グラウンドアンカー工の施工ミスはどこだ?完全版|削孔・注入・緊張・頭部処理で抜けないアンカーの作り方

皆さんこんにちは。

エンタです。

このブログでグラウンドアンカー工の施工ミスシリーズを書いたのが2018年、それを2023年にもう一回書き直したんですが、正直どっちも中途半端に終わっていましてw

今回、過去記事を読み返してみたら「あれ、この話その1で書いたやつと同じじゃん」ってところがいくつもあったので、思い切って全部一本化することにしました。

グラウンドアンカー工

閑話休題

グラウンドアンカー工って、正しく施工すれば設計通りの耐力が出ますが、どこか一箇所でも手を抜くと途端に抜けます。

しかも厄介なのは、抜ける原因のほとんどが「見た目では分からない」場所に潜んでいることです。

今回は、削孔から頭部処理まで、私が現場で実際にヒヤッとした経験と、地盤工学会の基準書の裏付けしながら、

施工ミスが起きやすいポイントを一気にまとめていきます。

①削孔後の洗浄|完璧を求めすぎなくていい工程

削孔が終わったら、ケーシング内の洗浄を行います。

これはケーシング内に残ったスライム(削孔で出る泥状の岩粉)を除去する作業です。

ぶっちゃけ、この洗浄がどこまで効いているかは眉唾なところがあります。

やらないよりはやった方がいいというレベルで、私が若い頃はそこまで神経質にやっていませんでした。

理由は単純で、水削孔メインの現場ではコンプレッサーを使うほど激しい水圧が出ないからです。

インナーロッドをクルクル回しながら水を出す程度で、多少スライムが出れば終わり、という感じでした。

最近は水とエアーを混ぜて使う機械が増えたので、バッシャーと勢いよく出せるようになりましたが、それでも完璧な洗浄は正直難しいです。

なので、この工程が完璧にできないからといって、それだけで即施工ミスにはつながりません。

土砂とセメントミルクがしっかり混ざればそれはそれで問題無いですし、スライム溜まりに溜まればそれはそれでOK。

ただし、各種の施工書籍では「清水で洗浄する」とは書いてあっても、「エアで完全に吹っ飛ばせ」とまでは書いていません。

あくまで「残存スライムを可能な限り減らす」努力目標だと私は解釈していますw

孔内洗浄状況


②テンドン挿入|定着部の油汚れは致命傷になる

洗浄が終わったら、いよいよテンドン(PC鋼線やより線などの引張り材)を挿入します。

ここでまず注意したいのがラッパ管です。

ラッパ管がないまま挿入すると、自由長部を保護しているポリエチレンホースにキズが入る可能性があります。

グラウトが漏れると孔の底からしっかり注入出来ない可能性が出てくるので注意ですね。

もう一つ、もっと見落とされがちなのがテンドン定着部の油汚れです。

定着部というのは、地中でグラウトと直接付着して摩擦抵抗を発生させる部分です。

ここに油分が付いていると摩擦力が落ち、最悪の場合テンドンごと抜けます。

挿入時に使う手袋にも油分が付着していないか、地味ですが重要なチェックポイントです。

正直ここは、現場で一番「見落とされているのに気づかれない」ミスだと思っています。

定着部だけはしっかり養生してください。

そして、作業員の手袋などはしっかり拭くか、定着長側を養生するかして下さい。

テンドン挿入とラッパ管の確認


③セメントミルク注入|アンカー工一番のキモ

ここがグラウンドアンカー工で一番重要な工程です。

絶対大事な部分!

