工事成績評定とは?
工事成績評定とは、公共工事において工事の施工状況、目的物の品質等を考査し100点満点で工事の成績評定を行う制度です。
概要は別記事に詳しく書きましたのでぜひ読んでみてください(*’ω’*)
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ここでは、採点方法について詳しく見ていきます。
成績評定表の考査項目
まずは成績表の説明からですね!
成績表には「①工事成績評定採点基準表」と「②細目別成績評定点採点基準表」と「③工事成績評定表」の3種類(もっと多いかも)ありますが、どれも表現方法が違うだけで点数は同じです。③が「通知書」として受注者へ送付されると思います。
とりあえず①で説明しますね。
成績は65点をベースとして各考査項目で加点・減点する方式ですよ。
左欄にあるカテゴリを見てみると、次の考査項目で点数を決めることがわかりますね。
・施工体制一般
・配置技術者
・施工管理
・工程管理
・安全対策
・対外関係
・出来形
・品質
・出来ばえ
・施工条件等への対応
・創意工夫
・地域への貢献等
・法令遵守等
それぞれに「評価対象項目」というチェックリストがあり、実施されていれば点数化される仕組みです(後述します)。どこの自治体も国の成績表をほぼまるごと準用しているので同じだと思われます。
評定者は3人
評定者は「主任監督員」「総括監督員」「検査員」の3名です。
主任監督員=担当職員(監督員)
総括監督員=担当課長もしくは係長
検査員=工事検査課(他部署)の職員
評定者の呼び方は発注機関によって違いますけど気にしなくていいかと。
また、横浜市のように自治体によっては主任が担当と主任に分かれていることもありますが、主任の評定項目を2人に分担しているだけのようです。
工事契約時に、誰が主任と総括になったのか発注者が通知しますよね。
評定者の配点
そして、意外と知られていないかもしれませんが、各評定者の持ち点は決まっていまして下記のとおりです。
主任監督員→40点
総括監督員→20点
検査員→40点
合計 100点
3人がそれぞれ100点満点で評定したあとに、主任監督員であれば×0.4されるということですね。
全国的にほぼこれ通り。
発注機関(自治体)によって配分が違うかもしれません。
評定者ごとに採点項目が違う
表を見てみると、各評定者が採点する項目は違うことがわかります。
主任監督員の採点項目です。
全体的に採点しますが、施工体制一般、配置技術者、対外関係、創意工夫は主任監督員しか採点しません。この項目たちはどんなに検査員にアピールしようとも評価するのは担当職員だけなのです( ゚Д゚)
総括監督員は、そもそも持ち点が20点分しかありません(100点が×0.2されます)
その中でも工事特性の20点(×0.2=4点)は大きいですね。これは、例えば難しい現場条件(都市部、自然条件、地盤状況)に対してうまく対応してくれたときに評価します。逆に言えば、簡単な工事であれば加点してはいけない項目と言えるでしょう。ここで工事の難易度を反映させないとマズい。
検査官は、施工管理、出来形、品質、出来ばえの4つだけを採点します。
4つだけと言っても、完成図書をしっかり作り込んでおかないと加点できないようになっていますよ。また、出来ばえは現場検査で確認しますが、美観など曖昧な採点基準なので検査員の好み・価値観・経験に大きく左右されるかもしれません。
採点項目が違うことがわかりましたか?
誰が何点つけたか大体わかる
業者さんへ通知された「③工事成績評定表」の点数から、誰が何点つけたか大体わかります。
③で通知された点数と「②細目別成績評定点採点基準表」に書いてある配点計算式を参考に、方程式を立てれば未知数(点数)が推定されるんです。
知りたい場合は計算してみてください。
成績評定のながれ
次に、成績評定のながれを簡単に説明します。と言っても2ステップだけですが。
施工プロセスチェックで記録をつける
まずは準備資料として、監督職員が「施工プロセス」のチェックリストを作成します。
こんなものですね↓
例えば、「品質証明員の資格(身分及び経歴)が適正である。また、品質証明員に関する資料を書面で提出した。」という項目があったとして、それに対して実施された日付を記録するわけです。それが評定の基になります。
工事施工中に逐一記録するためのリストですが、竣工時にまとめてチェックリストを作成している職員もいるかもしれませんね。
まあ悪い言い方をすれば、役所によくある“チェックリスト症候群”によって産み出されたやつですね。
チェックリストの各項目がすべて考査項目別運用表にリンクしているわけでもありません。
考査項目別運用表で採点する
次に、成績をつけていきます。
さきほど紹介した成績評定表はExcelデータです。市販のソフトもありますが、Excelの自動化で対応できますよね。
成績評定表と同じデータ内に「考査項目別運用表」があり、この表で各評定者がチェックをつけると自動的にa,b,c,d,e評価が決まり、点数化されます。
主任監督員が終われば、総括監督員に渡し採点してもらい、竣工検査後に検査員が採点します。
これで自動的に総合点が出ました!
