鉄筋材をめぐる「工事監理者の理想」と「鉄筋加工場の現実」
鉄筋材をめぐり、ある問題が発生しました。
えてして建設現場における「理想」と「現実」は異なります。
現場のみなさんは、この話の「工事監理者の理想」と「鉄筋加工場の現実」、どちらにシンパシーを感じるでしょうか?
工事監理者の立ち会いで発覚
ある日、鉄筋業者の加工場にメーカーが材料を納入した際、工事監理者が立ち会いに訪れました。この工事監理者は、鉄筋材の納入のたびに、いつも立ち会いに訪れていたのですが、この日は少し様子が違います。
工事監理者はしばらくしてから怪訝な顔をして、「今回の工事用に納入した鉄筋材を使用していないじゃないか!」と言い放ちました。
たしかに写真で比較すると、前回立ち会った時に加工場へ納入した細径の材料が、そのままの姿で加工場に残っています。前回の納入日から、何度か現場へ鉄筋は搬入されているはずなので、普通に考えると、前回納入された荷姿のままで鉄筋材が加工場に存在していてはいけないわけです。
この状況を見た工事監理者が「前回分の鉄筋材を使っていない = 他の工事で納入された鉄筋材を使用した」と判断したとしても仕方ありません。
事実、その通りなのです。
地方の鉄筋加工場のリアル
地方の鉄筋業者の加工ヤードは、そんなに大きくありません。
もしかしたら、大都市の仕事を請け負っている会社であれば、大きなストックヤードを確保して、工事ごとに材料をしっかりと分けることが出来るかもしれません。
しかし、地方の鉄筋業者は、鉄筋の径ごと、長さごとに仕分けをしておくことで精一杯、というのが現実です。
そこへ他の現場の材料がメーカーから搬入されて、上にボンッと置かれてしまえば、上の材料から使用するしかできません。だからこそ、「鉄筋のメーカーをどこにするか?」という交渉をする前に、鉄筋の加工・組立業者に「希望のメーカー」を確認しているのです。これが地方の鉄筋業者の現実です。
工事監理者の理想とする鉄筋材料の使用
もちろん、主筋などに使用する比較的太物の鉄筋材料は、コンピューターで材料の積算を行い、「積算通りに」使用しないと過不足が起こる可能性が非常に高いです。そのため、多少材料が混同した鉄筋加工場でも、「現場ごとに納入した材料を正しく使用」する可能性は高まります。
しかし、スラブや壁などに使用する細径の鉄筋材料に関しては、実際に現場に入る職長さんの考え方などでも、使用する長さが異なってしまうこともしばしばあるため、なかなか工事監理者の理想通りにいかないのが現状です。置いてある材料を上から使用するという事態が、どうしても起きてしまうのです。
ひどい場合は、他の現場の誰かに勝手に材料を使用されていて「もうこの長さしか大量に残っていなかったから、こんな所でジョイントしなければイケないよ……」という嘆きを聞いたこともあります。
私も本音では、ヤードの大きさを考えると、現実的に現場ごとに分けるなんて不可能だし、どの材料を使用しても、ミルシート上では合格のはずなんだから勘弁してよ、と思ってしまいます。
しかし、工事を監理する立場からすると「鉄筋のミルシートに記載されている材料を使用しなければいけない!」わけです。
この「工事監理者の理想」と「地方の鉄筋加工場の現実」のギャップについて、みなさんはどのようにお考えでしょうか?
P.S.
この記事のコメントが面白いですよ。建築屋と土木屋の技術者の考え方がw