建設業の社内横領はその先どうなるのか|竹中工務店の事件から見る下請けとの関係の在り方

皆さんこんにちは。

エンタです。

万博工事の横領ニュースを見て、朝から現場で「あれ、うちも他人事じゃないよなぁ」って話になりましたw
建設業界、狭いようで広いようで、こういう話は本当に尽きませんね。

閑話休題

以前、大手建設会社の社内横領について何本かに分けて書いた事があります。

「下請けはどこまで巻き込まれるのか」「どんな手口があるのか」「発覚した後どうなるのか」という所まで書いたのですが、

ちょうど今週、それを地で行くようなニュースが飛び込んできました。

今回はこれを入口に、過去の事件との共通点、そしてこれから下請けと元請がどう向き合っていくべきかまでを書いてみます

大手建設会社の社内横領・背任、今年も起きた

2026年8月19日、大手ゼネコン竹中工務店で、大阪・関西万博の会場工事の総括作業所長を務めていた河井辰巳容疑者(61)が、背任の疑いで大阪府警に逮捕されました。

竹中工務店の本社ビルも家宅捜索を受けています。

時事通信の報道によると、河井容疑者は万博会場の「大屋根リング」で作業員が使う仮設事務所の内装工事を巡り、下請けの建築会社代表(奈良県内、約20年来の付き合いとされています)と共謀し、本来約1,410万円のところを約1,369万円水増しして請求させ、竹中工務店に損害を与えた疑いが持たれているとの事です。水増し分は河井容疑者の自宅や別に所有するマンション、親族が経営するカフェの改修費に充てられ、改修費の総額は6,000万円以上に上るとみられているとされています。日本経済新聞の続報では、別の万博関連工事でも同様の水増し請求をしていた疑いがある事も報じられています。

▼参照:竹中工務店の万博工事を巡る背任事件(Yahoo!ニュース)

以前私が取り上げた「建設会社元部長、背任疑い 被害1億円超か」というニュースもそうでしたが、

社内横領・背任、我々の建設業においてはこの手の話は正直少なくありません。

うちの様な小さな会社ではそこまで多くないのですが、大手ではかなりの件数があると私は感じています。

断言しますが、大手建設会社の社員の多くは、こういう場面を「知っている」「関わった事がある」「関わっている」のどれかだと思います。

私自身、以前しばらく大手に在籍していたのでよく分かります。ここでは書けない事も沢山知っていますw

いつか大手の事は(ここぞと言う時にw)

社内横領のニュースを見る現場監督

こう言った事件の結末って、大体は下請けが切られて終わるんですよ。

なぜ下請けは「断れない」構造になるのか

大手の仕事だけで成り立っている会社は、業界に結構な数あります。

その中で、大手社員の偉いさん(工事部長クラスなど、それなりの決裁権を持つ立場)から「お金を工面してくれ」と言われた時、正直に断れますか?

