こんにちは、土木公務員ブロガーのカミノです。
建設業界で働かれている方は、建退共(けんたいきょう)って聞いたことありますよね?
私たち公務員は建退共には加入していませんので、どんな制度なのか全く知らない人もいると思います。
工事が始まると、施工業者が掛金収納書と貼付実績を出してくるので、なんとなくそのまま受け取って簿冊に綴っている人もなかにはいるのではないでしょうか?
間違った処理をしないように、ここでは、土木公務員向けに建退共制度をかんたんに解説します。
建退共とは?
建退共(けんたいきょう)とは、特殊な建設業の実態にあうように作られた、建設労働者の皆さんのための退職金制度のことです!正式名称は建設業退職金共済制度。
実は、建設会社のなかで自社で退職金制度を設けている会社はかなり少ないです。労働者の派遣が禁止されているものの、需要が安定しない業界で、人の移り変わりは激しいので、いちいち退職金制度を作るメリットが会社側にないし、退職金を充実させる安定した経営ができる会社は少なかったのです。
退職金がもらえなければ、働けなくなったとき、独立するとき、別業界に移りたいとき、生活が苦しくなってしまいますね。
そんなわけで、国が「中小企業退職金共済法」という法律により、建設業のための退職金制度を作りました。
国籍に関わらず、現場で働く大工・左官・鳶・土工・電工・配管工・塗装工・運転工・現場事務員など、すべて被共済者になることができます。
建退共のしくみ
建退共に加入している会社は、勤労者退職金共済機構へ「掛け金」を納め、納めた証である「証紙」を受けとります。証紙を購入するということですね。
会社は毎月働いてくれた日数分の証紙を労働者の共済手帳に貼付けます。1日1枚(320円分)です。※2021年9月以前は310円でした。
労働者は、共済手帳を大切に保管しておき(ふつうは会社に預けますが)、建設業界から引退するときに共済手帳に張り付けられた「証紙」の分だけの共済機構から「退職金」を受け取ることができます。
共済機構へ毎日積み立てるイメージですね。
退職金はどれくらいもらえるの?
さて、一番気になるところですが、退職金はどれくらいもらえるのでしょうか?
早見表はこんな感じです。
年数 | 退職金額 |
---|---|
1年 | 24,192円 |
2年 | 161,280円 |
5年 | 414,087円 |
10年 | 893,559円 |
15年 | 1,409,319円 |
20年 | 1,933,479円 |
25年 | 2,474,439円 |
30年 | 3,038,919円 |
35年 | 3,641,031円 |
40年 | 4,268,007円 |
退職金は長く働き続けるほど高くなります。
現在は運用利回り1.3%で設定されていますので、40年間働いたとして掛金額320万円にたいして退職金は420万くらいになりますね。
2021年9月以前までは利回り3.0%だったので40年間勤続で約600万円もらえていたんですが、急激に減っちゃいましたね(;´・ω・)
2020年度の支払い平均額は90万9000円、最高支給額は1264万7000円だったそうです。
建退共のメリット
メリットについても簡単に説明しておきます。
- 安心安全に支払われる
- 長く働くほどお得(運用利回りが高い)
- 他の会社でも続けられる
- 経営事項審査で加点される
労働者個人としては、会社が掛け金を負担してくれて、退職時にまとまったお金を受け取れるのでメリットしかありません!
安心安全に支払われる
国の法律をもとにした制度ですので、確実に支払われます。
なによりも大切ですね。
民間企業の就業規則などに基づく退職金なら少し不安ですよね。
長く働くほどお得(運用利回りが高い)
長く働くほどお得です。業界としては、労働者が続けやすいというメリットがありますね。
他の会社でも続けられる
建退共は、会社独自のものではありませんので、建退共制度に加入している会社に転職すれば、働いた期間を通年でカウントできます。
A会社に3年→B会社に2年→C会社に5年在籍したとして、すべて建退共制度に加入している会社だとしたら通算で全10年がカウントされるわけです。年数が増えれば退職金の利回りは高くなるのでありがたいですね。
会社側からしたら、労働者が転職してきやすくなるということですね。
経営事項審査で加点される
公共工事の入札に参加するための経営事項審査において、建退共制度に加入していると加点評価されます。これがメリットらしいです。
私は経営事項審査(よく経審と呼ばれます)についてはあまり詳しくないのでなんとも言えないのですが(;´・ω・)
監督員がチェックするところ
では、公務員(監督員もしくは契約担当者)が確認しなければいけないところを説明します。
工事の成績にも関わってきます。
- 公共事業では退職金が必須
- 契約後に掛金収納書を受け取る
- 建設現場の標識を確認する
- 証紙貼付実績報告書を確認する
てゆーかなんでイチ公務員が民間企業の退職金まで逐一チェックしなきゃいけないんだよ、ていう元も子もない疑問は置いておいて、ルール上の仕事の解説です。
公共事業では退職金が必須
公共工事を受注する場合は、会社が退職金制度をもっている、もしくは退職金制度に加入していることは必須となっています。
ほとんどの会社は建退共に加入されていますね。
他にも、中小企業退職金共済(中退共)や林業退職金共済(林退共)、自社の退職金制度などがありますが、どれかに入っていればOKです。
契約後に掛金収納書を受け取る
契約後に、受注者が建退共(もしくは他の退職金制度)に加入していることを示し、また、証紙を買ってることを確認するために、掛金収納書を提出してもらいます。
ポイントとしては、契約金額に応じた証紙枚数を購入しているかをチェックすることです。
当てはまる種別以外の土木工事で契約金額が15,000,000円なら、契約金額の0.36%の54,000円以上の証紙(169枚)を買わなければいけないということです。
これはあくまで目安の購入金額なのですが、実際は買っていないと役所担当者から是正指示されるはずです( ゚Д゚)
購入した証紙を、毎月労働者の労働日数に応じて貼り付けていき、下請け業者にたいしてもこの証紙を貼り付けます。
自社の退職金制度があるのなら、就業規則の写しや、証明する書類を提出してもらいます。
建設現場の標識を確認する
↓こんな標識を掲げるルールになってます。
工事案内標識のとなりにあるはずです。チェックしましょう。
証紙貼付実績報告書を確認する
証紙をきちんと貼付したのかを報告書で確認します。
余裕をもった金額の証紙を購入しているので、足りない場合はほとんどないはずですが、もし足りない場合は途中で買ったことがわかる掛金収納書をまた提出してもらいます。増額変更のときも同様です。
ただの集計表で確認するので、ほんとに貼り付けているのかは不明です。
意味のないチェックだなぁと思いますが、一応ルールですから…
おわりに
ということで、土木公務員向けに、建退共について解説してみました。
自分自身にはまったく無縁な制度ですが、仕事では指導する立場ですので概要を理解しておいたほうがいいでしょう。
労働者の皆さんは「共済手帳はとにかく大事!」ということを頭の片隅に入れて、会社に無くされたりしないようにしましょう( ゚Д゚)笑
では、今日はこのあたりで。
またぬん(*’ω’*)ノ