自穿孔ロックボルトの施工ポイント|現場で迷わない削孔・注入Q&A

皆さんこんにちは。エンタです。

今日は自穿孔ロックボルトの施工ポイントを、Q&A形式で整理して書いてみます。

自穿孔ロックボルトは「使った事のある業者ほど慎重になる工法」だと私は感じています。

一見シンプルに見えて、削孔・注入・検尺のいずれも判断ポイントが多く、

現場で迷う場面の多い工法です。

今回は実際によく頂く質問を中心に、削孔から出来形確認まで順番に見ていきます。


自穿孔ロックボルトとは

自穿孔ロックボルトは、削孔ビット・ロッド・接続カップラーで構成され、ロッド本体を孔内に残置したまま、そのボルトのセンター穴からグラウトを充填するロックボルト工法です。

通常の他穿孔タイプと違って、削孔と本体挿入が同時に完了するのが特徴で、孔壁が自立しない地山で多用されます。

注入材はJIS A 6204準拠のセメントミルクを使用するのが一般的です。

自穿孔 鉄筋挿入工


本設から仮設用途が主体になった経緯

以前は自穿孔ロックボルトを本設として採用していた時期がありました。

ただ、注入の確実性に課題があり、現在は仮設用途が主体です。

注入が孔奥まで均一に行き渡っているかの確認が難しく、設計強度を担保するうえでの不確実性が指摘されてきた経緯があります。

一方で、近年は溶融亜鉛めっき仕様(JIS H 8641 HDZ55相当)や注入確認手法の改善が進み、条件次第で本設採用されるケースも出てきています。

ただしこれは設計者と協議のうえで判断する話で、現場の独断で本設・仮設を切り替えられるものではない点には注意して下さい。

小型の削孔機が持って行けない施工箇所とかも協議の対象になりやすいです。


削孔で見るべき判断ポイント

削孔の見極めはシンプルで、「クリコ(削孔スライム)が出ているか」です。

クリコが排出されているうちは、孔壁がある程度自立して削孔が進んでいると判断できます。

逆にクリコが極端に減ったり止まったりした時は、孔壁崩壊や先端詰まりの可能性があります。

一度ロッドを20〜50cm程度引き戻し、エアーで再排出を確認してから再送するのが基本動作です。

スライムが出ていないのに前に推し続けると、ロッドの折損や、注入時にグラウトが全体に行き渡らないと言うリスクが高くなります。

後から検尺で気付いても手遅れになりやすいので、削孔段階での観察が重要です。

自穿孔の削孔においてイケイケのタイプは無理です!

自穿孔ロックボルト 削孔状況


注入で外してはいけない基本

自穿孔ロックボルトの注入は、ロッド本体センターの穴(内径13mm程度)から行います。

注入ホースを別途抱かせる工法ではないので、ロッド内が削孔屑で詰まっていれば先端からの注入ができません。

削孔完了時点でロッドを通してエアー貫通を必ず確認する事は必須です。

注入の大原則は「最深部から注入し、口元までリターンを確認する」こと。

これができないと部分的にしか充填されていないロックボルトになり、極端な場合は鉄筋が刺さっているだけの鉄筋状態にもなりかねません。

なので、削孔後にクリコ(スライム)が出ているか?出ていないなら、ロッドに口を当てて息を吹いてみてください。

コレで吹けないならロッドを1度抜いて目詰まりを解消し再度削孔挿入して下さい。

口元からのグラウトリターン確認後は必ずロッドをシャクって(震動)グラウトとの付着を促す事が大事です。

専用の注入アダプターが無いと注入そのものが成立しないので、機材の事前準備も重要です。

自穿孔ロックボルト オーバーフロー確認


現場でよくある質問Q&A

ここからは、現場や問い合わせで実際によく頂く質問にお答えしていきます。

Q1.削孔中、クリコが急に出なくなりました。続行して良いですか?

A.一度ロッドの送りを止めて下さい。孔壁崩壊か、先端ビット詰まりの可能性があります。

ロッドを20〜50cm程度引き戻し、エアーで再排出を確認してから再送するのが基本動作です。

それでも改善しなければ、ロッドを引き抜いて詰まりを解消し再度削孔します。

Q2.N値10以下の崖錐や強風化岩でも削孔できますか?

