皆さんこんにちは。
エンタです。
じめっと暑い時期・・・
空調服でまだマシですが、時間の問題で空調服の使用がイマイチに!?
今年の夏もクッソ暑いんでしょうけど、国交省の現場では夏休みが・・・
県市町村は関係無く動くの休みは相変わらずだとは思われます。。。

閑話休題
今回は「グラウンドアンカー工の原価内訳」の話です。
一般の方から「アンカーって高いの?」と聞かれる事あります。
まぁ一般の方は特にその金額の高い低いがよく分からないと思いますが、公共工事は基本高いですからね。
それなりの性能と品質を担保していますからね。
特に削孔長が50mを超えるような長尺アンカーの見積なんてまぁまぁ高いですw
60m級の削孔を実際にやっている現場の人間として、機械・消耗品・リスク費用という3つの切り口で、単価の中身を分解してみます。
グラウンドアンカー工の原価は3階建て構造
結論だけを言うと、アンカーの原価は「初期投資(機械)+変動費(消耗品・材料・労務)+リスク費用」の3階建て。
国土交通省の施工パッケージ型積算基準でも、グラウンドアンカーの削孔は土質ごとに積み上げて積算していますよね。(前回の記事)
つまりお役所の積算でも「削孔は現場条件で金額がガラッと変わる」というのが大前提。
実際の公共工事の中身は国交省地方整備局が公開している設計内訳書(尾道・松江自動車道の法面工事)では、
同じ仕様のアンカー(φ12.7×5本より、最大荷重550KN)でも、削孔長10mを超え20m以内が1本641,300円、20mを超えると1本703,400円。
まぁこれは受圧構造物やアンカー材も含まれているので、パッと見は結構高いことに。
削孔のみであれば、20万前後でしょうか。

機械代3,500万円強はどこで回収するのか
長尺のグラウンドアンカーを削孔できるロータリーパーカッションドリル55kw級は、本体で3,500万~します。
88kw級は5,500万~です!(メーカー希望小売価格w)
ここにロッド、ケーシング、グラウトポンプ、プラント関係を揃えると、初期投資はさらに膨らみます。
この機械代、どこで回収するかと言えば、削孔した「m」でしか回収できないんです。
仮の計算をしてみます。あくまで説明用の仮定の数字です。
・機械本体:3,500万円
・仮に7年で償却すると:年間500万円前後
・年間の実稼働を仮に40日とすると:1日あたり約12.5万円
つまり削孔機って、現場に据えて1mも掘らない日でも、帳簿の上では毎日約13万円ずつ溶けていく機械なんですw
段取り替え、盛替え、待機、雨。動いていない日も償却は止まりません。
長尺削孔は1本あたりの削孔日数がどうしても長くなるので、10m級の削孔よりは効率が良くなるので原価的には押さえられます。
10m級の現場は小さな段取りが沢山出てくるので単価は上がる方向になりますね。
自社機ならまだマシですが、これが借りるとなるともっとコスト上がるのは分かりますよねー

ケーシング・ビットの消耗品コスト|深度で増える「孔の中の資産」
二重管削孔では、孔壁を保持するためにケーシング(外管)を継ぎ足しながら押し込んでいきます。
このケーシングがまた最近ドンドン値上げして。。。。。
うちや周囲の価格平均をベースに出しました。
| 品目 | 規格 | 参考単価 |
|---|---|---|
| ケーシング | 1.5m/本(φ90クラス) | 45,000円以上 |
| ケーシング | 1.5m/本(φ115) | 60,000円 |
※あくまで参考値です。時期・メーカー・購入ロットで変わりますので、正確な金額は各メーカー・商社さんに確認して下さい。
70m削孔なら、70m÷1.5mで約47本のケーシングが孔の中に入る計算です(実際の削孔構成は現場条件によります)。
φ115の参考値60,000円で単純計算すると、47本×60,000円=約280万円分の管が地山の中に刺さっている状態になるんですよ。
浅い孔ならちょっとした「道具」感覚で済むものが、長尺では「資産」になる。
この感覚が長尺アンカーの原価の入口です。これだけ在庫(道具)を持っていないと施工出来ません。
ビットももちろん消耗品です。硬い層に当たれば減りは一気に早くなりますし、途中でビット交換となれば全引き抜き・再挿入で削孔時間も飛びます。