考査項目別運用表とは?
では、重要な「考査項目別運用表」について説明しますね~。
「考査項目別運用表」は成績評定表と一緒に自治体Webサイトで公表されています。福岡市と姫路市の例を置いておきますね。
姫路市 公共工事の成績評定とは (himeji.lg.jp)
「考査項目別運用表」には評定者ごとの3種類があり、
例えば、福岡市の「主任監督員用」の表はこちら↓
これが何ページもあり、それぞれの項目をチェックしていきます。
a,b,c,d,e評価って?
上の表のように、小カテゴリ毎に「評価対象項目」は5~10個程度ありまして、該当すればチェック(「レ」点)をつけます。例えば、「施工計画書を、工事着手前に提出している。」が該当すればチェックをつけます。チェックの数(割合)に応じて自動的にa,b,c評価が決まる仕組みです。
普通はd,eはありえませんね。a,bが加点、cが±0、d,eが減点です。(詳しい点数は成績採点表に書いてあります)
考査項目別運用表にも書いてありますが、一般的な評価基準は次の通りです。
a・・・評価値が 90%以上
b・・・評価値が 80%以上 90%未満
c・・・評価値が 80%未満
d・・・監督員から改善指示があった
e・・・監督員からの改善指示に従わなかった
例えば、「配置技術者」に対して、対象項目9個中8個にチェック(「レ」点)がついた場合は8/9=88%で「b評価」となり、+1.5点となりますね。
このようにチェック数に応じて点数が決まるわけです。
ちなみに考査項目別運用表の一番下の「その他」を対象外にすることを忘れないようにしましょう。たまにうっかりミスを見かけます。
1個チェックがつかなければ、b評価になってしまう~
成績評定の基本的解釈
では、実際に採点するときの考え方を解説します。
まずは前提として、評価対象項目は契約書・関係法令・共通仕様書などの契約事項がほとんどですから、実施されなければ契約不履行である、という考え方があります。
契約事項は、受注者は自らの責任において発注者の指導や助言なしに履行しなければならず、本来であれば、受注者が自ら遂行しない場合は評価できないことになります。
1回目までならセーフよん
しかし、多岐にわたる契約事項をすべて自ら遂行するのは現実的には難しいので、多くの自治体では、監督員の指示や助言で改善できた場合は、1回目であれば「評価対象項目」に「レ」点を付すことができるという運用ルールにしているようです。
自主的に実施した →「レ」点を付す
1回目の指示で改善した →「レ」点を付す
2回目の指示で改善した →「レ」点を付さない
3回目の指示で改善した → d評価
3回目の指示で改善しなかった → e評価
これはあくまで一例ですが。
ルールを公表している自治体は少ないと思います。ここまで明確なルールを決めていない自治体もあるかもしれません…。
指示や助言が多くなれば、それだけ評価は低いものになります。これが基本的な考え方です。
指示の出し方はさまざま
指示(改善要求)の出し方は自治体によって違いますが、文書主義の公務員は保身のためにとにかく文書に残しておくことが大好きですよね。ですから、1回目から協議簿による「指示」もしくは「通知」をおこなうところもあります。
でも私としては、そこまでやったのならc評価にはできないよって思いますけど(;´・ω・)
一方、1回目は口頭による改善要求をして、これで改善されればセーフ、2回目から文書による指示をおこない1項目でも文書指示があればd、e評価とする自治体もあるようです。
現実的には改善指示書を出すときはd評価以下(減点)にする覚悟が必要ですからよほどの事態まで発展したときでしょう。
「評価対象項目」はすべてを含んでいる
よし、制度はわかった、「評価対象項目」を実施していれば「レ」点を付し、加点になるということだな!
