皆さんこんにちは。
エンタです。
グラウンドアンカーを施工したあと、口元を確認するとグラウトが下がっていることが当たり前にあります。
普段通り現場では、グラウトの天端が口元から約1m下がっていました。
恐らく下部に向かって逸脱したグラウトも有ったりで、かなり下がったなぁーって言うイメージですね。
そこで出てくるのが、コレを埋めるのか、仮設アンカーならそのままでもイイのか、という疑問です。
本来本設であれば埋めておいた方が無難なので、追い注(おいちゅう)ですね。
現場ではアンカー施工士や施工管理者の経験で意見が分かれやすい部分ですが、細かい事を言うと沈下量だけで補充の要否を決めることはできません。
最初に確認するのは、どこの種類のアンカーでそうなったのか?
防食構造は何か、供用期間と腐食環境はどうなっているかです。
今回は、地盤工学会編『グラウンドアンカー設計・施工基準、同解説』JGS 4101-2012を根拠に、防食構造Ⅰ・Ⅱ・Ⅲと口元充填の判断を考えます。

結論は1m下がったから補充ではない
最初に結論です。
約1mという沈下量は、現場で確認した事実として重要です。
しかし、書籍には、口元から何mm以上下がったら補充するという一律の許容値は示されていません。
そのため、約1mを合格・不合格の数値にすることはできません。
補充の要否は、次の順番で判断します。
- 下がった場所は自由長部周囲か、支圧板・定着具背面か
- 設計指定は防食構造Ⅰ・Ⅱ・Ⅲのどれか
- 供用期間は2年未満か、2年以上か
- 通常の環境か、高腐食環境か
- 設計図書や工法仕様に充填指定があるか
- 沈下、逸水、漏出、ブリーディングなどの原因を説明できるか
ここを飛ばして、仮設だから不要、本設だから必要と決めると、自由長部の充填注入と頭部背面処理を混同してしまいますw
防食構造が必要な理由
グラウンドアンカーは、テンドンへ大きな引張り力を与えた状態で使用します。
しかも、屋外や地下水の影響を受ける場所に設置されることが多く、腐食による断面欠損や定着部の損傷が機能低下につながります。
設計施工指針では、構造物周辺の腐食環境、供用期間、構造物の重要度を考慮し、供用期間中に機能を維持できる防食を行うよう定めています。
防食は引張り材だけの話ではありません。
- アンカー体
- 引張り部
- アンカー頭部
- 頭部背面
- 各部の境界
これらを連続した防食構造として考える必要があります。
特にアンカー頭部と引張り部の境界は、防食が不連続になりやすい場所です。水や腐食性物質の侵入経路を残さない施工が重要になります。
防食構造Ⅰ・Ⅱ・Ⅲは供用期間と環境で決まる
解説表では、防食レベルの目安を次のように区分しています。
| 腐食環境 | 供用期間2年未満 | 供用期間2年以上 |
|---|---|---|
| 通常の環境 | 防食構造Ⅰ | 防食構造Ⅱ |
| 高腐食環境 | 防食構造Ⅱ | 防食構造Ⅲ |
現場で仮設アンカーと呼んでいても、防食構造Ⅰになるとは限りません。
供用期間が短くても、高腐食環境にある場合や重要な構造物に使用する場合は、防食構造Ⅱ以上が必要です。
防食構造Ⅰ
防食構造Ⅰは、通常の環境で供用期間2年未満のアンカーを主な対象とする簡易な防食です。
解説では、アンカー頭部や頭部背面など、腐食しやすい部分を中心に防食するとされています。
供用期間が非常に短く、腐食環境にほとんどさらされない場合には、防食を省略できる場合もあります。
ただし、これは現場担当者が自由に省略してよいという意味ではありません。
目的、重要度、腐食環境、設計図書を確認したうえで判断します。
防食構造Ⅱ
防食構造Ⅱは、通常の環境で供用期間2年以上のアンカーを主な対象とします。
引張り材、拘束具、定着具、支圧板などについて、アンカー全長にわたり機能を維持できる防食を行います。
自由長部では、シースと地盤の空隙をグラウトで充填します。
頭部では、防食性能のあるキャップと防錆油などを用い、雨水や腐食性物質の侵入を防ぎます。
通常のアンカーはこの部類に入ってきます。
防食構造Ⅲ
防食構造Ⅲは、高腐食環境で供用期間2年以上のアンカーを対象とします。
耐腐食性の引張り材やシース、耐腐食性材料、多重化した防食など、防食構造Ⅱより高い性能が必要です。
高腐食環境とは、十分な防食を施しても腐食が進行する可能性がある環境です。
地盤や地下水によってセメント系グラウトの劣化が懸念される場合は、グラウト材料の変更も検討対象になります。

