鉄筋かぶりの計算と確保のコツ|法枠工の最小かぶり・鉄筋あきを法面屋監督が実例解説

皆さんこんにちは。

エンタです。

梅雨入り前のこの時期は、なんだか仕事薄め。

現場乗込の前が多いので、質問も多いです。

最近若い子に「エンタさん、かぶりって結局どうしてますか?」と聞かれまして。

良い質問なんですよw ところが、これがパッと一言で答えにくい。「30mm」とも言えるし「40mm」とも言える。

条件で変わるからです。

鉄筋かぶり

今回は「鉄筋のかぶり」を、定義のおさらいから法枠工での計算の仕方、現場で確保するコツまで、出典を添えて書いてみます。

※以前にも鉄筋かぶりについて|法枠の被り厚さ規定という記事を書いていますが、今回はもう少し計算と現場寄りに踏み込んでいきますね。

そもそも鉄筋の「かぶり」とは何か

まず言葉の確認からです。

かぶり(かぶり厚さ)とは、コンクリート表面から一番外側の鉄筋までの最短距離のことを言います。

建築だと「かぶり厚」、土木だと単に「かぶり」と呼ぶことが多いですね。

ではなぜ、わざわざこの距離を確保するのか。理由は大きく3つです。

かぶりが守ってくれる3つの役割

ひとつ目は防錆。

コンクリートは強アルカリ性なので、その中にいる鉄筋は錆びません。

逆にかぶりが薄いと、外部の水や空気が鉄筋まで届きやすくなり錆びてしまいます。

ふたつ目は中性化対策。

コンクリートは空気中の二酸化炭素と反応して、表面からゆっくりアルカリ性を失っていきます(中性化)。

これが鉄筋まで進むと、防錆の膜が効かなくなって錆び始める。

かぶりが厚いほど、中性化が鉄筋に届くまでの時間を稼げるわけです。

みっつ目は耐火・付着。火災時にいきなり鉄筋が高温にさらされないよう守る役割と、コンクリートと鉄筋をしっかり一体化させる役割もあります。

参考:鉄筋のかぶりの定義と役割(コンクリート表面から鉄筋までの最短距離/防錆・中性化・耐火)

要するに、かぶりは「鉄筋の寿命を守るための保険」みたいなものなんですよ。

鉄筋かぶり

法枠工の最小かぶりはこう決まる|Cmin=α・c0

法枠工での最小かぶりの考え方を見ていきます。

全国特定法面保護協会の「のり枠工の設計・施工指針(改訂版)平成18年11月」では、かぶりの最小値を次の式で求めるのを標準としています。

Cmin=α・c0
Cmin:最小かぶり
α:モルタルの設計基準強度 f’ck に応じた係数
・f’ck≦18N/mm² … α=1.2
・18N/mm²<f’ck<34N/mm² … α=1.0
・34N/mm²≦f’ck … α=0.8
c0:基本かぶり。30mmを基本とする

全国特定法面保護協会「のり枠工の設計・施工指針(改訂版)平成18年11月」P50

例えば、よく使う300の法枠でD13、モルタルの設計基準強度が18N/mm²以下のケースだと、

Cmin=1.2×30mm=36mm

となります。つまり「36mm以上のかぶりを確保してね」という事ですね。

強度が上がってα=1.0や0.8になれば、最小かぶりはもう少し小さくてよくなる、という関係です。

鉄筋かぶり

鉄筋の「あき」と吹付法枠の40mm

かぶりとセットで押さえておきたいのが、鉄筋の「あき」です。

あきとは、隣り合う鉄筋同士のすき間のことです。これが狭すぎると、間にモルタル(コンクリート)がうまく回り込まず、充填不良=ジャンカの原因になります。

同じ「のり枠工の設計・施工指針(改訂版)平成18年11月」では、水平あきの標準を次のように示しています。

・鉄筋直径φ以上
・20mm以上
・骨材最大寸法の4/3倍以上
これらのうち最も大きい値を標準とする。
さらに、吹付法枠工の場合は充填性を考慮し、鉄筋あきは40mm以上とするのが望ましい。

全国特定法面保護協会「のり枠工の設計・施工指針(改訂版)平成18年11月」

吹付法枠は文字通り「吹いて」充填するので、普通のコンクリート打設よりモルタルが回りにくい。

だから「あきは40mm以上が望ましい」と一段厳しめに振ってあるわけですね。

ここはNEXCO関連の現場でも「あき40mm」で覚えておくと話が早いです。

NEXCO(東・中・西日本高速道路)の「グラウンドアンカー設計・施工要領」などでも、法枠まわりの配筋についての考え方が書かれています(同要領 平成19年8月 P85〜86)。

鉄筋 かぶり

水平かぶりを実例で計算してみる

数字だけだとピンと来ないので、300の法枠で実際に水平かぶりを追ってみます。

法枠の有効長は計算で求めますが、ここでは300の法枠で235mmだったとします。すると残りは、

300−235=65mm

この残り65mmと鉄筋径(D13なら半径6.5mm)を配置に当てはめて整理すると、片側でおよそ58.5mmの水平かぶりが取れている、という例になります。

細かい内訳は配筋の置き方で変わるので、ここは元記事でも使っている実例値として読んでください。

そこにもう1本D13を重ねても、

58.5mm−13mm=45.5mm

まだ45.5mm残っている。これは「あき40mm以上が望ましい」をクリアしているので、

40mm<45.5mm = OK!

という事ですね。先ほどの最小かぶり36mm以上もクリアしています。こうやって一度自分で追っておくと、現場で「この重ね方で大丈夫か?」が肌感覚で分かるようになります。

※有効長235mm・水平かぶり58.5mmはあくまで例として置いた数字です。

実際は使用する型枠・断面・設計図の値で計算してください。数値の根拠が要る現場は、必ず手元の指針と設計図で確認をお願いします。

かぶりは「多すぎてもダメ」です

最後にひとつ、勘違いされやすい話を。

かぶりは厚ければ厚いほど良い、わけではありません。

鉄筋コンクリートは、鉄筋とコンクリートが一体になって初めて強い。

鉄筋が表面から遠ざかるほど、その外側のコンクリートは「無筋」に近い状態になります。

コンクリートは曲げに弱いので、かぶりが過大だと、その部分からクラックや欠けが出やすくなるんです。

だからかぶりは「最小値は守る、でも取りすぎない」のバランスが大事。

指針で最小かぶりや基本かぶり30mmが示されているのは、薄すぎ防止の下限であって、いくらでも厚くしていいという話ではない、という事ですね。

ここは若い子がよく勘違いするポイントなので、現場で必ず一度説明するようにしています。

かぶり取りすぎて表面がポロッと欠けたと言う事もあり得ます。

結局、かぶりは「錆びさせない下限」と「一体化を保つ上限」の間で、設計値どおりに素直に組むのが一番ですね。

難しい裏ワザは無くて、有効長と鉄筋径からきちんと追って、最小かぶりとあきを満たす。

それだけです。

これが法枠を長持ちさせる一番の方法かと思います。

なお、かぶりの基本的な役割や考え方は、以前の記事鉄筋かぶりについて|法枠の被り厚さ規定でも触れていますので、合わせて読んでもらえると理解が深まると思います。

 

それではまた。

間詰めコンクリート後の削孔長|実測500mmで設計通り

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