘れますw)。
自穿孔ロックボルトについては、最近はめっき加工仕様であれば永久構造物として扱われるケースも増えています。
「地山補強土工法・設計・施工マニュアル」によると、道路基準で永久構造物として使用する芯材は、これまでの調査実績から腐食代として全周0.5mmを考慮するとされています。
自穿孔ボルトを永久として扱う場合も、この考え方をベースに防食・耐久性を確認しておくのが基本です。
ただし、あくまで「通常工法(現場条件Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ)が難しい場合の代替手段」という位置づけで、通常工法が可能であれば通常工法が優先されます。
孔壁が自立せず、二重管方式も難しい場合には変更対象として扱われることが多いですが、自治体によっては自穿孔方式自体がNGとされているケースもあるので、
事前確認は必須です。
国交省やNEXCO案件では、うちの現場でも実際に設計変更をして自穿孔方式で施工した実績はあります。
このあたりは発注者や地域によって判断が分かれる部分なので、「前の現場でOKだったから今回も大丈夫」と決めつけず、その都度確認する癖をつけておいた方が安全です。
現場での判断は「流れ」を押さえておけば怖くない
打てない場所が出た時にどの対策になるかは現場ごとに違いますが、現状把握→現状対策→役所協議→指示書、という一連の流れ自体はどの現場でもほぼ変わりません。
この流れは元請業者であれば普通にやっていることですが、下請けの立場でも知っておいて損はないと思います。
ぶっちゃけ、パニックになる必要はなくて、順番に整理していけば対応できる話です。
現場監督として大事なのは、どうすれば施工できるかを最後まで考え抜くことです。
出来ない。じゃぁどうすれば出来るのか?
土木は工夫の連続で楽しいですよね!
それではまた。



