マニュアル通りに行っていないのはある意味で当然(堂島川労働安全コンサルタント事務所より)

堂島川労働安全コンサルタント事務所

現場の安全管理において、「作業員がマニュアルや手順書通りに動いてくれない」と頭を悩ませている人を見ることはありませんか?
トラブルや事故が起きた際、管理者はつい「ルール違反だ」「もっと手順を徹底させよう」と考えがちなのは間違いありません。
しかし、レジリエンス・エンジニアリングの分野では、そうした「失敗」だけを追及するアプローチとは違った見方をします。

そこで現場のリアルを読み解くために重要になるキーワードが、「WAI」「WAD」です。

WAIとWADとは?

  • WAI(Work-As-Imagined:想像上の仕事)

    • 管理者や設計者が「こうあるべきだ」「こう行われるはずだ」と頭の中で考えている仕事のやり方です。
      手順書、マニュアル、ガイドライン、計画書などに規定されている理想的とされる状態を指します。

    • WAD(Work-As-Done:実際の仕事)
      現場の作業員が、その時の状況や制約に合わせて実際に行っているリアルな仕事のやり方です。

頭の中で考えた理想の仕事と実際の現場での仕事
WAIとWADのギャップ

現場においては、WAI(理想)とWAD(現実)の間に必ずと言っていいほど「ギャップ」が生じます

なぜギャップは生まれるのか? 現場の「パフォーマンスの調整」

マニュアル(WAI)は、常に想定された標準的な状況を前提に作られています。
しかし、実際の現場には「時間が足りない」「人員(マンパワー)が不足している」「必要な機材が揃っていない」「想定外の天候悪化」といった様々な制約や変化がつきものです。

現場の作業員たちは、ルールを無視して手抜きをしようとしているわけではなく、こうした制約や変化の中で、どうにか目標を達成し、仕事を完遂させるために、自らの経験や知識に基づいて臨機応変にやり方を工夫しています。
これを「パフォーマンスの調整」と呼びます。
つまり、WADとは現場がシステムを機能させるために懸命に調整を行った結果であり、日々の業務がうまく回っているのは、現場のこの「調整力」のおかげなのです。

ギャップをどう安全管理に活かすか?

従来の安全管理では、WAIとWADのギャップを見つけると「ルール違反」として排除し、さらにルールを厳しくしてきました。
しかし、それでは現場の負担を増やすだけで根本的な解決にはなりません。これからの安全管理に求められるのは、以下のようなアプローチです。

  1. ギャップを責めず、背景を理解する: 「なぜマニュアル通りにやらなかったのか」と責めるのではなく、「なぜその調整が必要だったのか(どんな困難や制約が現場にあったのか)」を探り、理解します。

  2. 危険な調整をなくし、良い調整を取り入れる: 現場が余儀なくされている「危険な調整」を見つけたら、そうせざるを得ない環境(人員不足や時間的プレッシャーなど)自体を改善します。
    一方で、現場が生み出した「良い調整(工夫)」は、逆にマニュアル(WAI)へと取り入れ、より現実に即した手順書へとアップデートしていきます。

本音と建前には必ずギャップがある
WAIとWADの比較

おわりに

「マニュアル通り=安全」という考え方から一歩抜け出し、WAIとWADのギャップに目を向けることで、現場に潜む本当のリスクや、現場が持っている優れた柔軟な対応力(レジリエンス)が見えてきます。
「ルールを守らせること」だけでなく、「現場のリアル(WAD)を知り、マニュアル(WAI)とすり合わせること」を、新しい安全活動の第一歩としてみませんか?

堂島川労働安全コンサルタント事務所

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