鉄筋挿入工にアルミキャップは不要論|NEXCO仕様で見直す8つの理由

皆さんこんにちは。エンタです。

先日、NEXCO以外の発注の法面現場で、鉄筋挿入工の頭部処理にキャップが付いていない現場を見かけました。

「おっ、ようやくここまで来たか」と思ったので、また、材料メーカーから嫌われる話を書きますw

結論から言うと、もうそろそろ「頭部キャップ無し」が全国的な標準になって欲しいんですよ。

以前ブログ内のアンケートでも取った内容ですが、改めて根拠を整理して書きます。

キャップの無い鉄筋挿入工

そもそも頭部キャップって何のためにあるのか

鉄筋挿入工の頭部キャップは、もともと「頭部の鉄筋が露出して錆びる」のを防ぐために生まれた部材です。

アルミキャップに防錆油を充填して、ナットや座金、鉄筋の頭部を密閉する仕様。

ところがこの仕様、よく考えると今の時代に必要なんでしょうか?というのが今日の話。

キャップが要らない理由を1個ずつ見ていきます

1. 昔は生材(メッキ無し)で錆びる恐れがあったからキャップが生まれた

鉄筋挿入工が普及し始めた1980年代~90年代頃、PC鋼棒や異形棒鋼は基本的にメッキ無しの生材が一般的でした。

露出した鉄筋の頭部は雨水と酸素で腐食します。だから当時は型枠を作って、コンクリートを流し込む仕様でした。

もしくは、法枠の中に埋め殺す仕様が主流でした。

しかし、コレでは管理出来ない(管理しないのにw)と言う理由で、アルミキャップに防錆油を充填して

「フタをして油漬けにする」という発想が生まれたわけです。

当時の技術基準としては、これは合理的な判断でした。

問題はその「当時の合理性」が、今もそのまま標準仕様として残り続けていることなんです。

昔の鉄筋挿入工と今の鉄筋挿入工

2. 今は全て溶融亜鉛メッキなので錆びない

現在、鉄筋挿入工で使われる補強材はほぼ全数が溶融亜鉛メッキ仕様です。

昔はメッキ仕様は沿岸部のみで、材料高いから無理って状況でした。

が、それが気がつけばナットも座金も同じくメッキ品に。

つまり、素材の前提条件そのものが30年前から変わっているんですよね。

錆びない素材に錆び止めキャップをかぶせる。これって冷静に見ると二重対策の状態なんです。

メッキ厚もHDZ55(付着量550g/m²)以上が一般的で、鉄の生材時代とは耐食性能のレベルがそもそも違います。

3. メッキは50年以上保つ

日本溶融亜鉛鍍金協会の腐食データによれば、田園地域で約60年以上、工業地帯でも30~50年程度の耐用年数が実証されています。

法面構造物の設計供用期間(通常50年)を十分にカバーする数字。

「キャップで守らないと不安」というのは、生材時代の感覚を引きずっているだけ。

4. ナット(鉄)はアルミよりも盗まれない

これは意外と語られない論点ですが、泥棒目線では結構大事ですw

過去に金属スクラップ価格が高騰した時期、アルミキャップが盗難対象になった事例がありました。

逆に鉄ナットが剥き出しの状態だと、スクラップ価値が低いので盗難リスクはむしろ下がるんです。

「むき出しは危ない」という直感とは逆の話なんです。

しかもメッキ仕様の鉄は減額の可能性が高いです!

5. 緩み止めのボンドを付ければ大丈夫

ナットの緩み止めには、ロックタイトのような嫌気性接着剤を使えば、振動や経年での緩みは現実的にほぼ発生しません。

そして仮に緩みが発生しても、頭部が露出していればすぐに気付けるし、すぐに増し締めできる。

むしろキャップで密閉している方が、内部で何が起こっているか見えない、というデメリットがあるんですよね。

ナットにボンドを付ける

6. NEXCOではすでに頭部処理はほぼキャップ無し

ここが一番強い根拠かもしれません。

皆さんもご存知の通り、NEXCOは維持管理にもしっかりしている発注機関の一つですよね。

そりゃ供用中の高速道路で構造物が破損したら、それこそ大事故になりますからねー。

そのNEXCOが「キャップ不要」と判断して標準化しているという事実。(過去のデータを元にキャップを無くした事実があります)

同程度、もしくはそれ以下の供用条件の県道・市道・林道で、なぜNEXCOより厳しい仕様を要求し続けるのか?

