過酷なJV現場で、わが社だけボーナスなし
私は当時、かなり過酷な現場に従事していた。火力発電所で排出されるフライアッシュ(廃棄物)の海面処分地の外周護岸築造工事だった。
2社JVのサブ企業メンバーとして配属されたのだが、とにかくキツイ現場で、朝6時半から夜23時がお決まりコース。ときには月の残業が200時間になることもあった。いま振り返れば精神的にも体力的にもとても自己成長させてくれた職場だったと思うが、当時は不満しかなかった。
しかも、これだけ現場は忙しいのだから、さぞ所属会社も繁盛しているかと思いきや、全社的な受注不振に陥っていた。ついには早期退職やボーナスカットなど悪い話ばかりが出てくるという最悪な社内状況。最終的にはボーナスもゼロとなった。
しかし、同じ現場のJVスポンサー企業の職員はといえば、たんまりボーナスを貰っている。他社のハシャいでいる職員たちの姿を横目で見て、とても羨ましく思ったものだ。これがJV現場の現実である。
同じ仕事でも年収差150万円。不満をなだめるのも現場監督の仕事
他社がボーナスを貰っているのも羨ましいが、一番悔しかったのは、同じ仕事をしているのに、会社が違うだけで年収に大きな差があることだった。
しかも、私と同年にJVスポンサー企業へ入社した人とは、年収ベースで150万円ほども差があり、「同じ仕事をしているのに!」とよく上司に愚痴ったものだ。
しかし、そんなツラい時でも、現場を抜けないでいられたのは、良い上司に恵まれたからだと思う。上司には、よく焼き鳥屋に連れて行ってもらった。
その焼き鳥屋の焼き鳥は、串に肉がほとんど付いていない。「こんなに少ない鶏肉をよく器用に串刺しできるな」と、むしろ大将の手先の器用さに感心するほどだ。1本60円とリーズナブルな焼き鳥で、初めて見たときは衝撃を受けた。
上司いわく「焼き鳥は串を食せ、串には肉のうま味がしみ込むけん、ここが一番おいしかバイ!」
きっと上司も金がないのに、落ち込んでいる私をわざわざ連れってきてくれたのだと、私も串をしゃぶりながらガス抜きをさせてもらったのを思い出す。
焼き鳥が教えてくれた現場運営のキモ
建設現場で働く人間は、それぞれ立場や収入も違うが、やはりチームワークが重要だ。
建設現場には一現場一生産性という特徴がある。現場ごとに技術者の配員構成が変わるため、今まで知らない方と一緒に仕事をすることも多い。その都度、変化する環境や現場条件を「読み取り・洞察し・推察する」といった感性が現場監督には重要だとつくづく感じる。
上司は「部下が何を考え、どう動いているか?」、部下は「上司が何を求めているのか?次に何を言ってくるのか?」というお互いの思いやりこそが、円滑な現場運営には欠かせない。
……今でも焼き鳥を食べるたびに、当時のことを思い出し、現場運営の心得を噛みしめている。
施工の神様より転載