充填注入と頭部背面処理を分けて考える
口元充填の判断で一番大切なのがココです。
自由長部の充填注入と、支圧板・定着具背面の処理は目的も施工時期も違います。
自由長部の充填注入
充填注入は、アンカー体を造成したあと、自由長部のシース外側と地盤との空隙へグラウトを注入する作業です。
一般的な施工は定着部と自由長部の施工は同時ですけど、書籍上は別れています。
主な目的は次の2つです。
- 自由長部の防食機能を高める
- 孔壁周囲の地盤の緩みや風化を抑える
設計施工指針での施工解説では、防食構造Ⅱ以上は充填注入を必ず行い、防食構造Ⅰは必要性がある場合に行うとされています。
つまり、防食構造Ⅰの充填注入は一律必須ではありません。
しかし、防食構造Ⅰなら充填しなくてよいとも書かれていませんw
地盤の緩み、湧水、設計指定、工法仕様などから必要性を判断します。
と言っても、防食構造Ⅰは理屈的には1m下がっていようが、グラウトを入れる必要は無いという事です。
1重の防食はポリパイプで出来ているので。

支圧板・定着具背面の処理
アンカー頭部背面は、自由長部と頭部の境界にあり、防食が不連続になりやすい場所です。
基準本文では、緊張・定着前に設計図書に示された方法で頭部背面を処理するとされています。
解説では、支圧板背面を空洞にせず、防食用材料やグラウトなどで充填する必要があるとされています。
定着具背面についても、グラウトや防錆油などを完全に充填し、充填材が漏れたり、蒸発したり、沈降したりしない構造とする考え方です。
グラウトが下がった現場で何を確認するか
現場でグラウトが下が思いっきり下がっていると、埋めたくなる気持ちは分かります。
しかし、補充する前に原因を確認しなければ、追加したグラウトも再び下がる可能性があります。
考えられる確認項目は次のとおりです。
- 地盤の割れ目や空洞への逸失
- 被圧地下水や湧水による逆流、希釈
- グラウトの材料分離やブリーディング
- 所定位置までの注入不足
- 他の人工物への漏出
- 施工後の沈降
- 注入管の位置や注入手順

沈下の原因が分からない状態で、上からグラウトを足して終了では不十分なのですが、正直な所で内部は分かりません。
他の部分から流出してくれていればまだ良いのですが、なかなか分かるモノではないので・・・
補充後に再び天端が下がれば、同じ判断を繰り返すことになります。
が、充填して行くにはゆっくり穴を埋めていくイメージで何回も注入する必要は有ると思われます。
ただし、防食Ⅱ以上の場合はですね。
あくまでも永久アンカーに限るって話しです。
これが仮設アンカーの場合は?となると、要らないでしょう!ってなります。
ただ、仮設アンカーを削孔した上部の状況がどうか?
幹線道路で思いっきり車が走るのであれば、陥没する可能性も視野に入れて、しっかり注入する必要も出てくるでしょう。
しかし、何も無い場所であれば要らないとも言えます。
あくまでもコストと品質との境目をどうするか?って感じですねw
何でもかんでも、間詰めするはナンセンスかなとも思えます。
まぁ注入しておけば問題ないよね!?って考える事もアリでしょうが、思考停止にならない様にしたいモノです。
常にどうしてか?を考えて行きましょう!
それではまた。