整合性が取れていないと思いませんか?(まぁ思考停止なだけ??)

7. 防錆油の寿命は5年~10年程度

これも意外と知られていない盲点なんですが、キャップで密閉していても、中の防錆油は揮発・劣化していきます。

一般的に防錆油の保護効果は5~10年程度と言われています。(以前ブログでも書きましたが)

50年保つメッキの上に、10年で切れる防錆油をかける意味って何でしょう?www

実際に維持管理で開封してみると、防錆油が枯れてカピカピになっているケースが多いんですよね。

「フタを開けたら何も保護されていなかった」というオチ。

メッキと防錆油の耐用年数

8. 結局のところ、税金の無駄

公共工事のコスト感覚で言えば、防錆油込みのアルミキャップ1個あたり2,500円前後

1現場100本ならざっくり25万円。

年間ベースで全国の工事を換算すれば数億~数十億円規模の話になってきます。

そのお金で補強本数を1本でも増やせれば、防災効果は確実に上がる。

公共工事は税金で動いているわけですから、不要な仕様にお金を回し続けるのは、本来は許されない話なんですよね?

設計でやっている経済比較っていったい・・・

シース管・センタンキャップも実は同じ話

ここまで頭部キャップの話をしてきましたが、実は同じ理屈がシース管と先端キャップにも当てはまります

メッキ鉄筋が標準化された現在、防食目的としての存在意義はかなり薄くなっています。

先端キャップも同様で、注入材で完全に充填される前提なら、先端を保護する理由はほぼありません。

つまり、頭部処理だけの話じゃなくて、鉄筋挿入工全体で「過去仕様をそのまま踏襲している部品」が複数あるということ。

ここを一度見直せば、1現場あたり数本~十数本は補強本数を増やせる計算になります。

しかも、先端キャップとシースがあることで、その部分はグラウトに付着していないと言う事。(付着切れ)

鉄筋挿入工の注入ホース

設計慣行が更新されていないだけ

誤解しないでほしいんですが、コンサルさんを悪く言いたいわけじゃないんです。

設計には前例踏襲という安全側のロジックがあって、それ自体は理解できる。

ただ、素材も技術も変わっているのに、図面と仕様書だけが30年前のままで止まっているのは、やっぱり違和感がありますよね。

NEXCO仕様がすでに「キャップ無し」で実績を積み上げている以上、他の発注機関も追随する根拠は十分にあると思うんですよ。

頭部キャップを使用しない理由を整理すると

  • 素材は錆びない(全数メッキ)
  • メッキは50年以上保つ
  • 防錆油の方が先に寿命が来る
  • NEXCOはすでにキャップ無し
  • 盗難リスクはむしろ鉄ナットの方が低い
  • 緩み止めはボンドで十分対応可
  • 税金の無駄

納得出来ると思いますw

 

シース管とキャップを抜くだけで、その分のコストで補強本数を1本でも多く打てる。

これは防災インフラとして純粋にプラスの話ですよね。

発注者・コンサル・施工者の三者で、現場ごとに「これ本当に要りますか?」を一度議論するだけで、ずいぶん変わると思います。

大手ゼネコンや大手コンサルが先陣を切って動いてくれると一番早いんですが、

現場サイドからも声を上げていかないと変わらないですよね。

 

ただし、例外があります。

車が接触すると危ない場所、人が接触する可能性がある場所などはフラットキャップがオススメです。

NEXCOも車に近い下部はフラットキャップを使用しています。

フラットキャップ 全景

 

それではまた。

グラウンドアンカー工の最終重要施工箇所は頭部処理の防錆油!

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