皆さんこんにちは。
エンタです。
梅雨に入って、現場の段取りが雨でコロコロ変わる季節になりましたね。
こういう時期は事務所で図面とにらめっこする時間が増えます。
そしてジメジメにイライラが募ります・・・

今回は「ロックボルトと鉄筋挿入工って何が違うの?」という、いざ聞かれると地味に答えづらいテーマを取り上げます。
検索でもよく調べられているみたいなので、現場の感覚と、ちゃんとした基準書を確認し、フワッとではなく解説していきますw
ロックボルトと鉄筋挿入工は「別物」なのか?結論からいうとほぼ同じですw
先に結論だけ言うと、法面の世界ではロックボルトと鉄筋挿入工はほぼ同じ工法です。
別物だと思って検索されている方が多いんですが、ぶっちゃけ現場で打っているモノは一緒です。(業界人は当たり前ですよね)
一般社団法人 斜面防災対策技術協会の資料には、鉄筋挿入工は文献によって「ロックボルト工」「切土補強土工」「地山補強土工」などの名称でも呼ばれる、と書いてありました。
つまり、呼び名が4つも5つもあるだけで、中身は同じ系統の工法
うちの図面でも、表題に「鉄筋挿入工」と書いてあろうが、職人には普通に「ここはロックボルトだからねー」って言いますからねw
現場では呼び名なんてあってないようなものです。
呼び名が分かれる理由|準拠する基準書が違うだけ
「じゃあ何で呼び名がこんなに分かれてるの?」という話ですが、これは準拠する基準書が違うからみたいです。
斜面協会によると、おおまかに次のように対応している様です。
・ロックボルト工 → 日本道路協会「落石対策便覧」
・切土補強土工 → NEXCO「切土補強土工法設計・施工要領」
・地山補強土工 → 日本道路協会「道路土工 切土工・斜面安定工指針」、地盤工学会「地山補強土工設計施工マニュアル」
・鉄筋挿入工 → 上記を束ねた総称的な呼び方
国内の基準類の整備は、NEXCO(旧・日本道路公団)が先行して行っていて、多くの基準書に引用されています。
だから法面の補強土系は、どうしてもNEXCOの要領が一つの物差しになりがちなんです。
そして、実際にNEXCOの過去のデータ量が莫大なので基本はNEXCOだと思っても過言では無い気がします。
正直に言うと、現場の人間からするとどっちで呼ばれようが同じですし、管理も同じ。材料も同じ、施工方法もほぼ変わりません!って感じですね。

構造・材料・施工はほぼ共通|異形棒鋼を全長で固める工法
呼び名が違っても、構造はほぼ共通です。
鉄筋挿入工(=ロックボルト)は、補強材・注入材・頭部・のり面工で構成される、と複数の資料に書いてあります。
具体的には、こんな感じ。
・補強材:異形棒鋼(鉄筋コンクリート用棒鋼)。
ある斜面設計の解説では JIS G 3112 の SD345、D19〜D29 が使われる。
・補強材の長さ:2〜5m程度が一般的で、50cm刻みで設定される事が多い。
・注入材:セメントミルク、またはモルタル。
・頭部:プレート(支圧板)とナットでのり面工に固定。
富山県のマニュアルでは標準で150mm×150mm×6mmより大きく、亜鉛メッキ処理。
・定着方式:補強材の全長をセメント系硬化材で固める「全面定着(全長定着)」。
ここがグラウンドアンカーと大きく違うところで、ロックボルト(鉄筋挿入工)は全面定着なので、定着層が必ずしも硬い岩である必要はない、という事です。
これは設計照査でもよく話題になるところですね。(移動土塊と不動土塊)
ただ、本音を言うと、孔壁が自立しない悪い地山だと、鉄筋は入っても注入が不十分になる事がよくあります。
破砕帯なんかだとセメントミルクが上がってこなくて、袋パッカー使わないと充填できない事も多いです。(ここは経験則に依存してしまう部分)
図面通りにいかないのが中身の見えない山ですねw

本当に区別すべきは「グラウンドアンカー」との違い(緊張力の有無)
ロックボルトと鉄筋挿入工の違いで悩むより、ロックボルト(鉄筋挿入工)とグラウンドアンカーの違いを知った方が、よっぽど分かりやすいです。
両者の最大の違いは、緊張力(プレストレス)を入れるか入れないかです。
・グラウンドアンカー:挿入した鋼材(PC鋼線など)に大きな緊張力をかけて、地山に圧縮力を作用させる。自由長を持つ構造。
・ロックボルト/鉄筋挿入工:緊張力は入れない。地盤の変形に伴って、受働的に補強材へ抵抗力を発揮させる。全長定着。
地盤工学会でも、プレストレスを与えないという特性から、構造的に似て見えてもグラウンドアンカーとは安定の原理・メカニズムが異なる、と書いてあります。
適用規模の目安も違います。

斜面協会の資料では、鉄筋挿入工が適用可能な必要抑止力は300kN/m以下が一つの目安で、崩壊規模が大きいと抑止力が不足したり不経済になるので、別途グラウンドアンカー工などを検討する必要がある、とあります。
だからざっくり言うと、軽め・浅めの崩壊はロックボルト(鉄筋挿入工)、規模が大きくて強い抑え込みが要る場合はアンカー、という棲み分けになります。
アンカーは緊張力を長期に維持するぶん、高規格な材料・防食・施工管理が必要で、施工費も高くなる、というのが各社の説明で共通していました。
大きい法面だと、抑止力でロックボルトを10本打つのか、グラウンドアンカー工を2本打つのか?って感じで経済比較を行います。

現場での呼び分け
最後に、現場で迷わないための考え方。
まず、「ロックボルト」という呼び名は、もともと鉱山の安定対策に始まって、トンネルのNATM工法で一気に普及した、岩盤寄りの言葉です。
一方で「鉄筋挿入工」は、切土法面の補強として使われてきた呼び方、という色合いが強いです。
だから岩盤・トンネルの文脈なら「ロックボルト」、土砂や軟岩の切土法面なら「鉄筋挿入工」と呼ばれやすい、というニュアンスの違いはあるかも知れないです。
ただ、繰り返しになりますが、法面の現場で打っているモノ自体はほぼ同じです。
異形棒鋼を削孔した孔に入れて、全長をグラウトで固める。やってる事は変わりません。
なので私の考えとしては、呼び名はどーでもイイという事ですw
伝われば良いのです。
結局、現場の人間にとって大事なのは、打つモノが分かっていれば、現場は回りますwww
強いて言うなら、NATM(ナトム)だけは注入するモノがセメントミルクでは無いので、ご注意をって位です!
それではまた。



