削孔の余掘りとは|スライムで鉄筋が入らない現場から学ぶ削孔長の考え方

皆さんこんにちは。

エンタです。

「なんで設計3mなのに3.1m掘るんですか?」と聞かれました。 良い質問ですねぇ。昔の私も同じ事を思ってましたw

閑話休題

今回は削孔の「余掘り」の話です。

鉄筋挿入工(ロックボルト工)やアンカー工の削孔で、設計削孔長よりも少し深く掘っておく、アレの事です。

図面のどこにも「余掘りしろ」なんて書いてないのに、現場では当たり前にやっている。

たまに設計に削孔余長とかも書いて有ります。

お金もくれないのにw

余掘りって何?

余掘りとは、設計の削孔長よりも意図的に深く削孔しておく事です。

例えば設計長3.0mの鉄筋挿入工なら、現場では3.1〜3.3m程度掘っておく、みたいなイメージです。

ちなみにこの数字、基準書に「何cm余掘りしなさい」という明文があるわけではありません。

地山の状態を現場で判断するもので、あくまでもうちの場合の目安です。

発注者の特記仕様書に指定がある場合はもちろんそちらが優先ですよ。

余談ですが「余掘り」という言葉自体は色んな書籍で出てきます。

道路土工の切土工・斜面安定工指針では、地すべりの横ボーリング工について、帯水層やすべり面を切ってさらに10m程度余掘りするものとする、と書いてあります。

排水ボーリングは10m単位で余掘りする世界。スケールが違いますねw

まじ!!?って思いますが、P434~に書いてありますよw
余掘りの概念図

なぜ余掘りが必要なのか|犯人はスライム

結論だけを言うと、犯人はスライム(クリコ)です。

削孔中に出た切粉やスライムは、エアや水で孔の外へ排出しますが、どうしても一部は孔の中に残ります。

そして削孔が終わってロッドを抜くと、孔内にあったスライムがジワジワと孔底に落ちていくんです。

つまり、設計長ピッタリで掘ると「孔底に溜まったスライムの分だけ孔が浅くなる」って事が起きます。

これは基準側でもしっかり注意されていて、地山補強土のマニュアルには、スライムが孔内に残留した場合、

芯材の挿入に支障を与えたり、地山と補強材の定着力が著しく低下する不具合が発生する場合があるため、削孔後は完全にスライムを排出する必要がある、と書いてあります。

グラウンドアンカーの設計・施工基準でも、削孔終了後には清水またはエアで孔内洗浄を行い、連続作業としてテンドン挿入と注入を速やかに行う事、とされています。

孔内洗浄をしっかりやるのが大前提。そのうえで、それでも残る分・沈む分の保険が余掘りって事ですね。

孔内スライムの沈降と堆積

現場事例|最後の10cmが入らない

うちであった事例です。 崖錐の現場で、設計長ピッタリで削孔して孔内洗浄もしっかり行い、いざ鉄筋を挿入したら、最後の10cmくらいでピタッと止まって入らない。

スライムが孔底に溜まって、実質の孔長が足りなくなってたんですね。 崖錐は孔壁もポロポロ崩れやすいので、洗浄で流し切れなかった分と孔壁の崩れが合わさって、孔底はあっという間に埋まります。

こうなると再度洗浄するか、削孔するかw

鉄筋を引き抜いて、もう一回ロッドを入れてさらい直して、洗浄からやり直しです。

1本あたり数十分のロス。それが数本続くと、その日の予定本数なんて簡単に吹き飛びますw

最初から10cm~20cmは余掘りして洗浄していれば、何も起きなかった話です。

これを最初の数本で山の崩壊傾向を分かれば良いんですが、山は一筋縄では行かない・・・・

山によっては、1mほど余掘りして、丁度イイ山もあったりするのでその時々で全く違う景色。何事も経験ですけどね^^

もう一つ怖いのが「掘り置き」です。アンカーの基準にも、泥岩や凝灰岩などスレーキング性のある軟岩では、掘り置きすると所定の周面摩擦抵抗が得られない事があります。

掘った孔は生モノです。余掘りしたからと安心して翌日まで放置、なんてのは論外って事です。

入らない鉄筋

余掘りのやりすぎにも注意

じゃあ深く掘っておけば安心かというと、そうでもありません。

まず、余掘りした分だけ注入材(グラウト)の量が増えます。

注入は孔の先端から口元へ置換しながら行うので、余掘り分の空間にもグラウトが入ります。

1本あたりは僅かでも、数百本の現場なら材料費はバカになりません。

次に、削孔の時間も余掘りの分だけ掛かります。

硬い岩盤で無駄に50cmも余掘りしたら、その分だけビットも減るし時間も食う。

それと水平に近い角度のアンカーは要注意です。

アンカーの基準では、傾角を−5°〜+5°の範囲にすると、残留スライムやグラウトのブリーディングがアンカーの耐力に大きく影響する可能性があるので避ける、とされています。

水平に近い孔はそもそもスライムが抜けにくい。余掘りでごまかせる話じゃないって事ですねw

たまに余掘りした孔をそのまま検測すると「設計より深い=掘りすぎ」と指摘される事もあります。

監督さんには「スライム、崩壊対策で余掘りしてます」と先に一言伝えておくと、検査もお互いスムーズです。

また、あまりにも余掘りしすぎてアンカー入りすぎて抜けないとかあるので気をつけてwww

 

それではまた。

スライムは取る必要があるか?

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