皆さんこんにちは。
エンタです。
梅雨も後半に入って、ここのところ各地で大雨のニュースが続いていますね。
こういう時期になると、毎年気になるのが古い擁壁です。 うちにも「擁壁がはらんできた」みたいな相談がポツポツ来る季節です。

閑話休題
今回は、横浜あたりでよく見かける「ガンタ積み」の対策工について、私の経験を踏まえ考えてみようと思います。
通常、うちみたいな法面専門の公共事業者は住宅の擁壁にはあまり関わらないんですが、
うちは擁壁補強工もやっているのでw
適している工法と、絶対にやってはいけない工法、両方書いていきます。
そもそもガンタ積みとは?まずは現状チェックから
ガンタ積みというのは、コンクリートの廃材やレンガ、瓦なんかを組み合わせて積み上げた擁壁のことです。
横浜市建築局の擁壁チェックシート資料を見ると、「古いコンクリートの塊などを再利用して積んだ擁壁」と説明されていて、
分類上は強度の不安定な「空石積み擁壁」に入れられています。
表面をモルタルで隠してある事も多く、パッと見ではどんな材料が入っているか分からないのが厄介な所です。
で、対策の前に必ず現状を見ます。私がチェックする主な変状はこんな所です。
・石と石の隙間が大きい、部分的に石が抜けている
・全体が前にはらんでいる(ふくらんでいる)
・裏の土砂が隙間から流出している、裏がスカスカに見える
・水抜き穴が無い、もしくは閉塞している
・縦・横にクラックが入っている(縦は崩壊、横は沈下の可能性)
・上の家の基礎が割れている、上の土が下がっている
・ガンタ積みの上にもう一段、石積みやブロック積みが載っている(二段擁壁)
・過去にモルタルで隠した跡があり、そこに変状が出ている

対策工法①:モルダム工で「個」を「連」にする
隙間があって、石と石を繋いでやる必要がある場合に有効なのがモルダム工です。
これは石積みの内部に専用の充填材を注入して、石同士を接着する工法です。
九州防災メンテナンスの特許工法で、国交省のNETIS(新技術情報提供システム)にも登録されています。
ポイントは、注入する事で石積み全体が一枚岩のように一体化される、という所です。
今まで「個」の石の重さだけで斜面を抑えていたのが、面全体で抑えられるようになるイメージですね。
バラバラの石を「連」にしてやる、という言い方が私はしっくり来ます。

ただし、モルダム工はあくまで石積みの表面だけを固める工法です。
だから、地山の奥から押してくる土圧や水圧そのものを抑える力は、期待しすぎない方がいい。
そこは別の工法で補う必要が出てきます。
対策工法②③:鉄筋挿入工と水抜きボーリング工
大雨や地震で、内部から強い力が掛かるガンタ積みには鉄筋挿入工を組み合わせます。
表面から2m〜5m程度の鉄筋を打ち込んで、地山と鉄筋をセメントミルクで密着させ、一体化させる工法です。
鉄筋挿入工マニュアルや地盤工学会の資料に、地山のせん断抵抗を高めて、打ち込んだ鉄筋の長さ分の「疑似擁壁」を作るような考え方とされています。
公共の法面工事では日本中で使われている一般工法ですね。
ここで大事なのが水対策です。
地下水位が高かったり湧水が多い場所では、先に水抜きボーリングで排水して地下水位を下げる必要があります。
また、大雨対策で土圧が掛からないようにする為の対策も必要です。だから、うちでは鉄筋と水抜きをセットで考えます。

うちで言う水抜きは、表面だけじゃなくて4m以上奥から水を抜きます。
水抜きボーリング工(横ボーリング工)は、水平よりやや上向きに削孔して有孔管を入れて、地下水を強制的に抜く工法です。
これで内部が大雨で飽和状態になるのを防いで、崩れにくい状態を作ります。
正直、この水抜きボーリングだけでもかなり効果があると私は思っていますw
公共事業では一般的な地滑り対策の工法として用いられます。
絶対にやってはいけない工法
最後に、これだけは絶対にやめた方がいい、という工法です。
それは、何の補強もせずに、モルタルで表面を丸ごと覆ってしまう事です。
なぜかと言うと、全部隠してしまうと、その後の変状が一切分からなくなるからです。
隙間から裏の土砂が抜けていても、はらんできても、表面のモルタルの下で進行していたら気付けない。
だいたいこう言う施工は、ラス金網(亀甲金網)と薄いモルタルで仕上げます。
なので強度は無く、時間経過で剥離、早い段階でクラックが入る可能性は十分に高いです。

良いのは見た目だけで、絶対にやっては行けない対策工法です。
コレを進める業者は、石が風化しにくくなるのでとか言いますが、石が風化するまで数十年以上かかりますw
すでに隠してしまったとしても、補強の方法はいくらでもあります。
じゃあ表面を覆う工法が全部ダメかと言うと、そうではありません。
うちの場合、表面を覆うなら必ず鉄筋を組みます。
D13鉄筋を20センチピッチで。
鉄筋で地山(ガンタ積み)としっかり繋いでおけば、表面の被覆が単なる「お化粧」じゃなくて、力を受け持つ面として機能してくれるからです。
覆うにしても、ちゃんと地山と一体になっている事が大事だと私は考えています。
当然ですが、国道と同じレベルの厚さにします。(8センチ~15センチ)
厚みは寒冷地などの地域や状況によります。
法面屋の技術者としては強度重視が絶対です!
絶対に崩壊させない!それが我々の仕事です。
結局の所、ガンタ積み対策(石積み対策)って隠す事じゃなくて
「中の状態を分かった上で、面で繋いで、しっかり水を抜き、地山と一体化させる」事なんです。
住宅の擁壁でも我々からすれば1つの法面!(崖)ですから、いつも通りの仕事!当然しっかり崩れ無い様にし、施主の命を守る!
だからこそ、見えなくする工法じゃなくて、ちゃんと理屈の通る工法を選びたいなと、私は思っています。
それではまた。



