建設業の給与は他産業より高い
建設技術者の中でも、特に人手不足が深刻な施工管理技士。しかし、その給与は仕事内容の割に高くない。そこで私は、施工管理技士の給与制度を改革すべきだと信じている。
施工管理技士の人材流動化を促し、施工管理技士の担い手を増やすためには、業務内容の面白さだけでなく、給与面での優遇も必須である。
厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、2017年の建設業の労働者1人当たりの給与は、平均月額38万9037円と、全16産業の平均給与より7万2071円も高い金額になっている。
しかし、残業を含む労働時間は月平均171.9時間であり、全産業の月平均より27.5時間も多い。つまり、時間当たりの建設業の給与は、他の産業と大差がないということだ。
施工管理技士の給料と業務上の責任
施工管理技士の給料は、他産業と実質的に変わらない。
しかし、施工管理技士の業務上の責任は、一般的なサラリーマンよりも格段に重い、という実態がある。
たとえば、
- 労災が発生すれば、会社と共に現場代理人に刑事責任が問われることもある。
- 工事に関する予算管理を全て行うため、金銭的な裁量が大きい。
- 基本的に定時や休日の概念が薄く、実質的に、裁量労働である。
- 工事は基本的に会社の指示ではなく、自らの指示で動かさなければならない。
など、施工管理技士の責任は大きく、自殺する者もいる。
以上を踏まえると、施工管理技士は「自分の給料も現場の予算として自分で決める」ことのできる現場給与裁量制を提案したい。
仕組みとしては、賞与支給に近い。具体的には次のようになる。
施工管理技士の現場給与裁量制
まずは工事着工時に、会社側が現場代理人に利益率のランクを提示する。
たとえば、利益率20%以上はAランク、利益率10%以上はBランク、利益率0%以上はCランクといった具合だ。現場代理人は、それを踏まえた上で、工事予算に工期内の自分の「給与予算」を算入する。
この金額は利益を出せる範囲ならいくらでも構わない。1か月あたりの給与を100万円と設定すると、給与予算3か月分300万円を算入させる(経費、残業諸々含む)。
そして工期中は会社規定に準じた給与が、この設定した「給与予算」の中から与えられる。
例えば、会社規定の給与が20万円だとすると、給与予算300万円の中から毎月20万円が引かれて支給される。
- 1か月目:給与予算300万円 ― 会社規定給与20万円 → 280万円
- 2か月目:給与予算280万円 ― 会社規定給与20万円 → 260万円
- 3か月目:給与予算260万円 ― 会社規定給与20万円 → 240万円
工事の追加や工期延長等で、利益率が0%を切った段階で、給与予算は工事予算へと振替られる。また給与予算が0になった場合でも、会社規定給与は支払われる。
一方、工事が終了した段階で給与予算に残金があった場合、提示された利益率のランクに応じて給与予算から給与が支給される。もちろん、利益が無い場合は発生しない。
- Aランクの場合:給与予算の残金240万円 ×100%が支給→240万円支給
- Bランクの場合:給与予算の残金240万円×50%が支給→120万円支給
- Cランクの場合:給与予算の残金240万円×25%が支給→60万円支給
建設業界の給与体系の変革
以上のような現場裁量制の給与制度によって、 会社と現場代理人の双方にとってプラスになる。
会社は最低限の給与の支払いと利益率を確保し、現場代理人は仕事に対するモチベーションをアップできる。
また給与の面で、一般サラリーマンとの差別化を図り、大きな魅力がある職業として、創意工夫に富んだ若い世代を取り込むことも出来るのではないだろうか。
ただ、現場裁量の給与制度の問題点として、予算管理が煩雑になる可能性や、工事請負金額が増加してしまう可能性等があげられる。工事の難易度によって給与額が変動してしまう懸念もある。
しかし、欠点もある給与制度ではあるが、私はこの制度を導入することが、最も建設業全体の魅力を上げるために必要だと思っている。建設技術者の給与体系は、絶対に変革すべきである。
施工管理者の給料は高くて当然だと私も思います。
今までが安すぎるんですよ。責任の割合考えてもね。
ただし、出来る人はねw