加齢で適応能力はどう変わる?暑熱順化・寒冷作業・新工法導入を最新論文で解説

皆さんこんにちは。

エンタです。

法面の現場をやっていると、「同じ条件なのに、若手とベテランで明らかに反応が違うな」と感じる場面があると思うんですよ。

真夏のモルタル吹付で若い子のほうが先にへばっていたり、逆に冬場のロープ作業で年配の方の手指の冷えが極端だったり。

これは単なる「気合の差」で片付けられる話ではなく、ちゃんと生理学的な根拠があったんですw
(オッサンの適用能力って低いよなぁ~って話しになって詳しく調べて見ましたw)

今回は人間の年齢による適応能力について、最近の論文をいくつか拾ってきましたので、現場管理に落とし込める形で書いてみたいと思います。

外国人スタッフを抱えている方や、若手教育を担当している現場監督さんにも参考になるんじゃないかと思います。

法枠吹付工


1. 加齢で「暑さ」への適応能力はどう変わるのか

論文を見ていくと、高齢者(おおむね50歳以上)には次のような変化が起こることが分かっています。

発汗量の減少、皮膚血管拡張の減弱、自律神経系の調節の鈍化、水分保持能力の低下、そして温度知覚そのものが鈍くなる、という五つです。

特に怖いのが温度知覚の鈍化らしいです。

「自分はまだ大丈夫」と感じていても、体の中ではすでに深部体温が危険域に近づいている、ということが起こりやすい。

飲食店のじいちゃん、ばあちゃんとかが、異様に熱そうなモノ持っても平気でいるアレ!!!w

数字で見るとさらにインパクトがあります。海外の研究では、50歳以上の労働者は同じ熱負荷を受けたとき、若年者(19〜30歳)と比べて1.3〜1.8倍の体熱を蓄積するという結果が出ています。

乾熱でも湿熱でも、運動中でも安静時でも同じ傾向だったそうです。

ベテランの方が経験では強くても、体では明らかに不利になっている、というのは前提として知っておきたい事ですね。

要はベテランは気がついた時にはもうヤバイと言うことです!

若者と年配者の体熱のこもりやすさ


2. 寒さへの適応能力も加齢で低下する

冬場の話もしておきます。海外の論文(J Appl Physiol)によると、高齢者は寒冷ストレスを受けた際に、末梢血管収縮が弱くなる(手足の血流維持が下手になる)、

寒冷誘発性の代謝熱産生が低下する(震えて熱を作る能力が落ちる)という特徴があるそう。

高齢者は寒冷下で皮膚温が低く、特に四肢で顕著という結論って書いて有りましたw

法面の冬期作業に置き換えると、ロープ作業中の手指の感覚低下や、グリップ力の低下につながりやすいということ。

ベテランほど「冬は手が動かなくなって困る」と言われるのには、ちゃんと理由があったわけです。

高齢者は冬手が動かなくなって困る


3. 新しい環境への適応 — 認知的柔軟性の話

ここからは少し角度を変えて、新しい環境・新しい工法に対する適応の話。

「年寄りは新しいことを覚えるのが苦手」というのは、よく言われる話ですよね。

最新の研究が示しているのは、もう少し優しい事実でしたw

高齢者は新しい目標に向けて認知状態を適応させるのに時間がかかるが、

十分な時間が与えられれば望ましい状態に到達する能力は保たれている、というのが結論です。

つまり「できなくなる」のではなく「時間がかかる」だけ。

これは現場での新人教育・新工法導入の際にとても重要な視点だと思います。

さらに面白いのが、別の研究で示されている知見です。高齢者は「現場の手がかり」を使うのが上手いんですよ。

どういうことかと言うと、若い人は頭の中だけで「次はこれをやって、ここに気をつけて」と考えながら動きます。

一方ベテランは、現場の風景・音・道具の配置といった周囲の情報そのものを”外付けの脳”のように使うんです。

法面の現場で言えば、削孔音が普段とちょっと違うとか、ロープの張り具合がいつもと違うとか、吹付の戻り方がおかしいとか、そういう「現場の異変」を瞬時に察知する能力ですね。

これって若手が頭で一生懸命チェックして判断していることを、ベテランは現場から直接読み取っているわけです。

加齢で「考える容量」は確かに減ります。

でもベテランはその不利を、経験で蓄積した感覚でしっかりカバーしているんです。

新しい工法を覚えるのは時間がかかっても、慣れた現場での異常検知では絶対に若手より強い。

これがベテランの本当の強みなんだと思います。


4. 高齢でも「暑熱順化」はちゃんと効く

ここまで読むと「歳を取ったらどうしようもないのか」という気分になるかもしれませんが、ちゃんと希望のあるデータもありました。

海外の研究では、6〜8日間の暑熱順化トレーニングが、訓練経験者・未経験者を問わず、50歳以上の集団でも効果があったと報告されています。

具体的には、発汗率が上がる、血漿量が増える、心拍数が下がる、深部体温の上昇が遅くなる、皮膚温が安定するといった変化が起こります。

要するに体が暑さに慣れる、ということです。

ただし米国労働安全衛生研究所の推奨では、高齢労働者・持病のある労働者・重装備の作業者は、

通常5〜7日のところを10〜14日に延長することが望ましいとされています。

法面工は重装備で斜面に張り付く作業ですから、まさにこの長めの順化期間に該当する仕事だと思います。

前回書いた熱の反射の事も考えると法面屋は2週間は順応期間ですねー

高齢者の順応期間


5. 現場での実務に落とし込むと

ここまでのエビデンス(海外の論文等)を、法面工事の現場管理に落とし込むとどうなるか。

私なりに考えてみました。

まず押さえたいのが、両端のリスクです。

熱中症関連の労災は、暑熱順化を欠く若年労働者(18〜24歳)と、体温調節能力が低下した高齢労働者(54歳以上)の両方で発生率が高いんです。

20代前半と50代以上が両端のリスクゾーン、経験豊富な30〜40代の中堅層が一番安全、という構図になります。

現場感覚とも一致するんじゃないでしょうか。

そして外国人新人の受け入れ時に特に意識したいのが、

熱関連の労災死亡の約半数が「就労初日」に発生し、70%以上が「最初の1週間以内」に発生しているというデータです。

ベトナム・ネパールから来た技能実習生に、いきなり盛夏のモルタル吹付をフルタイムでやらせるのは、エビデンス上もリスクの高い行為。

20%ずつ段階的に作業量を増やしていく「暑熱順化トレーニング」は、外国人新人にこそ徹底すべきだと思いました。

新工法の導入時も同じで、ベテランに新しいやり方を覚えてもらうときは急かさないこと。

能力が劣っているわけではなく、適応に時間がかかるだけです。

十分な時間があれば若手と同じレベルに到達できる、というのが研究で示されている事実。

逆にベテランの「現場の異常検知能力」は若手には真似できない財産ですから、これは積極的に活用していきたいですね。

暑熱順化トレーニング


「気合が足りない」「最近の若いもんは」と片付ける前に、こういう生理学的な事実を知っておくと、現場の見方が変わってくるんじゃないかと思います。

ベテラン・若手・外国人スタッフが混在する法面工事の現場では、それぞれの特性を理解したうえでの安全管理が、結果として工程の安定と労災ゼロにつながっていくはずです。

 

それではまた。

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