天気が命運を左右した屋上防水工事
今はインターネットが普及してリアルタイムで天気予報を見ることが出来ますが、私が若い頃は新聞とTVが頼りでしたので、今よりも天候を読むのが難しかったように思います。
天気だけは自分の思い通りに行かないものですから、判断を誤れば当然、大きな失敗に繋がることもあるわけで・・・。
天気が命運を分けた、屋上の防水工事を、今でも鮮明に覚えています。
天に見放され、打設中に大雨
屋上の防水押え用軽量コンクリートの打設日、天気予報の降水確率は30%でした。予定通りコンクリートを打つか、延期すべきか。かなり迷いましたが、いつものことながら工期のない物件でしたので打設を決行しました。
施工管理技士であれば同じような場面に遭遇したことが一度くらいはあると思いますが、私の場合、その決断が裏目に出たのです。
打設当日の朝は、曇り空でした。うまく行きそうだなとホッとしていたのですが、7割ほど打設した頃、急に空が暗くなって来たと思ったら、突然大雨が降りはじめました。
「天は我を見放したか!?」と、八甲田山の映画の名台詞を心の中で呟きました。しかし、どうすることもできず、残りの部分もコンクリートの打設を行い、シート養生を行いました。またそこでタイミングを見計らったように雨が止んだのも恨めしい限りです。
翌日、ブラシ等でコンクリート天端をよく洗い、更にその翌日にモルタル金コテ仕上げ施工を行い、工事を完了しました。
しかし一週間後、見たことのない光景を目の当たりにする事態となりました。
コンクリート天端が「瓦せんべい」に
屋上に上がると見渡す限り、モルタルの床部分が目地部分で跳ね上がり、2m程のサイズの瓦せんべいの様に反り上がっていたのです。
いろいろな現場を見てきましたが、こんな現象は初めてでした。現場の職人さん達も唖然。どうやら雨に打たれたコンクリート天端をブラシで洗うだけでは密着度が悪かったようで・・・。
工期もないので、翌日1日で床モルタルを叩いてハツり取り、今度は雨に打たれたコンクリート天端をサンダーブラシ等で目荒し。よく水洗いをした上で、再度モルタル金コテ押えを行いました。
幸い、曲りと割れがすごかったので、コンクリート+モルタル兼用の伸縮目地は、そのままで使用する事ができました。
この現場は30年前、2階建て、屋上総施工面積は約300㎡。ハツリ、目荒し、ガラ処分、再モルタル施工費等で約70万円程掛かったように記憶しています。幸い、利益率の高い物件でしたので助かったのですが・・・。
今になれば、いかに工期のない物件でも、できるだけ多くの経験者から意見を聞いて、もう少し慎重に施工していれば良かったと反省しています。雨に打たれた天端の下地処理を、手間と費用をなるべく掛けずに施工しようとした自分の判断が、結果的に時間もコストも掛かってしまう事態を招いてしまったのですから。
いずれにせよ、天気だけには本当に勝てないなと思ったエピソードの1つです。