ブルドーザーに轢かれて、元請も下請も孫請も孫請従業員も全員提訴。ついでに分かった”ある人物”の過失(施工の神様より)

施工の神様

福岡県の炭鉱跡地における埋立て工事現場で、建設機械オペレーターのXはブルドーザーに轢かれて負傷しました。
Xは当該ブルドーザーを動かした人物やその所属する孫請会社、さらには元請、下請などを提訴しました。

法律の専門家ではないXが、関係者全員を提訴して司法の判断を仰ぐのは一つの選択肢だといえます。
判決も個別の事情を考慮したものでした。参考のために一つひとつ見ていきたいと思います。

止まったブルドーザーと「ボタ」の山

Xは建設機械オペレーターで、下請会社であるY2社の従業員でした。この工事の全体像としては、まずY1社が炭鉱跡地における埋立て工事を請け負った元請会社であり、その下に下請会社としてY2社とY3社が存在していました。さらにY3社から工事を請け負っていたのが、孫請会社であるY4社です。Y2社の従業員であるXは、炭鉱跡地において、自社のY2社が提供したブルドーザーを使用して埋め立て作業を行っていました。

あるとき、ブルドーザーが動かなくなったため、Xはブルドーザーの下にもぐり込んで点検をしていました。しかし、その最中にブルドーザーが自走してしまい、Xは手足をキャタピラに挟まれて動けなくなってしまったのです。

そこに、孫請であるY4社の従業員Cが通りかかりました。Y4社が運搬した埋立て用の水洗ボタ(石炭採掘のときに混入した石屑などの燃えない物質)が溜まってきているのに、問題のブルドーザーが停車したままで、しかもオペレーターも見当たらなかったため、Cはその後の作業に差し支えがあると考えてブルドーザーを動かしました。その結果、下にいたXを轢き、負傷させてしまいました。

Xは、関係者のほぼ全員に対して、それぞれ次の理由により損害賠償を請求しました。元請のY1社に対しては、自社従業員Aについての使用者責任。下請のY2社に対しては、欠陥のあるブルドーザーをXに提供した過失による安全配慮義務違反。同じく下請のY3社に対しては、従業員Bについての使用者責任。そして孫請のY4社には従業員Cについての使用者責任、運転したC本人に対しては、安全確認を怠った過失による不法行為責任をそれぞれ追及したのです。

こうした複雑な関係性の中で、裁判所は各社および各個人にどのような判断を下したのでしょうか。

「Y1社(元請):Aについての使用者責任」の判決

Y1社の従業員Aは、下請のY3社に対して運搬物の採取先や量、運搬先などを指示していました。この指示はボタの採取先が複数あり、製品炭や水洗ボタの運搬先工事の進展に伴って移動していく本件のような埋立て工事現場では、請負契約の注文者として当然必要なものだったと判断されました。この指示がなければ下請会社も作業ができません。

しかし、Aの指示は運行車両、運搬担当者、作業内容といった具体的な作業の監理に関する事項にわたるとは言えず、この程度の指示をもってY1社がCを実質的に指揮監督していたとはいえないため使用者責任はない、と結論づけられました。

「Y2社(下請):安全配慮義務違反」の判決

次に、Xの所属先であるY2社の責任についてです。Y2社が提供したブルドーザーを検証したところ、クラッチおよびブレーキに機能上の欠陥や異常は認められませんでした。そのため、安全配慮義務違反の責任はないとされました。

「Y3社(下請):Bについての使用者責任」の判決

一方で、下請のY3社の従業員Bについては異なる判断が下されました。Bは元請のY1社Aの指示に基づき、孫請のY4社に対してボタなどの運搬に関する場所、量などを現場において指示していたり、具体的なダンプトラック運行の割振りもAと相談して決めていたうえ、Y4社に対する必要なダンプトラックの台数や作業内容の指示も毎日Bがしていました。

そのため、たとえY3社とY4社との関係が請負契約によるものであったとしても、Y3社が実質的にY4社の従業員Cを指揮監督していたというべきであるとされました。したがって、Y3社はCの実質的使用者として使用者責任があると認められたのです。

「Y4社(孫請):Cについての使用者責任」の判決

CはY4社の従業員であり、Y4社が運搬した埋立て用の水洗ボタが溜まってきているのに問題のブルドーザーが停車したままで運転手も見当たらなかったため、その後の作業に差し支えると考えてブルドーザーを動かしました。

その後Cはこのブルドーザーで水洗ボタを押す作業を行っており、Cがブルドーザーを運転する行為は本来の業務に含まれていなかったとしても、Y4社の事業の執行につきなされたものであると判断されました。この経緯から見てY4社が相当の注意を尽くしたとはいえないため、同様に使用者責任があるとされました。

「C:不法行為責任」および「Xへの判決」

運転したC本人については、ブルドーザーを運転するにあたり、その不自然さからも、ブルドーザーの下を含めて十分に周囲の安全を確認して運転するべき義務があるのにこれを怠った過失があるとされました。

しかし、同時にXにも安全に注意しないままブルドーザーの下にもぐり込んで事故を招来させた過失があり、3割を過失相殺とするとされました。即ち、Cには7割の不法行為責任があると認められたのです。

判決
Xには安全に注意しないままブルドーザーの下にもぐり込んで事故を招来させた過失があり、3割を過失相殺する。(平成9年12月25日 福岡地裁)

関係者全員を提訴するという選択肢により、全員の個別判決に加えて自己の過失割合も判明しました。Xとしてはすっきりとして、納得できたのではないでしょうか。

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