リスク費用の考え方|60m地点でケーシング10本ロストした実例
うちの実例です。
70m削孔の現場で、60m地点でジャーミング(孔内で管が拘束されて動かなくなる状態)を起こし、ケーシング10本をロスト。
被害額は45万円相当でした。これで済んだからまだマシですよね・・・・
60mまで掘り進んだ労務も機械時間も全部乗った上での45万円ですから、現場単体の利益なんて一発で吹き飛びます。
ホント泣けますよw
原因としては、内部で折れてたり、ネジ部がバカになったりとイロイロあります。
これは「オペが下手だから起きた事故」ではなく「長尺削孔に構造的に付いてくる確率の話」だという事です。
深くなるほど、
・孔内の資材の資産額が増える(失う時は一気に失う)
・地山の情報が減る(ボーリング調査の点と点の間を掘っている)
・回収の難易度が上がる(60m先で固着した管は簡単には抜けません)
・削孔技術や経験が必要になってくる
だから長尺の見積には「保険料」としてのリスク費用を乗せる必要があります。考え方を表にするとこうです。
| 費用の性格 | 中身の例 | 見積への乗せ方 |
|---|---|---|
| 予測できる消耗 | ビットの摩耗、ケーシングの規定損耗 | 深度・土質に応じた数量で積む |
| 予測しにくい突発 | ジャーミング、鋼材折損、油圧ホース破損 | 率や保険的上乗せ(リスク費)で積む |
| 拘束コスト | 盛替え・待機・天候による機械拘束 | 機械経費・工程に日数で積む |
期待値のシミュレーションも考えます。
「10現場に1回」はあくまで説明用の仮定で、実際の頻度は地山・工法・オペの腕でまるで違います。
仮に45万円クラスのロストが10現場に1回起きる世界だとしたら、45万円÷10現場=1現場あたり4.5万円。
つまりリスク費4.5万円を乗せていない見積は、その世界では長期的に必ず赤字になる。これはただの算数です。
元請から見たら「何も起きなければ払い損」に見えるかもしれませんが、何も起きない現場の裏で、どこかの現場が45万円を吸っている。
それが削孔の現実w(他の現場は知らんがな!って事でも有りますが、施工業者は同じですからね)
ホント施工会社としてはシンドイですからwww

10m級と70m級の採算性比較|なぜ長尺は「別物」なのか
同じ「グラウンドアンカー1本」でも、10m級と70m級でどれだけ世界が違うかを考えて見ます。
私の感覚的にはなりますが、そうもおかしな事は言っていないとは思いますw
先に言っておくと、削孔の「効率」だけで見れば長尺の方が有利なのは分かりますよね。
据え付けたらまとまった量を掘り続けられる70m級に対して、10m級は盛替え・据え直しといった小さな段取りが沢山出てくるので、
mあたりで見ると単価は上がる方向になります。
じゃあなぜ長尺の方が1本あたりの単価が高いのか。(比較すると)
答えは効率ではなく、リスクが高いからです。
| 項目 | 10m級 | 70m級 |
|---|---|---|
| 削孔効率・段取り | 小さな段取りが多く、mあたり単価は上がる方向 | まとまって掘れるので効率は良い |
| ケーシング本数(1.5m/本換算) | 約7本 | 約47本 |
| 孔内資材の資産額(φ90参考値60,000円/本で単純計算) | 約31.5万円 | 約211.5万円 |
| ロスト時の被害イメージ | 数十万円規模 | 最大数百万円規模 |
| 標準積算の消耗量表 | 対象内(削孔全長30m以下との事) | 対象外 |
| 地山情報の確度 | 比較的高い | 深部ほど推定の割合が増える |
つまり10m級は「効率の勝負」。小さな段取りをどれだけ手際よく回すかで原価が決まります。
70m級は「リスクの勝負」。効率よく掘れる分の原価は抑えられますが、深くなるほど孔の中の資産額が膨らみ、
地山情報は薄くなり、一発のトラブルで失う金額が跳ね上がる。この保険料が単価に反映されます。
長尺アンカーの単価が高いのは「作業量が多いから」でも「効率が悪いから」でもなく、リスクの質が変わるから単価が上がりやすいんです。
まぁこの辺は特にその周辺の地山を知っているとリスク感が一気に変わります。
施工業者は長尺は効率が良いからと10m級の延長線の単価感覚で受けたら、ジャーミング回収不能で一発で利益が消えます。
リスク費用を乗せた見積を「高い」と言われて削るくらいなら、断る勇気も原価管理のうちです。
偉そうに書いてますが、うちもよく失敗しますからねw(勘弁してw)
それだけ長尺のアンカーは難しいんです。出来る限りベテランが行く方がイイのですが、そうとばかりも言えない状況も・・・

普通に考えて、こんな高級な工法って無いですよねw
まぁ土木は特殊なので機械や消耗品がそれだけ工法の為に作られていたりするのでこう言う事は多々有りますが、法面工事では最高級工法だとは思います。
ここまで書いて、じゃぁそのリスクを単価にどの位反映させればええのん!?ってなると思いますが、それはまた書きます。
AI使ってその辺の単価的なまとめもだいぶ出来てきたので、大手の単価や施工業者の単価も丸裸にして行こうかと思っていますw
あくまでも、我々施工業者が生き残って行くためのモノではあるのですが、
それではまた。