でも「評価対象項目」に書いてあることは抽象的じゃない?どうやって“実施した”って判断しているんだ??と受注者は疑問に思うはずです。はっきり言って発注者もよく分かっていません(;´・ω・)なぜかというと、「評価対象項目」はすべてを含んでいるからです。
「評価対象項目」に関連する法令・設計図書(共通仕様書)を細部まですべて履行していなければならない、ということです。
しかも具体的な提出書類の様式は殆ど決められていません。
例えば、福岡市の表によると、
「施工計画書が、設計図書及び現場条件を反映したものとなっている。」
という評価対象項目がありますね。
これについては、共通仕様書などを確認し、提出期限が守られたのか?必要事項を漏れなく記載しているか?記載に不備はないか?現場条件を反映しただけでなく、それに対して関係法令を守った計画が作られているか?など多岐に渡る事項を遂行できて、はじめて「レ」点を付すことができるものと思われます。←勝手な推測です。
そのためには、発注者側も仕様書や関係法令を熟知しておく必要がありますし、時間をかけて提出書類や完成図書を見なければなりません。でも、若手職員にそこまで知識も時間もありませんから、発注者もよく分かっていない、ということになります(;´・ω・)もちろん日々勉強が必要です。
この採点基準が甘ければ簡単に「レ」点がつき点数が高くなります。そういう自治体(部署)もあるでしょう。
こんな風に採点しているよ
今まで説明したルールは、発注機関(自治体)によって差はありますが、たいだい共通な評定思想だと思います。
ただし、市役所ではB,Cもしくはそれ以下のランクの業者さんがメインだったり、書類の作り方を分かっていない業者さん、指示などがうまく伝わらない業者さんもいますから理想通りにはいきません。
私のやり方を少し書いておきます。
監督員は、完成図書を受け取ったあとは、まずは一通り書類に目を通していきますよね。必要書類がなければ、いきなり評価しない!というわけではなく「○○が無いですけど作ってないんですか?出してください」とお願いして提出してもらいます。ルールで決まっている最低限の書類は揃っていないと検査を受けられないからです。
必要書類が揃ったら、細かい数字などすべて確認して、間違いがないか照査していきます。その際に、考査項目別運用表と照らし合わせて採点しますが、「○○が分かる書類あるかな~?うーん、ないなー。ホントにないかな~?ないなー。ホントにないかな~?・・・・ない!評価しない!」みたいな感じで「レ」点の付す・付さないを決めます。
その際に、整理されていない場合、受注者は○○用の書類のつもりで綴り込んでいても、見落とすことがあるかもしれません。見落とすな!と言われても、採点が終わってしまえば後の祭り。だから整理整頓は大事です。
また、監督員別に評価基準にバラつきが出ないように他工事との点数を比較します。具体的には、同じ地域や似たような作業内容の過年度工事をひっぱりだし、考査項目別運用表を見比べながら評価の矛盾がないかを確認します。
事業課全体の点数も確認して、どのくらい偏差があるのか把握します。高得点をつけない、と言ってるわけではなく、例えば高得点をつけるにしても課長や検査員へ何を評価したのか、なぜ評価したのかを説明しなければいけないからです。
もちろんAランク上位の業者さんは完璧に近い書類を仕上げてきますが、検査員によっては「もう少し点数下げられないの?」と言ってくる人もいまして、それに対して「△△を考慮して○○と□□を実施してあり評価できます。他の業者はここまで記録していません。書類はコレです。」と説明できるだけの準備をしておく必要があるんですよね。高得点をつける監督員は内部で戦っているのです。
高得点をとるために
おまけとして、高得点をとるにはどうすればいいんだ!?というところを説明したいのですが、変なことは言えないので、ざっくりと書きますね(*’ω’*)
・丁寧に真面目に仕事をする。
・協議したいことがあればすぐに監督員に相談し、協議簿で残すほどではないものでも箇条書きなどで記録を残しておく。
・厳しく設定した社内規格を達成し、品質を上げる。
・評価対象項目に合った記録・資料を用意する。
・書類を見やすいように整理整頓する。(通し番号をつけて全書類の一覧表を作成したり、提出物チェックリストを作成する。)
・工程管理、現場条件の変更などの中でトラブルが発生したとき(些細なトラブルであっても)何が起きて、何を行い、何を達成できた(修正できた)のか第三者が理解できる説明資料を用意する。
書面主義です、雰囲気や温情だけでは採点しませんというかできません。
抽象的な内容ですみませんね。
いくつかのサイトで、「工事で高得点をとる方法!」みたいな解説がされていますね、ジョウ所長のblogさんの解説記事が分かりやすいのでリンク貼っておきます↓
おわりに
工事成績評定の採点方法のルールがわかりましたか?
総合評価方式の入札で順位が逆転しまうことから、点数=お金であるという事実は否定しようがなく、監督員たちがブラックボックスの中で点数をコントロールできる以上、あらゆる問題が起きえます。
そのような工事成績評定にまつわる問題に対抗するためにも、とりあえず役所がどのように採点しているのか、公開されている情報をしっかり知っておきましょう。
若手職員の皆様の参考にもなれば幸いです。
では今日はこのあたりで。
またぬん(*’ω’*)ノ