
優秀な施工管理を現場に出すな
今回は、近未来のゼネコンの働き方についてお話しします。これを聞いて、「そんなの無理だろう」と感じる方もいるかもしれません。しかし、冷静に時代の流れを見てください。他業界で何が起きているかを考えてください。それを踏まえると、これは必ず起こる変化だと断言できます。
これから先、優秀な施工管理は現場から姿を消します。これは、なにも絶滅してしまうという意味ではありません。現場の最前線からいなくなるという意味です。そして、この変化は誰かの意思で止められるものではなく、避けようのない必然なのです。
躍進する組織は、優秀な指揮官が複数の部隊に命令を出し、最前線では多くの兵隊たちが実働します。これはいつの時代も、どの業界でも当たり前のこと。なぜなら、これが最も効率的な戦い方だからです。
経営学の世界では「経営資源を最大活用する」ことが基本ですが、建設業界はこれまで、人的資源の活かし方において大きな制約を抱えていました。そもそも、優秀な人材はそう多く生まれません。だからこそ、その能力を可能な限り多くの人たちが享受できるような仕組みにすることが大切であり、最も効率の良い働き方と言えるのです。
「1人の天才に頼る」のではなく、「1人の天才の知見を、10人、20人が使えるようにする」──これが、これからの建設業界で求められる仕組みです。
「後方指揮型」の体制
建設現場はどうでしょうか。
これまでは一現場に対し、一人の担当者を張り付けて運営するしかありませんでした。なぜなら、人間の目の届く範囲は限られており、現地でしか指示が出せず、書類でのやり取りしか方法がなかったからです。だから「優秀な人材は現場に張り付くもの」という常識が長年続いてきたのです。
ですが、インターネットの普及とIT技術の進歩が、それ以外の選択肢を生み出しました。今では同時に複数の現場をモニタリングでき、遠隔で指示を出し、書類はクラウドでリアルタイムに共有できます。現場に行かずとも、進捗確認や図面修正の指示が可能になり、意思決定のスピードも格段に上がっています。
仮に現地にいるスタッフがあまり優秀でなかったとしても、後方で優秀な指揮者が活躍していれば、現場は十分に機能します。この「後方指揮型」の体制が整えば、1人の優秀な管理者が、3件、5件、あるいはそれ以上の現場を同時に見ることが可能になるのです。
現実に立ち向かうための有効な手段
今までは優秀な指揮官が、現場の数だけ必要でしたが、これからは必ずしもそうではなくなるのです。事実、先進的な会社はすでに取り入れています。その代表例が「遠隔管理」です。
僕は数年前から、この概念に「コアエンジニアモデル」という名前を付け、中小規模の会社でも取り組めるような枠組みを提唱しています。簡単に言えば、「現場に出るのはサポートスタッフ、優秀な人材は後方で複数現場を指揮する」という形です。
「遠隔」と聞くと、「移動時間を削減するため」と思う人もいるかもしれません。でも、本質はそこではありません。これは、「数少ない優秀な人材が、できるだけ多くの現場で活躍できる仕組みを作ること」です。そして、それにより人材不足の解消、高齢化対策、品質・効率・利益の最大化という、業界が抱える課題を一気に解決できるのです。
これからの時代、人はますます減ります。その現実に立ち向かうための有効な手段は、このモデルしかありません。そして間もなく、「コア」になりうる数少ない優秀な人材を巡る、熾烈な奪い合いが始まるでしょう。
時代はすでに変わりました。法制度も変化し、テクノロジーは進化し続けています。その中で、「昔ながらのやり方」に固執することは、企業の成長を止めるどころか、淘汰を早めることにつながります。
そろそろ皆さんの会社も、次のフェーズへ進むタイミングが来ているのではないでしょうか。現場ラボでは、そんな変革を望む企業を、全力でサポートしていきます。



