どうやら建設業界は、「クセが強い」人間が多いと思われているらしい。
どこからそんな情報が出回ったのかはわからないが、他業界の友人や知人と飲みに行くと、「建設関係ってクセが強すぎる人が多いけど、大丈夫なの?」と心配されることが多い。
私の場合、建設業界に入ってもう5年以上経つので、完全に環境に慣れてしまって、クセが強いかどうか全くわからない。言わば麻痺状態だ(笑)。
しかし、あまりにも他業界の友人に心配されるので、これまで出会った人たちを振り返ってみることにした。
驚いたことに、私もクセの強い人間にたくさん出会っていたことに気づいた(笑)。これまでに出会ったクセが強い(面白い)人たちを紹介しよう。
体力がウルトラマンな作業員
その人は、左官屋だったのだが、体力が3分しかもたない人だった(笑)。
生コン打設の際、天端押さえで呼ばれ、夏場だったので暑かったのもわかるが、たった3分で「腕が上がらない」と言い出し、コテを置いて一人だけ休憩していた。
肩でも痛めたのだろうと思い、その後も様子を見ていたのだが、1時間、2時間と経っても全く動く気配がない。まさか…と思って尋ねると、「今日はもう肩を痛めたので動く気はない」ときっぱり。
結局、他の作業員さんが必死に作業を進めてくれたので遅れはでなかったが、「何しに来たんや!」と心の中でツッコんでしまった。
パチンコとタバコに人生を捧げた職人
昼になるといつも外のベンチで寝ている職人がいた。いつ見ても昼食を食べている気配がなく、ある日気になって尋ねると「昼飯を買う金がない」との返答が。
話を聞いていくと、今月はパチンコで全財産を使い果たし、生活費が底をついてしまったらしい。自炊はできないのかと聞くと、家にも一切食材がないとのことだった。
しかし、その後気になってよく観察していると、毎日のようにタバコを吸っているではないか。タバコはどうやって買っているかと聞くと、パチンコであまったお金を全てタバコにあてているのだと言う。
彼に言わせれば、「タバコをやめるくらいなら、飯を抜いたほうが何十倍もマシ」だそうだ。タバコと飯なら、飯のほうが良い気がするが…。
トイレ引きこもりおじさん
1日中トイレに引きこもっているおじさんにも遭遇したことがある。
お酒が大好きで、仕事が終わると現場で缶ビールを開けて飲むくらいの人だったのだが、お腹が弱く、たくさん飲んだ次の日は、必ずと言っていいほどお腹を下すのだ。
1日のうち数時間を仮設トイレの中で過ごすので、周りからは「トイレ引きこもりおじさん」というあだ名が付けられていた。
しかも、その人が仮設トイレにこもってしまうと他の人がトイレを使えないので、引きこもりおじさん専用のトイレが設置されたという伝説まである。
女性ダンプ運転手にデレデレな親方
過去お世話になった親方は、かなりの強面で、誰にでも厳しい人だった。生コン車のバックが下手なだけで、現場に響き渡るくらい大きな声で怒鳴ったり、他業者の方からも恐れられていた。
だが、たまに来る生コン車の女性運転手にはめっぽう優しく、わざわざ乗っている重機から降りて、わざわざ誘導までしていた(笑)。この光景を最初に見た時は、あまりにも人格が変わりすぎて、笑いを堪えるのに必死だった。
――少し振り返っただけでも、建設業界は確かに「クセが強い」人間が多い。だが、言い換えれば、それだけ個性のある面白い人が多いということだ。
クセの強い人が多いので毎日飽きないし、何より楽しい。建設業界のクセが強い方々は、私からすれば宝のような人たちだ。