建設業界の癒着構造を表す暗いイメージ

コレを言う側もそうですが、言われた側の事を考えると、かなり断りにくい話だと思うんです。

長年の付き合いで関係を築いているからこそ、断りにくい。

しかも目の前に仕事をぶら下げられていれば尚更です。

今回の竹中工務店の件も、約20年来の付き合いだったとされていますから、まさにこの構図だと思います。

「そんなの関係無い、断れば良い」と簡単に言う人もいますが、そんな単純な話じゃないと私は思っています。

社員の家族や生活を守らないといけない立場であれば、苦渋の判断でも受けてしまう場合が多いんですよ。

現場で働く仲間との集合写真イメージ

私自身、これだけの数の社員を抱えていて、彼らを守る義務があります。

私を信じて付いてきてくれる大事な仲間ですから、それが突然、誰かの横領のために振り回されるのは絶対に避けたいと思っています。

だからこそ、大手社員に依存している下請け会社ほど、この手の話にカモにされる可能性は高くなります。

お互いにお金のやり取りが発生すると、なかなか離れられなくなり、社員側もその業者を優先的に使う。

業者側もそれで良いと受け入れてしまう。ある意味お互いWin-winに見えますが、実際は現場の品質にしわ寄せが行くだけです。

私も若い頃、「なんでこんな施工の悪い業者を使うんだ」と思った事が何度もありました。

後から先輩に「あそこは金のやり取りがあるから」と教えてもらって、一気にやる気が失せた覚えがあります。

実際に行われている横領の手口5パターン

では実際にどんな手口があるのか。

私が知る範囲で、よくあるパターンを整理してみます。

ここに書くレベルは、施工管理の経験がある人なら誰でも思いつく内容だと思いますし、

税務署もこの手のやり口はしっかり把握していて、税務調査では重点的に確認されるとされています。

外注業者を使った不正な出来高操作のイメージ

手口 横領する側の狙い 巻き込まれる外注側のリスク 現場での対策
出来高・請求額の水増し 外注から金銭を受け取る、あるいは私的な費用に充てる 会社の経費に出来ず、社長個人の持ち出しになりやすい 施工の進捗率・毎日の施工写真・出面の突き合わせ確認
仮設レンタル品の単価つり上げ レンタル会社から物品を受け取る 不要な資産を毎年減価償却する必要が出て決算書に残る 定期的な単価変更理由のヒアリング
接待費の付け替え 元請への接待費を下請に負担させる 会社規模に不釣り合いな接待交際費で税務署に目を付けられやすい 下請の出来高や水増し施工の有無を確認
受注と引き換えの金銭要求 工事発注をチラつかせて金銭を得る 経費計上できず社長個人の持ち出し、証拠も残りにくい 電話や対面だけのやり取りを避ける、記録を残す
領収書の偽造 支払った額以上の金銭を得る 知らないうちに犯罪に巻き込まれる 登録番号の確認、発行店への確認、印紙・印鑑の有無確認

私が思うに、こういう手口を実行できるのはそれなりの決裁権を持つ立場の人がほとんどです。

竹中工務店の件も、河井容疑者が下請け業者を事実上選定できる立場にあった事が背景にあるとされています。

悪質になると、何年にも渡って高額な金額を繰り返すケースに発展します。

 

今回の竹中工務店の事件は、過去の事件と何が同じで何が違うのか

ここで一度、過去の事件と並べてみます。

以前取り上げた東証プライム上場の総合建設会社ヤマウラの子会社を巡る事件では、

経理担当者が約10年かけて子会社の口座から約26億3,885万円を不正に引き出していたとされ、

後に本人と息子が業務上横領の疑いで逮捕されています。

竹中工務店の件は金額こそ約1,369万円と桁違いに小さいですが、構造はよく似ています。

  • 発注や検収の権限が、特定の担当者1人に長期間集中していた
  • 長年の個人的な付き合いがある相手(下請け・子会社の担当者)を通じて資金を動かしていた
  • 水増し・不正支出の使い道が、自宅の改修や個人的な生活費など、私的なものに向かっていた
  • 発覚のきっかけは、監査法人の指摘や第三者委員会の調査など、内部の管理体制側からだった

違うのは金額の規模と、共謀の形です。

ヤマウラの件は親子での共謀、竹中工務店の件は下請け業者代表との共謀とされていますが、

どちらも「その担当者でないと実態が分からない」状態が長く続いた事が根っこにあると私は見ています。

万博工事のように工期が決まっていて突貫にならざるを得ない現場は、検収の目が薄くなりやすく、

現場で煩雑な事も増えて、いくらでも、なんとでも出来た!?というのが私の感想です。

人手不足で担当者のローテーションが組めず、同じ人間に権限が集中し続ける中小規模の現場でも、同じ構造は十分に起こり得ると思っています。

今後も、こういう「1人に権限が集中し過ぎた現場」から同種の事件が出てくる可能性は正直高いと私は予想しています。

あくまで私個人の見立てですが、もしかしたら今回の万博に関わる工事でかなりやっている業者いるんじゃないですか?

例えば、地盤改良の数量は合っているの??

その材料費合ってるの?

その人件費は?人工数は?単価は??って全部の関わった業者(ゼネコンJV)は調査した方が良いような気にもなりますよね。

「飲み代くらいはいい」の境界線と会社側の問題

株主優先の経営を象徴するイメージ

ここまで横領の話をしてきましたが、私個人としては「飲み代程度は別」だと思っています。

施工業者がお金を出して、現場で一緒に頑張った元請の担当者とパーッと打ち上げに行く。

これは横領でも何でもないと思うんですよ。

特に大手になると、現場の打上げすら会社が出してくれない事はざらにあります。

苦しい思いだけして現場をこなして、それで何が楽しいのか。

会社の忘年会よりも、現場で一緒に苦労した職人達と飲みたいというのが現場の本音だと思います。

大手企業の場合、会社は株主のモノという性質が強くなります。

株主優先の経営になっているからこそ、現場の社員に対する息抜きが後回しにされ、それが横領のような形で歪んで表出してしまうのではないかと。

とはいえ、これは私個人の感覚であり、横領そのものを擁護する気持ちは一切ないんですけどねw

ただ、みんなでパーッと飲み行って下請けが出す位(居酒屋、スナック1軒程度)はアリですよ!!!

