皆さんこんにちは。
エンタです。
今年の8月も相変わらずの猛暑で、現場は朝の涼しい内が勝負って思ってた事を公開しています。
アイススラリーメチャ最高なんですが!!!!
もう夏の法面はコレが必須に思いますw(今の所)

閑話休題
先日の令和8年熊本地震、皆さんも報道でご覧になったと思います。
2026年7月28日の夕方に熊本地方で最大震度7を観測した地震で、国土交通省が被害状況を随時公表しています。
10年前の平成28年熊本地震の時もそうでしたが、ああいう規模の地震が来ると法面もかなり崩壊します。
その映像や現地の情報を見ていて、私がここ数年ずっと思っている事を今回は書きたいと思います。
テーマは「今後のモルタル吹付工」です。

モルタル吹付工はそもそも何の為の工法か
そもそも論で、モルタル吹付工は風化防止の目的で施工しています。
道路土工「切土工・斜面安定工指針(平成21年度版)」(日本道路協会)でも、モルタル・コンクリート吹付工の機能は「岩盤の風化防止」「雨水等の地山への浸透による浸食や崩壊の発生防止・緩和」「小規模な落石防止」とされています。
適用対象は、風化しやすい岩盤、風化してはく離または崩落する恐れのある岩盤、切土直後は堅固でも浸透水で不安定になりやすい土質等です。
吹付厚は一般にモルタル吹付工で8〜10cm、コンクリート吹付工で10〜20cmが標準とされています。
この標準というのは、本設の施工という意味で(国道)などの道路沿いになります。
要するに「岩の表面が傷まない様に保護する化粧」であって、地山そのものを補強する工法ではありません。
ところが現場の実態はどうかと言うと、最近では高さ2m以下の小規模な法面に防草対策としてモルタル吹付が行われるケースが増えています。
草刈りの手間を考えたら気持ちは分かるんですけどねw
なので除草出来る業者が減っているという事を加味すればコレはアリですよね。
さらに、土砂部と岩盤部が互層になっている様な山でも、比較的手軽なモルタル吹付工が普通に施工されます。
指針が想定している「風化しやすい岩盤の保護」から、実運用がだいぶ広がっているのが現状だと私は思っています。

覆った瞬間に危険が見えなくなる
しかし、コレっていいのか?
ってここ数年ずっと思っているんです。
なぜかって、危険が見えないんです。
モルタルで覆ってしまっているので、内部のことは分かりません。
見えないからこそ危険だという事です。
見えていれば対策出来るんですが、見えていないので対策出来ません。
そして、地震や豪雨などの外的エネルギーによって突然崩壊する。
かりに地山が見えていれば「あそこは危険だ」と見えるので、避難も通行止めの判断も出来るわけです。
モルタル・コンクリート吹付工って、パッと見は安全に見えると思うんです。
特に一般の方には。
グレーで綺麗に覆われた法面を見て「危ない斜面だ」と感じる人はまずいません。
でも我々プロでさえ、打音検査、超音波、赤外線サーモグラフィーなどを駆使して、やっと健全かそうでないかが分かるレベルです。
実際、赤外線サーモグラフィーで吹付のり面の温度分布を撮影すると、背面の空洞・滞水・浮きの部分に健全部との温度差が出るので、遠隔から劣化状況を推定出来るとされています。
逆に言えば、そこまでやらないと分からないという事ですw
しかも吹付のり面は、橋梁やトンネルと違って定期点検が義務化されていないため、点検自体が実施されていない傾向にあるという指摘も。
誰があんなクソ高い法面登って点検するんだ!?ドローン??w
ぶっちゃけ、世の中のモルタル・コンクリート吹付工はほとんどがヤバイんじゃない?って思っているくらいです。
施工から40年、50年経過した吹付のり面が全国に膨大にあって、その背面が今どうなっているか、誰も見えていないんですから。
モルタル・コンクリート吹付工は1955年頃から普及した工法とされていますので、初期のものはもう70年選手です。
背面で何が起きるかと言うと、地山の風化が吹付の裏で静かに進み、風化した土砂が沈下したり流出したりして、吹付と地山の間に空洞が出来ます。
空洞が出来ると吹付は地山に支えられていない「ただの薄い板」になり、そこに水圧や地震動が作用すれば、板ごとバリっと落ちるわけです。
厚さ8〜10cmのモルタル板が高さ10mの法面から落ちて来たらと考えると、ゾッとしますよね。
だから点検では打音検査でパイプ音(背面空洞の音)を探し、赤外線で温度差を探すんですが、法面全面を人力打音で叩くのは正直大変な作業です。
高所はロープワークになるので手間も費用もかかります。
結果として、変状が表面に出て来るまで放置される吹付のり面が多いのが実態だと思います。