A.条件次第ですが、難易度はかなり上がります。孔壁の自立が見込めない地山では削孔自体が成立しにくく、注入リターンも確認しづらくなります。

崖錐になるとグラウト自体が他所へ逸脱する可能性が高いので自穿孔では非常に厳しい条件化になります。

削孔機(削岩機)にスイベルを取付、粘土等は水堀で削孔すると俄然掘りやすくなります。

場合によっては工法変更を発注者と協議すべき場面です。無理に押し通して施工不良が後で発覚するより、事前協議の方が結果的に早道になります。

こういう最悪の場合は2重管削孔になる可能性も高いです。(出来ればですが)

Q3.鉄ビットとチップ付きビットはどう使い分けますか?

A.地山の硬さで使い分けます。鉄ビットは比較的軟質な地山向きで、岩盤に当たると進みません。

チップ付き(超硬チップ)ビットはある程度の岩盤まで対応できますが、岩盤の急変部でロッドに過大な負荷がかかるとロッドが折損するリスクが上がります。

適度に上手いチカラ加減とクリコの返りを見つつ引き戻し判断が重要です。

Q4.手堀削孔の限界長さはどれくらいですか?

A.積算上は2.5m程度が一つの目安です。これを超える長さは機械削孔への切り替え検討が現実的です。

手堀でそれ以上の延長を続けると、クリコの返りが悪くなります。

が、弊社では最大5mまでの実績はありますが、土質によりますし、スイベル+水堀で行いました。

またクリコ(削孔スライム)の返りが非常に重要なので気を使います。

Q5.注入後の検尺はどうやるのですか?

A.ロッドを抜けない工法なので、センター穴(注入用穴)にワイヤーを差し込んで検尺します。

2〜3mm程度のワイヤーを所定長に切り、到達深度を確認する方法です。

ビット部分まではワイヤーが届かないので、その分(一般的に30mm前後)を差し引いて評価します。

具体的な控除長は使用するビットで実測して下さい。

削孔する前に検尺ワイヤーの確認も行っておくと正確です。

Q6.口元からリターンが出ない場合、どこを疑えば良いですか?

A.主な原因は3つあります。(1)ロッドセンター穴の詰まり、(2)孔壁崩壊によるグラウトの逸脱、(3)孔壁崩壊による詰まり。

ロッド内の貫通エアー確認と、打設後ロッドが動くかどうか?が大事です。

また、エアーが貫通している場合はポンプの圧力を上げて注入すると上がる可能性が高くなります。

Q7.余堀はどの程度見ておくのが良いですか?

A.設計長に対して若干多めの余堀を取ると先端の詰まりリスクが下がります。

ただし泥炭部などの軟弱層を水堀した場合、逆流の恐れがあるので一律に多くすれば良いというものでもなく、地山条件を見て調整する必要があります。

自穿孔ロックボルト グラウト注入


ベテラン業者を見極めるサイン

最後に、自穿孔ロックボルトを理解している業者の見分け方を挙げます。

発注後の話しなので、参考程度に。

  • シャンクロッドの予備をしっかり持参している:折損リスクを理解している証拠です。
  • ロックボルト用スイベルを所有している:水堀削孔まで対応でき、削孔が安定しやすい。スイベル所有業者は意外と少ないです。
  • 注入アダプターを複数サイズ揃えている:ロッド径違いに即応できる現場対応力があります。
  • クリコの色と量で地山を語れる:経験値が削孔判断に反映されている。

逆に「自穿孔は簡単ですよ」と即答してくる業者は、私的にあまり推奨できません。

実際の削孔・注入の難しさを十分に経験していない可能性があります。

自穿孔ロックボルトは、地山との対話的工法です。

クリコの量、ロッドの振動、注入リターンの戻り具合、どれも現場でしか掴めない情報の積み重ねで成り立っています。

施工手引きを読むだけでは、この工法のポイントは見えてきません。

経験を積んだ職人さん・施工管理者の感覚を、これから入ってくる若い世代にどう繋いでいくか。

自穿孔ロックボルトは、その典型のような工法だと私は思っています。

 

それではまた。

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