逆にその位が健全だと思います。

でもゼネコン幹部は極端だからそれもコレも全て禁止にするからもっと酷いことに。

余裕を持って行くってこんな部分にも必要だと思いますけどねーw

発覚のその先|これから下請けと元請はどう向き合うべきか

横領発覚後の重い雰囲気のイメージ

横領・背任が発覚すると、その先はどうなるのか。

大手の場合、発覚した時点でまず本人は自宅待機や聴取の対象になります。

関連企業との関係性、資金の流れ、個人口座の確認が進み、過去に遡ってメールのやり取りまで洗われる事になるとされています。

それに伴い、関与した下請け業者への聴取も行われます。

竹中工務店の件でも、下請け業者代表について任意で捜査が進められているとされています。

事件発覚後の重苦しい現場の空気のイメージ

横領した本人は、罪を認めて返済計画に進む場合と、最後まで否認して刑事告訴に至る場合とに分かれます。

刑事告訴になれば、被害金額の回収はほぼ不可能になるとされています。

下請け側は、悪質でなければ出入り禁止で終わり、悪質と判断されれば刑事告訴の対象にもなり得ます。

刑法の分類で言うと、単純な業務上横領は業務上横領罪、会社に損害を与える背任行為は特別背任罪として扱われ、

業務上横領罪は10年以下の懲役が言い渡される可能性があるとされています

長期間発覚しなかった横領事件の重さを表すイメージ

ヤマウラの件では、約30年という長期間、経理担当という立場に固定されていた事、子会社側の取締役会が本来3ヶ月に1回開くべきところをほぼ機能させていなかった事など、内部統制の隙間が長年放置されていた事が第三者委員会の報告書で指摘されているようです。

1本あたりの横領は小さくても、チェックが入らない状態が長く続けば、この規模まで膨らむという事。

コンプライアンスって連呼して言う割にけっこうズブズブなんでしょうねーw

うちの様な小さな会社でも、他人事ではないですけどねw

と言っても、私は元請と呑み会や打上は肯定派なのでドンドンやります!!

そのための国に認められた接待交際費!

好きな元請担当者なら行きますよ!その担当者のお陰で仕事も上手く行ったし、うちも儲かって、元請も儲かって。

当然適正価格でしっかりお金ももらえていれば問題ないって事。

現場の打上げ

では、これから下請け側はどうするべきか。

私は次の3つを意識するべきだと思っています。1つ目は、契約書・見積り根拠・支払いの流れを必ず記録として残す事。

2つ目は、大手社員から個人的な便宜を持ちかけられたら、その場で断るか、自社の別の人間に必ず相談する事。

1人で抱え込むと、断りたくても断れない空気に飲まれてしまいます。

3つ目は、大手1社への依存度を下げる事。これは口で言うほど簡単ではありませんが、依存度が高いほどカモにされやすいのは事実です。

元請側にも変わってほしい所があります。

発注・検収の権限を1人に集中させず、定期的に担当をローテーションする事。

そして、内部通報の窓口をきちんと整備し、下請け側からも相談できる状態にしておく事です。

もし元請側に、こういう不正やパワハラ的な要求を相談できるコンプライアンス窓口があるなら、下請け側は迷わず使うべきだと私は思っています。

会社を通さず現場の個人同士で抱え込むから、こういう話は何年も表に出てこないんですよ。

 

そもそも大手ゼネコンは自社コンプライアンスばかりに目を向けすぎ。

だから隠蔽体質になりがちなんですよね。

ドンドン公開すれば良いんです、事故起きてもなんとか不休災害にしようとするでしょ?そうーいう所ですよ!

 

とはいえ、下請けとしては、仕事をもらえる関係というのはやはりありがたい部分でもあります。

その担当者のお陰で仕事が回っている現実がある以上、簡単に距離を置けと言い切れない難しさも正直あります。

理屈と現実の間で、どこまで踏み込むかは、その都度悩みながら判断するしかないんだろうと思っています。

義理と人情が邪魔をします。

義理は捨てられない。でも、それを使って金銭の要求がある。。。

こういう犯罪はドンドン明るみに出していくべきだと私は思っています。

だからこそ、そう言う人をたしなめる事が出来たら・・・

本音では知っていて言わない、見て見ぬふりをするのが一番良くない。。。

 

土木屋がお金の力でどうにかしようとするのは、技術に自信がない証拠?。

勝負するなら、最後は技術です。

私も偉そうに言えるほど完璧に出来ているとは一切言いませんが、こういう話を明るみに出す事から逃げるのはもうやめたいですね。

 

それではまた。

ボルトスケール・クリップスペーサーの販売店

※業務上横領罪・特別背任罪の量刑に関する記述は、弁護士事務所の解説記事を参照した一般的なことであり、個別事案の判決を保証するものではありません。

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