施工中の崩壊対策をやろう!って話し!(その2)

皆さんこんにちは。エンタです。

前回の続きです。

施工中の法面崩壊、原因はほぼ水(その1)

 

その1では、施工中は安全率Fsが1.2に届いていない事、水は一番弱い所に集中する事、シート養生は応急処置にしかならない事、を書きました。

今回はじゃあどうするか、という具体的対策の話ですw

結論は「打込み水抜き」一択

私が超オススメは、施工中にあらかじめ打込み水抜きを入れておく、という方法です。

長いものじゃなくて良い。1mでも2mでも良いんです。

無いよりは遥かにマシですから。

原理はメチャ単純で、切ったばかりの法面に圧力の逃げ道を先に作っておく、それだけです。

地山の水圧が溜まる前に、あらかじめ抜く穴を仕込む。

ダムで言えば常用洪水吐きみたいなイメージかと。

常に水が抜ける機構を、崩れる前に、弱いうちに、入れておく。

コレで施工中のリスクをかなり軽減出来て、かつ施工後まで効果を発揮する、という一粒で二度美味しい!

ダムの機構 常用洪水吐き

鉄筋挿入工との併用タイミングがミソ

鉄筋挿入工の現場だと、打込み水抜きを入れるタイミングが超重要。

私的には、その段の鉄筋挿入工の施工が全部終わってから、最後に水抜きを打つ、という順番がベストですね。

なぜか?

理由は簡単で、先に水抜きを打ってしまうと、あとから鉄筋挿入工で注入するセメントミルクが、水抜き管の方へ流れ出してしまう可能性があります。

有孔管ですから、ミルクが開口部から入ってくる。で、硬化してしまう。

コレやってしまうと、せっかくの水抜きが水抜きじゃなくなっちゃうので、段ごとに「鉄筋挿入工 → 水抜き」の順で進めるのが現場的には正解かと思います。

ちなみにセメントミルクの物性について以前書いた記事(注入時の定着部の圧力状態は?)も合わせて読むと、

なぜミルクが予想より広く回るかのイメージがつきやすいかと思います。

グラウンドアンカー工 法枠工 水抜きボーリング工

1mでも2mでも意味がある

「そんな短い水抜きで効くの?」と思われるかもですが、効きます。

なぜなら、施工中の崩壊で多いのは表層崩壊で、国土交通省の定義では厚さ0.5〜2.0m程度の表層土が基盤層との境界に沿って滑落する崩壊と明記されています。

つまり、施工中に法面屋を一番困らせる崩壊って、深さ0.5〜2.0mの範囲で起きてるって事なんですよね。

さらに、日本道路協会『道路土工-切土工・斜面安定工指針』では、切土による応力解放と、その後の乾燥湿潤・凍結融解の繰返し作用によって、のり面表層から次第に土砂化して崩壊しやすい、と明記されています。

切ったばかりの法面が一番危ない、という現場の感覚は、ちゃんと指針にも書かれています。

ココにきて、1〜2mの打込み水抜きの意味が見えてくる。

表層崩壊が起きる深さ=0.5〜2.0m

応力解放で風化・土砂化しやすい範囲=のり面表層

ここに浸透してきた雨水が過剰間隙水圧となり、滑り面の摩擦抵抗を下げて、崩壊の引き金になる。

1〜2mの打込み水抜きで抜こうとしている水は、まさに崩壊を起こす本人を狙い撃ちしているって事です。

長尺の水抜きボーリング工は、深層の地下水・地すべりブロック内の水を抜くのが目的でですが、全ては表層にもつながります。

 

国内では排水補強パイプが結構なシェアを持っているようには思います

排水補強パイプPDR工法

PDR工法

設計には載らない現実、だから「創意工夫」

ココが日本の法面工事の悲しい所なんですが、予防工事としての水抜きって、設計にまず入ってこないんです。

「崩れていないものを守る工事」にはお金が付きにくい、というヤツ。

私がよく言っている法面保護工事じゃ無くて、法面崩壊時事後工事。

崩れてからがお仕事ですw

地すべり対策とか明確に変状が出てる現場はもちろん別ですが、通常の切土のり面の当初設計で打込み水抜きが指定で入っている事ってまず無いですね。

なので、うちの場合はコレを創意工夫として自主的に入れています。

 

怪しい現場、湧水の気配がある現場、雨の後に法面が濡れ続けている現場。

そういう所は、指示が出る前に自分達で判断して打ち込んでおく。

コレを元請が創意工夫で出して加点されればなおよし。

コレで施工中の事故が減って、結果として機械も現場も職人も守れる。

お金にはならなくても、やって損な工事じゃないんです。

 

崩れる前に、圧を抜く

長々書きましたが、私的に言いたい事はこの一行に尽きます。

崩れる前に、圧を抜いておく。

法面の圧力(間隙水圧)を能動的に下げる工法って、実は水抜ししか無いんです。

鉄筋挿入工もグラウンドアンカー工も法枠も、あくまでチカラで押さえる工法。

ただ、地山の中の間隙水圧が高い状態だと、土や岩のせん断強さ自体が落ちてしまうので、

押さえても押さえても地山がズルズル動く、という事になります。
(テルツァギの有効応力の原理:σ’ = σ − u。間隙水圧 u が上がれば有効応力 σ’ が下がり、せん断強さも下がる)

逆に、水を抜いて間隙水圧を下げてから押さえれば、地山本来のせん断強さが上がり、

アンカーや鉄筋挿入工が設計通りに効きやすくなる、という事です。

あくまでも大雨時や施工中の崩壊対策ですが、その後の鉄筋挿入工やグラウンドアンカー工、法枠工にも十分効果を発揮しますよね。

 

怪しい現場で明日から出来る事として、1本でも良いから打込み水抜きを入れてみて下さい。

水が出れば出始めれば「当たり」、出なくても「保険」。

どっちに転んでも、永久的に機能します!

盛土や緩い山で人力ならポワローパイプとか良いですよ。

ポワローパイプ

ポワローパイプ

 

それではまた。

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