鉄筋のイモ継手はなぜダメか|コンクリート標準示方書のずらし規定と回避策

皆さんこんにちは。

エンタです。

昔の話しですが、法枠現場で組立確認の立会いをしていて、担当者から「あ、これイモ継手やん」って指摘されると、現場が一気に凍りますw

イモ継手は土木学会コンクリート標準示方書で原則禁止になっているので、当然見つかれば即やり直し。

鉄筋を組み直す手間と時間を考えると、最初から避けるのが圧倒的に得です。

若かりし頃は知りませんでしたw

閑話休題

今回は、鉄筋のイモ継手(同一断面に継手が集中している状態)がなぜダメなのかを、

土木学会コンクリート標準示方書のずらし距離の規定と、応力集中によるクラック発生メカニズムから説明します。

前回の鉄筋の重ね継手|45D・L/2ずらしの実務基準の続編として、イモ継手の回避策まで実務目線でまとめます。

法面現場吹付法枠工の配筋検査|イモ継手NG例の指摘場面

イモ継手とは|同一断面に継手が集中している状態

結論だけを言うと、イモ継手は「複数の重ね継手の端が同じ断面に集中してしまっている配筋状態」のことです。

例えばD10の鉄筋で45D重ねを取った場合、重ね長Lは450mm。

これを「ずらし方向に450mmだけ進めてまた次の450mm重ね」という取り方をすると、一見ずらしているように見えて、鉄筋の端が同じ断面に揃ってしまう

これがイモ継手です。

イモ継手

なぜダメか|土木学会コンクリート標準示方書での扱い

土木学会『コンクリート標準示方書』では、

  • 継手は原則として1か所に集中することなく、相互にずらして設けるのがよい
  • 継手を相互にずらさずに1か所に集中して設ける(いわゆる「イモ継手」とする)場合は、設計図書の特記による必要がある

と規定されています。

要するに、特記または工事監理者の承認が無い限りイモ継手はNG

法面工事の現場吹付法枠工では、特記でイモ継手OKと書かれているケースは私自身まず見たことがありませんw

ずらし距離の規定|継手長+鉄筋径の25倍以上

イモ継手を避けるための「ずらし距離」も、コンクリート標準示方書で具体的な値が示されています。

ずらし距離 ≧ 継手の長さ(L₁)+ 鉄筋径の25倍以上

土木学会『コンクリート標準示方書』。例えばD10で45D重ね(L₁=450mm)の場合、

  • ずらし距離 ≧ 450mm + 10mm × 25 = 450mm + 250mm = 700mm以上

ということになります。前回の記事で紹介した「L/2以上(=225mm)」というのは、コンクリート標準示方書の最低ライン側の規定で、
より厳密な値が「L₁+25D以上」という位置付け。実務では発注者・施工計画書で要求される最低ラインを確認するのが鉄則。

D10鉄筋の継手ずらし距離計算例|45D重ね・継手長+25Dの基準

径別の早見(45D重ね+25Dずらしの最低ライン)

鉄筋径 重ね長 L₁(45D) 25Dずらし 合計(L₁+25D以上)
D10 450mm 250mm 700mm以上
D13 585mm 325mm 910mm以上
D16 720mm 400mm 1,120mm以上
D19 855mm 475mm 1,330mm以上
D22 990mm 550mm 1,540mm以上

クラックが入る機構|応力集中で何が起こるか

なぜ同一断面に継手が集中するとクラックが入るのか?

[挿絵指示4:イモ継手で同一断面に応力集中する機構図|引張力の流れと弱面] 画像タイプ:図解(応力分布)/横長 16:9 内容:鉄筋に引張力が掛かった時の応力の流れ 含める要素:鉄筋を引っ張る矢印、継手部分で応力が集中して赤色で強調、その断面が「弱面」として強調表示 文字要素:「引張力 →」「応力集中」「弱面(同一断面)」「クラック発生」(漢字を正確に) 色調:白背景+応力分布はグラデーション(青→赤) 構図:左から右への力の流れ

同一断面集中の3つの悪さ

  • 応力集中:継手部の端は応力伝達が不連続になりやすく、その近傍に応力が集中する。同一断面で複数本が同時に不連続になると、断面全体の弱面化が起こる
  • 曲げ抵抗の低下:曲げモーメントが入る部材では、同一断面の継手集中で曲げ抵抗が局所的に下がる
  • クラックの誘発:上記2つが重なると、その断面に沿ってひび割れが発生しやすくなる

これは耐久性・水密性・将来の補修コストに直結する話なので、「見た目では気付かない品質の低下」として、設計者・監督が特に重視するポイントです。

法枠工での回避策

私の現場経験で言うと、イモ継手を避けるための具体策は次の3つです。

策1|長尺鉄筋を使って継手をなくす

狭い区画でずらし距離が取れない時は、そもそも継手を作らないのが一番です。

例えば5.5mの法長にD10を組む場合、

6m定尺で発注 → 1本物で済む=継手ゼロ

鉄筋コストの差は1区画あたり数百円〜数千円程度。継手1本減らせるなら長尺を選ぶのが鉄則です。

※鉄筋の長さは、地域によって6.0mが入りにくい場合もあります。

策2|継手位置を上下層で互い違いに配置

上下の鉄筋層で継手位置を物理的に互い違いに配置すれば、同一断面に集中する確率はそもそも減らせます。

配筋詳細図の段階で継手位置をプロットして重なりをチェックしておくと、現場で組んだ後の手戻りが無くなります。

下鉄筋組立工

策3|現場で最初の鉄筋のスタートをしっかり打合せ

鉄筋組立で一番重要なのが、最初の1本目!定尺鉄筋5.5mを1本設置します。

その横の鉄筋を3mにします。その距離2.5mあります。

D13だった場合、余裕で鉄筋の重ねを作れますよね。

最初の鉄筋が肝心です!

鉄筋別早見(45D重ね+25Dずらしの最低ライン)

鉄筋径 重ね長 L₁(45D) 25Dずらし 合計(L₁+25D以上)
D10 450mm 250mm 700mm以上
D13 585mm 325mm 910mm以上
D16 720mm 400mm 1,120mm以上
D19 855mm 475mm 1,330mm以上
D22 990mm 550mm 1,540mm以上

不可視部分こそ品質に気をつけたい

イモ継手の話は、最終的にコンクリートに埋まって目に見えなくなる部分の話です。打設後は外から確認できないので、配筋段階での品質管理が全てになります。

不可視(ふかし)部分こそ品質に気をつけたい、というのは法面工事に限らず土木全般の鉄則。

鉄筋を1箇所多めに使う・重ね長を大きく取るというのは、長期的な耐久性投資と考えればむしろ安い保険です。


迷ったらまず「重ね長は45D以上、ずらし距離はL₁+25D以上、上下互い違いに配置」の3点を押さえてください。

これだけ覚えておけば、配筋検査でイモ継手を指摘されることは、まずありません。

最近は特に役所側の技術力低下も顕著に表れています。

指摘されることもほぼ無いように思えます。

だからこそ、我々施工者がしっかり技術t品質を担保していきたいですね。

 

それではまた。

 

【関連記事】

【参考文献・出典】

  • 土木学会『コンクリート標準示方書』設計編・施工編(重ね継手の規定、イモ継手の取り扱い)
  • 全国治水砂防協会『のり枠工の設計・施工指針』平成25年10月版
  • 一般財団法人 全国地質調査業協会連合会『新盤フリーフレーム工法』
  • JSCE.jp for Engineers「鉄筋の継手(いも継手)」解説

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