サブコンの被害者
これは、昨年まで安全専任をしていたプラント現場での話だ。
ある日、作業員が”たった1日”で現場を切られるという事件が発生した。
事件発生の経緯
サブコントップの人間は、新しく現場詰め所に来る時、現場に送り込まれた作業員たちと初対面な場合が多く、名前さえ分かっていないことがほとんどだ。
新たに来る人たちの事前情報がないに等しいため、まずは実際に作業をしてもらわないと、その人が何ができるのかの判断がつかない。
一次下請けのサブコンが、色々なところからかき集めてきた人たちの技量を全く把握していないのは、問題ではないだろうか?これは、サブコン内部の連絡の悪さが原因だろう。
私のところには、そのサブコンの事務所の人間から連日、新規入構のメールが届いた。この担当者とはメールだけの付き合いで、会ったこともなかった。真面目なのは伝わってくるが、やや注意力に欠ける人だった。
担当者から届く個人の安全書類は、確認をすると、個人調査書の中に書き間違いや健康診断書の期限切れなど、とても不備が多かった。
もらったモノを見直すこともなく、サッと右から左へ送ってきていたからだろう。私から間違いを指摘し、書類を再提出してもらうことも多かった。
本来なら、現場で仕切るサブコントップにもその連絡がいっても良さそうだったが、そんな連絡は一切行かないようで、現場にいるサブコントップの人間でさえ、私に作業員の情報を聞いてくるような状況だった。
現場にどんな人を送り込むか、業者を探し交渉してる人間がいるハズだが、その人間も人数だけ気にして、作業員の年齢や経歴などはほとんど気にせず、ただただ人を送り込め!と契約をまとめていたのだろう。
その結果、たった1日で現場から切られる人がでてきた。実に失礼な話で、サブコンの被害者!と言っていい。
1日で現場を切られた作業員
事の発端は、この作業員の健康状態や仕事の経験などを、私が所長に伝えたことだった。
その後、所長からサブコントップにも話が伝わり、「この人は無理だから止めてもらおう!」と言いだしたのだ。
当たり前のことだが、その作業員が新規入構で来た時は、経歴も資格も一切偽ってはいなかった。全部正直に書いてあった。
聞けば、これまで水道の配管工の仕事をゼネコンの下に入ってしていて、電気の仕事に関わったのは、弱電関係の配線を短期間手伝っただけ。プラントの現場に入るのも全く初めてで、これからやってもらうケーブルをラックに敷設する作業等は、全くやったことがなく、フルハーネスなども初めて身に付ける、と話していた。
更に、年齢が64歳で、糖尿病と心臓疾患があり薬を飲んでいて、高い所での作業は止めたほうがいいと医者から言われていた。健康診断書に高所作業要注意と書かれており、本人もその通りに申告していた。
本来そこまで分かっていれば、ココの現場に作業員として送り込むことを控えるのが普通だろう。
駄目なら駄目と、最初から本人もしくは所属会社に伝えるべきで、サブコンは人の気持ちなどこれっぽちも考えてないことが分かる。
まったく…失礼な話だ!!!
当然、この話は周りの作業員にもすぐ伝わった。皆何も言わないが、そんな扱いをしたサブコンには決して良い印象は持たないだろう。
サブコンにはサブコンの言い分があるのかもしれない。私の知らないことが何かあるに違いない。だが、改善意識も何もなくただ仕事をこなしてるだけでは、物事が良い方向に進むはずもない。
そもそも、こんな風に仕事をしていては、満足感も達成感も感じられないのではないだろうか?
今回のこと反省し、原点に立ち返って、雇い入れる側もサブコンも考えるべきだろう。どんな小さなことでも、今の悪いところを1つでも改善していこう!とする気持ちを、双方の会社の上層部の人間には持ってもらいたい。