一度吹いたら撤去(ハツリ)しか手が無くなる問題
もう一つの大きな問題がコレです。
1度モルタル・コンクリート吹付工を行うと、その後はハツル(撤去する)しか手がなくなります。
昔は「老朽化した吹付は撤去が基本」って言う時期もありましたからね。
ただ撤去となると、大規模な仮設防護柵が必要になり、はつり殻は多量の産業廃棄物になり、道路や住宅に近接した法面では施工自体が難しい、という問題があるとされています。
そこで近年は、大手の工法として、既設の吹付を撤去せずにその上から増厚吹付して補修・補強する非撤去型の工法が開発され、NETISにも登録されて広く使われていますよね。
でもですね。
そもそも論で、既設のモルタル・コンクリートを地山と考えるのであれば(地山と同程度の強度)、
そのまま上から吹付すれば良いだけの話しで、それを「工法」にしたのは目の付け所ですよねww
もちろん、繊維補強モルタルや背面の空洞注入、補強鉄筋などの要素技術を組み合わせているので、単純な増厚とは違うのは分かっています。
分かった上で、商売として上手いなぁと思うわけですw
ただ、ここで冷静に考えて欲しいんです。
上から増厚しても、背面の地山が見えない事に変わりはありません。
密閉型の上にさらに密閉型を重ねているだけで、「危険が見えない」という本質的な問題は何も解決していないんですよ。

開放型の対策という考え方
じゃあどうすれば良いのかと言うと、私は俗に言う「開放型の対策」を推したいんです。
道路土工「切土工・斜面安定工指針(平成21年度版)」にも、施工後の湧水処理は難しいので、湧水が懸念される場合は極力開放型の工法を用い、
モルタル吹付工等の密閉型の工法は避けることが望ましい、という趣旨の記載がちゃんとあります。
基準書レベルでも、密閉型を無条件に推奨しているわけではないんですよねー。
個人的には、特殊工法など使用せずに、鉄筋挿入工(ロックボルト工)+水抜きボーリング工で十分だとは思っています。
地山を鉄筋で縫い付けて表層滑りを止め、水抜きボーリングで背面の水を抜く。(水圧が掛からない状況を作る)
地山は見えたままなので、風化の進行も湧水の変化も目視で確認出来ます。
変状が出れば追加対策も打てるし、危険なら通行止めや避難の判断も出来る。
法面の崩壊って、結局のところ「水」と「地震エネルギー」の2つに行き着く事がほとんどじゃないですか?
鉄筋挿入工が外部エネルギーの滑りを受け持ち、水抜きボーリング工が水を受け持つ。
役割分担が明快で、しかもどちらも背面の状態を隠しません。
水抜きボーリングなら孔口から出る水量を見れば背面の水の動きが分かるし、鉄筋挿入工の頭部プレート周りに変状があれば何か分かる。
対策工そのものが「地山のセンサー」になってくれるんですよ。
密閉型には無い、開放型の最大のメリットだと私は思っています。
極端な話し、鉄筋挿入工+水抜きボーリング工だけで十分じゃない?って思うわけです。
まぁ現場打ちの吹付法枠工はアリだとしてもw
法枠なら枠の間から地山が見えるので、密閉型よりはるかに状態を把握出来ますからね。
危険が見える形にし、かつそれでも崩壊しない工法!
コレが今後の日本のインフラに必要な考え方だと私は思っています。
そうなると私的には「水抜きロックボルト工」を推したい所ですが、ソロソロマジの実験を出来る機会が来そうです!(もうちょい待ってw)
コレについては、また別の記事でしっかり書きたいと思います。

それでもモルタル吹付が選ばれ続ける理由
ここまで書いておいてアレですが、モルタル吹付工がすぐ無くなるとは思っていません。
安い、早い、実績が膨大にある、設計もしやすい。
発注者側から見れば選びやすい工法である事は間違いないんです。
それにイロイロな世の中の流れや政治的事情、大人の事情があるので、工法選定って現実にはなかなか難しいですけどねw
設計コンサルの標準的な比較表に載っている工法から選ばれる流れもありますし、単価の安さで吹付に寄って行くのも現実です。
うちも仕事としてモルタル吹付を施工する事も多々、たたたたたたあります!w
ただ、令和8年熊本地震の様な地震が10年でまた来た事を考えると、今この瞬間も全国の老朽化した吹付のり面の背面で、
誰にも見えないまま風化と空洞化が進んでいる可能性は否定出来ないと思うんです。
新設では指針の趣旨通り「本来吹付が必要な岩盤」に限定して使い、水が絡む所や互層の山では開放型を選ぶ。
既設では点検をきちんと回して、ヤバイ所から開放型で作り直して行く。(出来るとは言っていないw)
今後の日本のインフラとしては、見える形で施工した方が良いかなーってね。
そう考えると、今後モルタル・コンクリート吹付工は少しずつ減って行く様に思います。長い目で見ると!?
危険が見える方が安全という事ですね。
それではまた。



