グラウンドアンカー工とは?基本構造と原理を分かりやすくかみ砕いて解説

皆さんこんにちは。

エンタです。

アンカーの技術講習会って行っていますか?

私は勉強会には基本的に必ず顔を出すようにしています(ほぼw)。

理由は単純で、見えない地中の仕事って、何年やっても謎が多くて面白いからなんですよね。

そして新しい技術が少しずつ出てくるからです!

グラウンドアンカー工

閑話休題

今回は「グラウンドアンカー工って、そもそも何なん?」という基本のところを、現場の感覚とちゃんとした基準の話を突き合わせて、

かみ砕いて解説していきます。

新人さんにも分かるように書くので、ベテランの方は復習がてらどうぞw

グラウンドアンカー工とは?「引っ張って支える」発想の地盤補強です

まず大枠から。

地盤の補強って「押さえつける(圧縮)」イメージが強いですが(法枠的や押さえ盛土的)、

グラウンドアンカーはその真逆で、「引っ張って支える」発想の工法です。

イメージしやすいように例えると、ゴムひもです。

地盤に穴を掘って、穴の奥にゴムの先っぽを固定する。

そのゴムをぐーっと引っ張った状態で、もう片方を地表側で留める。

すると、ゴムに挟まれた地盤が締め付けられて動かなくなる、という訳です。

コレがアンカーの基本原理で、ある技術資料でもこの「ゴムの例え」で説明されています。

用途としては、切土法面や自然斜面の崩壊防止、擁壁の転倒・滑動の抑え、地すべり対策などに使われる、極めて重要な地盤補強技術です。

設計や施工の拠り所になるのは、地盤工学会「グラウンドアンカー設計・施工基準、同解説(JGS4101-2012)」を基準としています。

困ったら、まずコレが物差しになります。

グラウンドアンカーの原理

基本構造は3つ|アンカー頭部・自由長部・アンカー体(定着部)

グラウンドアンカーは、大きく3つの部分で成り立っています。

1,「アンカー頭部」。

地表側で力を受け止める部分で、受圧板(受圧構造物)・アンカーヘッド・くさびやナットで構成されます。

ここで引張力をのり枠などの受圧構造物に伝えて、面で地山を押さえます。

2,「自由長部」。

PC鋼線(テンドン)が、ホースの中で地盤と縁を切られて自由に動けるようにしてある区間です。

ここがあるからこそ、テンドンを引っ張った力がそのまま頭部の押さえ込みに変わる、という仕組みです。

3,「アンカー体(定着部)」。

地中の奥でグラウト(セメント系)を注入し、引張材と地盤を一体化させた部分です。

引っ張った力は、ここの周面摩擦抵抗(地山+セメントミルク+定着部)で地盤に伝わって踏ん張る、と本に書いてあります。

引張材には、JISに適合するPC鋼より線・PC鋼棒などが使われます。

荷重の伝わり方で「引張型」「圧縮型」といった種類があって、各社それぞれ特徴があるんですが、

施工している我々からするとぶっちゃけ基本の打ち方はどれも大差ないですw

圧縮型アンカー応力分布図

こんなイメージです。

引張型アンカー応力分布図

ちなみに、アンカー定着長は3m以上10m以下、アンカー自由長は原則4m以上を標準とし、設計時に決める長さは50cmラウンド、

アンカーの最小間隔は1.5m以上(グループ効果)、といった決まりがあります。

設計を読むときのそんな事を知っておくと良いです。

グラウンドアンカーの3つの構造(頭部・自由長部・アンカー体)

緊張力を入れて初めて働く|緊張管理と試験のキホン

グラウンドアンカーは、ただ山にPC鋼線を入れただけでは働きません。

専用の油圧ジャッキで引張材を緊張して、設計で決めた「設計アンカー力」を導入して、初めて地山を押さえる力になります。

ここが鉄筋挿入工(ロックボルト)との決定的な違いですね。

あちらは緊張をかけず受動的に効かせますが、アンカーは能動的に引っ張ります。

で、緊張管理で一番大事なことは何かというと、当たり前ですが「抜けない事」ですw

ハッキリ言って、コレに尽きますw(私は何回も言ってますが)

設計アンカー力に対して安全である、つまりアンカーが抜けない事が確認できれば、それが一番重要なんです。

 

確認のために、試験を行います。

通常は「適性試験」と「確認試験」の2種類です。

例えば100本のアンカーがあれば、そのうち5%か3本以上のどちらか多い方で適性試験を行い、残り全部で確認試験を行う事が基本です。

100本なら5本。

10本なら3本と言う事です。

適性試験では、設計アンカー力よりも最大1.2倍程度の荷重を載荷する場合もあって、それでも大丈夫なら設計アンカー力程度では安心だ、という理屈ですね。

現場経験者の目線で言うと、試験結果の数字が多少バラついても、抜けてさえいなければアンカー自体は健全です。

上限下限の範囲に入らない時は、たいてい試験のやり方の問題。

見えない地中の仕事だからこそ、ここの読み解きが腕の見せ所だと思っています。

そして、出来るだけあまり高い割増しで引張らない事です。

抜けてはなんの意味もないですからね。

緊張管理

一番のキモは「防食と維持管理」|打設して終わりじゃない

最後に、コレが本当に大事なんですが、グラウンドアンカーは「打設し緊張したら終わり」ではありません。

むしろ、打設後からの数十年をどう持たせるかが本番です。

引張材は鋼材なので、錆びたら一巻の終わりです。

だから現在の基準のアンカーは、防食を3重にもかける「多重防食」が大前提になっていて、防食の構造にもランクがあります。

特に頭部のキャップには防錆油、ヘッド裏には止水材を入れる。

防錆油はヘッドやくさび、PC鋼線にしっかり馴染ませないと数年で錆びる。

頭部処理 防錆油

ほんのちょっとした気づかいが、永続的に機能させるコツなんですね。

そして怖いのが、古い時代に施工された防食の弱いアンカーです。

実際、能登半島地震では、被災した斜面でアンカーのPC鋼線が破断したり引き抜けたりした事例が報告されていて、私も土木研究所の方から写真を見せてもらいました。

受圧構造物ごとズレて、完全に破断しているものもありました。

アンカーは目に見えない地中で効いている分、健全性の点検がものすごく重要だ、という事です。

打設時の緊張も大事。

でも、それと同じくらい、入れた後の防食と維持管理が大事。

これからアンカーに関わる若い人には、ぜひそこを意識してほしいです。

見えない仕事だからこそ、丁寧にやった分がちゃんと何十年先に返ってくる。

あとは丁寧な職人を使うことですね。

 

それではまた。

グラウンドアンカー工も維持管理工事の時代|既設点検の重要性

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