施工管理をはじめて7年。長年、施工管理を続けていると色々なことがある。嬉しいこと、しんどいこと、辛いこと。
様々なことがあるが、一番しんどかった経験は、同じ現場で働いていた後輩の施工管理者が失踪(いわゆる飛んだ)ことだ。
「施工管理はやめとけ」という後輩なりのメッセージなのだろうか。実際どのように後輩が飛んだのか、当時を振り返ってみよう。
後輩施工管理が飛んだ
失踪した施工管理者Aは、私の後輩だった。
後輩といっても入社3年目で、Aの下にはもう1人新入社員がついていて、ある程度重要な業務を任されていた人材だった。
工事も中盤にさしかかり、現場が波に乗ってきていたある日の朝。
現場事務所にAの姿がなかった。朝礼時間を過ぎても来ない。遅刻だろうと思い電話をいれるも、連絡がつかない。この時点ではまだ、ただの寝坊だと思っていた。
だが、昼になっても一向に来る気配がない。昼に電話をしても、夕方に電話をしても、全く連絡がつかない。
ここでようやく事の重大さに気が付いた。
――次の日になっても誰一人、Aと連絡が繋がらない。
『事故に巻き込まれたか!?』
『まさかどこかで最悪なことが起こっているのではないか…』
現場の誰もが最悪の事態を想像し始めていた矢先、Aの目撃情報が入った。
現場が一気にパニックに
目撃情報を聞いて、確信した。
Aは飛んだんだ・・・と。
Aが飛んだと理解した瞬間、顔面蒼白になった。当たり前だが、現場の引き継ぎなんて一切できていない。
Aに任せていた書類は、写真撮影・管理、品質管理、出来形管理、搬入材料、搬出材料の管理などなど。材料関係の伝票をどこに保管しているのかも、どこまで業務を行っていたのかも全く分からない。
現場が一気にパニックになった。
人に依存することのリスクが浮き彫りに
Aの失踪事件は、人に依存することのリスクが浮き彫りになった出来事であった。
施工管理の特性上、業務分担している場合、書類等を作成した人間でないと修正対応が難しい状況が出てきてしまう。この場合は非常に危険で、発注者からの依頼に早急に対応することが難しくなる。
とはいえ、施工管理は、役割分担をしなければ到底一人でできる仕事ではない。一体、どうすればよかったのだろうか。
工事メンバー全員で情報を共有しておく
もちろん失踪者を出さないことが一番なのだが、今回の失踪事件で、いつ誰がいなくなっても工事が回る仕組みを作っておかなければならない、と強く感じた。
具体的には、クラウドサービスで書類や情報を、工事メンバー全員で共有しておくことが重要だ。
複数人が情報を共有できるフォルダを作成し、誰でもすぐに工事情報が分かる環境を整えておけば、どこに何の書類があるのか分かり、誰でも書類を作成することが可能になる。
いつ、誰が、失踪するか分からない
誰かが突然失踪すると焦るものである。特に、仕事で戦力としてカウントしていた人に飛ばれると非常に厳しい。
だが、ここで私のように焦ってはいけない。焦る気持ちや冷静になれない状況もよく分かるが、どんな状況であっても監督側の人間は現場を回さないといけないのだ。
任せておいた業務を回収し、次に引き継げる人たちで対処をする。大事なデータを持ったまま飛ばれたとしても、措置として、自分が代わりに作成し直すか、発注者と相談という手もあるだろう。
いずれにせよ、テンパっているだけでなく、任された現場を遂行するために残された仕事に向き合わないといけない。
人に依存しすぎると、今回の失踪事件みたいなことが起きた時、完全に現場が止まってしまう。あらゆる状況に備え、情報の共有は普段から全員でしておいたほうが良いだろう。空いた穴をすぐに埋めることができる体制をあらかじめ作っておけば、いざという時の備えになる。