皆さんこんにちは。
エンタです。
集排水ボーリングの現場で、必ず4つのどれかの事項に当たります。
①有孔管の共上がり
②ジャーミング
③地山崩壊で保孔管が入らない
④スライムが帰ってこない。
現場で「あぁ、今回はこれかぁーw」というやつですね。

今回は、水抜きボーリング工の施工で必ずぶつかる4大トラブルとその対策を、NEXCO要領・JIS規格を出典に押さえながら、現場の実務感覚値も含めて対策を書いていきます。
水抜きボーリング工とは|押さえておく基本
水抜きボーリング工(横ボーリング工)は、水平よりやや上向きに削孔した穴にストレーナー加工した保孔管を挿入して、地下水を排除する工法です。
地下水排除工とも言ったりします。
すべり面に働く間隙水圧の低減や、地すべり土塊の含水比低下を目的とします(NEXCO構造物施工管理要領/道路土工 斜面対策工指針)。
標準仕様(NEXCO要領ベース)
| 項目 | 標準仕様 |
|---|---|
| 削孔径 | φ90〜135mm(標準φ90) |
| 削孔長 | 80m以下 |
| 削孔角度 | 水平 ±10度以内(やや上向き推奨) |
| 保孔管 | VP管(JIS K6741、塩ビ管)が標準 VP75 |
| 保孔管 | SGP管(ガス管)に変更 地滑り地のみ |
| ストレーナー保孔管 | 外径48.6mm(呼び径40)または60.5mm(呼び径50) |
※出NEXCO構造物施工管理要領・国総研『斜面対策工』
トラブル①|有孔管の共上がり
水量が多い箇所では、アウターケーシングを回収する時に、水圧で有孔管(保孔管)が一緒に押し戻されてくることが頻繁に起こります。水抜きボーリングでは「当たり前のトラブル」と言っていいレベル。
共上がり対策|先端1mを突き刺して摩擦保持
私が現場で長年使っている対策は次の手順です(これはNEXCO要領に明示されたものではなく、現場の実務ノウハウとして)
- アウターケーシングを設計削孔長まで到達させる
- インナーケーシングでシングル削孔を 約1m追加する
- インナーケーシングを抜管し、VP管(保孔管)を挿入
- VP管の先端をシングル削孔した部分に突き刺す
- 摩擦で抜けにくくなり、共上がりを防げる
有孔管が設計より約1m奥に入るので、気になる場合は最初から長めに発注しておくのも1つの手。
ただし入り口側に保孔管が確保できていれば、構造上は問題ありませんが(挿入長)、出来れば保孔管と有孔管の位置は同じ位が良。
VP管が割れる理由|SGP管との使い分け
VP管(JIS K6741)は塩ビ管なので、強く押し込むと割れる。
SGP管(ガス管)は金属なのである程度押し込めますが、コストが超上がる。
NEXCO要領では「活動中の地すべり地区で挿入後に剪断・よじれで保孔管破損のおそれがある場合はSGP管」と規定されており、
通常の水抜き工ではVP管が標準。
安易に押し込まずに、上記のシングル削孔追加で逃がすか、下記の様に摩擦を上げると言う作戦も。

コレは以前のブログでも書いたのですが、エプトシーラーという滑り止めや、防水に使われる発泡ゴムみたいな柔らかいモノです。
巻くことで摩擦を得られます!
ただし、巻きすぎると挿入の際にも摩擦が増えますので大変になります!
ほどほどに。w
トラブル②|ジャーミング(削孔ロッドの拘束)
ジャーミングの定義
ジャーミングとは「孔内において、ボーリング機械のケーシングロッドが拘束されて回転不能になった状態」を指します。原因として、
- 孔壁の崩壊や押し出し
- 孔曲がり
- 給水不良
- スライムの残留
が挙げられます(「現場で使える土木・建設用語辞典」)。要するに、削孔ロッドが地中で動かなくなる状態です。
対策|泥水削孔へ切替
最も効くのは 泥水削孔への切替:
- 削孔水にベントナイトを混入(孔壁の安定化)
- またはスーパーコート等の高分子ポリマー系を混入
私の経験としては、通常の使用量の半分くらいで十分。
これはメーカー推奨値ではなく現場のノウハウなので、初めて使う場合はメーカー仕様書の標準量から始めて、現場で調整してください。
泥水削孔はスライムのリターンも改善しますが、施工経験のない方・未熟な作業員には扱いが難しい場合があるので、
経験者の立会いがある時に切り替えるのが安全かもです。
削孔完了後の孔壁洗浄
泥水削孔した後は、削孔完了後にインナーケーシングを抜管→アウターケーシングを回しながら水を送って孔壁を洗浄します。
これをサボると、泥水分がストレーナー部分を閉塞する理論上のリスクがあります(実際に閉塞した経験はほとんど無いですが、念のため)。
機械をワンランク上げるという選択肢
もう一つの対策が削孔機をワンランク上の機種にすること。
これは確実ですが、現場の都合で機械変更ができないことの方が多いので、現実的には泥水削孔が第一選択になります。

※水抜きににトリコンビットは使いません
トラブル③|地山崩壊で保孔管が入らない
軟弱な地山では、削孔した瞬間から孔壁が崩れて保孔管が押し込めないことがあります。
ぶっちゃけ、これは根本対策が無いんですよね。やれることは、
- 機械でじわじわ真っ直ぐ押し込む
- 真っ直ぐ押し続けることが何より大事
- 軸ブレが起きると一気に詰まる
これ今でもたまに苦戦する話ですが、焦って斜めに押すと余計に詰まるので、慎重に真っ直ぐ、これに尽きますw
トラブル④|スライムが帰ってこない
スライム(削孔屑)が孔から戻ってこないことも頻発します。
これも泥水削孔に切り替えると、浮力でスライムが上がりやすくなるので有効。
ただし、スライムが帰ってこない=施工不良ではない点は押さえておいてください。
水抜きボーリング工では、削孔径φ90以上で水も大量に流れているので、スライム処理が無い方が現場としては楽くらいに考えていいです。
(通常のロックボルト工や鉄筋挿入工とは施工の判断基準が違うので注意)。
4トラブル対策の早見表
| トラブル | 第一選択の対策 | 補足 |
|---|---|---|
| ①共上がり | シングル削孔1m追加+VP管突き刺し | 設計より1m長めに発注も可・エプトシーラー使う |
| ②ジャーミング | 泥水削孔(ベントナイト・ポリマー) | 機械ワンランクUPも有効 |
| ③地山崩壊 | 機械で真っ直ぐ押し続ける | 根本対策なし、焦らない |
| ④スライム不帰 | 泥水削孔で浮力UP | そもそも不帰でも問題なし |
施工会社として一番シンドイのはジャーミングによる閉塞でケーシング回収不応が痛いです!
それ1本5万ね!10本で50万ね。ビット4万ねって世界ですからね・・・
それではまた。
【関連記事】
【参考文献・出典】
- NEXCO『構造物施工管理要領』(水抜きボーリング工の項)
- 国総研『道路土工 斜面対策工指針』
- JIS K 6741「硬質ポリ塩化ビニル管(VP管)」
- 一般社団法人日本水抜き工業会/集水ボーリング保孔管の技術資料
- 「現場で使える土木・建設用語辞典」(ジャーミングの定義)
- 全国地質調査業協会連合会『地下水調査のための観測孔の仕上げ方マニュアル(案)』