ここを失敗すると、ほぼ間違いなく抜けます。

まず確認すべきは配合です。

水が多すぎないか。

セメントミルクがユルい場合や硬さ、配合に不安がある場合は、迷わず作り直した方がいいです。

強度24kN程度は普通に配合すれば出る数値ですが、「硬すぎるから」といって現場で安易に水を加えてユルくする人がいます。

これは絶対にやめてください。

硬い時にゆるめたいなら、水ではなく混和剤を使うべきです。

そちらの方がまだマシです。(今は最大2%まで入れる事が出来ます シーカセム)

施工管理者は、この配合確認だけはしっかり見てください。

また、設計では普通セメントの仕様となっています。

普通セメントでセメントミルクを練ると、フローコンーンで10秒前後です。

早強セメントでセメントミルクを練ると、フローコンーンで14秒~になります。

セメントの種類で濃度が変わりますので気をつけて下さい。

また、気温が高い、練り混ぜ温度が高いと硬くなる傾向になります。

吹付用お湯

もう一つの鉄則が、注入時には必ず最深部(最低部)から注入することです。

ドブ付け注入(削孔後に先にケーシング内へグラウトを注入し、その後テンドンを挿入する方式)の場合でも同じで、最底部から注入して削孔水と置き換えていきます。

口元からしっかりしたセメントミルクが出てくれば、定着部はまず問題ありません。

サラサラのミルクしか出てこないようでは話になりませんw(まず無いと思うけど)

加圧については、正直私は個人的にはそこまで神経質になる必要はないと思っています。

地盤工学会の「グラウンドアンカー設計・施工基準、同解説」では、加圧を「アンカー体周辺の地盤条件に応じた適切な方法を用いて実施する」としており、具体的な数値まで踏み込んでいません。

加圧状況

一方でアンカー協会側の資料には「孔壁の緩みを防止するが、やり過ぎは逆に緩ませる。0.1〜0.5MPa程度で行う事が多く、定着部が深い場合は地下水圧以上かつ換算水位2倍以下」という目安が書かれています。

ちなみに、ホースが0.5Mpa以上で破裂しますw

なので現実的な数字としては0.2~0,3Mpaで十分。

とはいえ実際の現場では、テンドン定着部には高低差だけでかなりの圧力がすでに掛かっています。

わざわざ追加で圧を掛ける必要性について、私自身は正直疑問を感じている部分があります。

しかも除荷するのでそれ以上の圧は掛からないw

注入時の定着部の圧力状態は?(加圧の必要性)

アンカーグラウト


④緊張工|1.25倍という数字の落とし穴

緊張工でのミスは、どちらかというと現場の職人よりも施工管理側に起きやすいです。

緊張管理で管理者の多くが勘違いしているのが、最大試験荷重の計算方法です。

ランクAの設計アンカー力(Td)に対して、「Td×1.25を超えないように」最大試験荷重を設定するというルールがあります。

ここまでは合っています。

ただ、多くの現場では「1.25倍で計算する」こと自体が目的化してしまっている印象があります。

私が引っかかったのは、この基準がどんな地盤条件でも一律「1.25倍」を基準に試験していいわけではない、という点です。

定着部がガチガチの岩盤なら1.25倍でも余裕でしょう。

しかし、水が入ると削孔しにくいヌメヌメした泥岩層だったらどうでしょうか。

定着長が長くても不安が残りますし、「もう少し軽めにしたい」と感じるのが現場の感覚だと思います。

定着長最大の10mの設定の現場だったらどうですか?

1.25倍で抜ける可能性が出てくる訳です。

 

なので、その感覚を、ちょっとビビった感覚を試験値に反映していいんですw

地盤工学会「グラウンドアンカー設計・施工基準、同解説」の解説8.4適性試験・8.5確認試験の項目には、次のように記載されています。

「計画最大荷重はテンドンの強度特性や供用期間・構造物の重要度による分類などを考慮して定める。ただし、次に示す荷重を超えないものとする。ランクA 設計アンカー力(Td)×1.25、ランクB 設計アンカー力(Td)×1.10」

つまり1.25倍は「上限値」であって、必ずそこまで載荷しなければならないという規定ではありません。

現場の実状に即して責任技術者の判断でこれ以下に定めてよい、という趣旨です。

今後何十年と供用していくアンカーに対して、毎回上限ギリギリまで負荷をかけて試験する必要性は、私はそこまで高くないと考えています。

ただし、セットロス(緊張力の初期低下)を考慮する場合は、1.10倍以上1.20倍以下程度で行った方が無難です。

セットロスは定着荷重の1.3倍とかなる時もあるので要注意!!

私自身は適性試験・確認試験とも同じ掛け数で統一していて、実際の掛け数は1.15〜1.2倍程度で運用しています。

試験の種類ごとに数字を変えないので、電子小黒板の記録も楽になりますw

 

もう一つ、緊張工で実際にヒヤッとしたのがジャッキのプレッシャーゲージの読み間違いです。

圧力計アップ

昔、私が現場監督だった頃、ジャッキを操作していた職人が破断荷重ギリギリまで引っ張っていたことがありました。

本人曰く「勘違いしていた」とのことでしたが、このゲージは正直かなり見にくく、老眼だとなおさら判別しづらいですw

それ以降、うちではこのプレッシャーゲージに段階表示のテプラやマジックで印を付けるようにしています。

マジックで書いてもシンナーで簡単に消せるので問題ありません。

デジタル圧力計

もしくはデジタルゲージを使うとミスが少なくなり、創意工夫でも使えます。

うちは元請けではないので現場での指示までは行いませんが、聞かれれば提案するようにしています。

プレッシャーゲージの段階表示でミス防止(緊張管理)


⑤頭部処理工|長期的に一番あとでジワジワ効いてくるミス

最後は頭部処理工です。

ここは施工直後には分からず、数年経ってから初めて問題が表面化するタイプのミスなので、正直一番厄介です。

一番のポイントはアンカーヘッドのサビです。

実施工の現場では、緊張後にアンカーヘッドへグリスを塗る行為自体が、意外にきちんと行われていません。

多くの場合、ヘッドキャップにグリスを入れて蓋をするだけで作業完了、という流れになりがちです。

例えばKTB製のキャップの場合、アンダーキャップの中にグリスが入っている構造になっていますが、

そのままキャップを取り付けて終わり、という施工では、長期的に見ると錆びてくることになります。

この話は以前も書いたことがあるのですが、グラウンドアンカー工では長期的な視点で見ると頭部処理が非常に重要な工程です。

大事なことなので改めて書きます。

頭部処理

緊張が終わったら、できるだけ早く防錆油を頭部に塗ってください。

目的はシンプルで、サビの原因になる水と酸素をできるだけ早い段階で遮断することです。

また、PC鋼線を切断した後、その切断部分もすぐに錆び始めます。

ここにはエポキシ塗料を塗るか、防錆油を塗るかのどちらかの処置を行ってください。

地盤工学会「グラウンドアンカー設計・施工基準、同解説」の頭部処理の項目でも、

「アンカー頭部には、アンカー頭部の防食や防護を目的として、緊張・定着後速やかに頭部処理を行う」

「アンカー頭部をキャップで覆い、キャップ内に防錆油等の防食用材料を充填する」と明記されています。

緊張定着後すぐに頭部処理ができない場合は、雨水などで定着具・テンドンが錆びないように仮の防食処置を行うこと、とも書かれています。

基準書がわざわざこう書くということは、それだけ現場で後回しにされがちな工程だということの裏返しでもあると思います。

グラウンドアンカー工の施工ミスしやすい部分は、大きく分けるとこの5つです。

それ以外にも細かい部分はまだあるような気がしますが、やはり一番のポイントはセメントミルクの配合と、頭部処理の2つだと思っています。

この2つだけは、忙しくても手を抜かないようにしています。

頭部処理 防錆油


こうして5つの工程を並べてみると、グラウンドアンカー工って「派手なミス」よりも

「地味に見落とされる作業」の積み重ねで抜ける方が多いんだなと、書きながら改めて思いました。

セメントミルクの配合を水でごまかさない。

定着部の油汚れを見逃さない。

1.25倍という数字を思考停止で使わない。(各荷重段階も同じ)

そして頭部処理を後回しにしない。

特別なことは何もなく、基本のことを基本どおりにやり続けるだけなんですが、これがなかなか現場では難しいんですよねw

うちも完璧にできているとは言えません!

互いに注意し合って行ければ良いと思っています。

だからこそ、こういう地味なチェックポイントを言語化して残しておくことに意味があると思っています。

 

それではまた。

頭部処理は人もアンカーも同じ|丁寧に

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