はじめに
今回は、土木工事で日々作成する「工事打合せ簿」のお話です。
最近は電子化とあわせて簡素化が叫ばれていますが、作成する量があまり削減している気がしません(笑)。
そこで要点を絞ることで、作成時間をちょっとでも削減できるお手伝いができればと思い、この記事を書いています。
今回は、作成頻度が高い「協議」と「提出」に絞ってお話をします。
視点と条件は、民間の建設会社に勤める土木技術者の視点と、公共土木工事を施工するという条件ですすめていきます!
ジョウ所長
でも、若手の方はもちろんですが、ベテランさんになればなるほど、他人の工事打合せ簿作成方法など見ることも聞くこともないと思います。
今後の参考の1つとして読んでいってください!
工事打合せ簿知ってる?【1:基本ルール】
まず結論からですが、工事打合せ簿は発注者と受注者のコミュニケーションツールです。理由は、口頭でのやりとりではなく、書面でのやりとりが求められるからです。
ここから具体例を交えてお話します。
基本の基本
すべてに共通することは「わかりやすく簡潔に作成する」。これが基本です!
理由は、発注者は複数業者の書類を見るからで、やはりチェックする側への配慮は大前提必要ってことですね^^;
工事打合せ簿の種類
- 指示
- 協議
- 通知
- 提出
- 報告
- 承諾
それぞれの違いについては、共通仕様書を確認してください。今回は、中でもぼくが重要と考える「協議」と「提出」について後述しますね。
工事打合せ簿の重要度
書面で交わすことで”設計変更時の証拠になる”ということです。つまり、この書面がないと設計変更にならない=お金にならないということ。
なので、「口頭で言った」は最悪です!必ず、書面・工事打合せ簿をつかって証拠を残すイメージで施工管理をしましょう。
簡素化について
最近は生産性向上、労働時間の短縮を目的として、工事書類の簡素化が叫ばれています。
ここからはぼくの持論ですが…、簡素化は書類を作成しなくてもよいわけではないと考えています。簡素化だから工事打合せ簿を含めた管理や書類を削減する、は間違いと思っています。
ぼくの考えは、「現場の施工管理はするが、きちっとまとめる作業等は別にしなくてよい」と解釈しています。
みなさんも、きちんとルールを読み込んで理解して欲しいなぁと思います。
工事打合せ簿知ってる?【2:協議】
ここも結論からですが、骨子法をつかうと良いです。理由は、読み手側(発注者)が文章を理解しやすくなるからです^^
協議をする状況の多くは、こんな時だと思います。
- 設計を変えたいと受注者が思ったとき
- 設計変更でお金を計上してほしいと受注者が思ったとき
そんな時、協議を受け取った時の発注者の頭の中は、
- 理由は?
- なんぼなん?
- 工期まにあうん?
と、受け取った協議をこのような視点で見ているとぼくは想定しているので、協議の書き方を工夫してみようと思います。
まず書き方の基本は、骨子法という方法をつかいます。この骨子法をつかった書き方の流れをまとめつつ、参考例を書いてみます。
まず、必ずタイトルは結論にする。そして、背景 ⇒ 現状 ⇒ 問題 ⇒ 課題 ⇒ 解決策⇒ メリット・デメリットの順番に書いていきます。
こんな感じで協議文章をまとめると良いでしょう!
- タイトル:鋼矢板の継足しについて
- 背景:河川工事で河口付近の現場であるため潮位影響を受ける
- 現状:当初設計では計画天端高が平均潮位より下
- 問題:潮位が高い時間帯は施工できない。手待ちロス発生。工程に影響
- 課題:潮位に依存しない施工方法の検討が求められる
- 解決策:鋼矢板を継足して高さを出すことで潮位影響を受けずに施工可能
- メリット:
・工期は当初のままで対応可能
・工法変更にくらべて安価 - デメリット:
・費用がかかる(材料、施工とも)
・概算金額は○○万円増額
ジョウ所長
その際、いま解説した骨子法を要所要所で活用してもらうと、発注者さんの理解が深まって良いと考えます!
1つの方法に縛られずに、色々試していくのも大事ですね^^
工事打合せ簿知ってる?【3:提出】
ここも結論からですが、足跡を残しつつ結論ありきで作成するです。理由は、基本的なフローはどの報告・承諾等でも同じだからですね^^
ここでは参考として、立会打ち合わせ調書と設計照査・基準点測量を題材に解説していきます。
立会打ち合わせ調書
そもそもなぜ立会打ち合わせ調書が必要なのかと考えると、下記の理由から必要になってきます!
- 工事施工中、発注者以外の人と打合せした場合は必ず調書を作って記録
- 発注者が同席していない場合でも情報を共有
ここでよくある、地元さん道路河川管理者(国・県・市)との打ち合わせ、交通管理者(警察)、各施設管理者(ガス・電気・NTT・上下水道等)のような方たちとの打ち合わせは、必ず調書作成するようにしましょう!
調書=議事録を作成しておくことで、設計変更時の根拠の1つになり得ます。
この考えは必ずインプットしておいてくださいね^^
様式は発注者へ確認、または、発注者HPのダウンロード一覧から入手してください!様式のない場合は、自作してでも作成しましょう。調書を作成したうえで、立会者の押印をもらうのが最高です!
ジョウ所長
でも、もらえなくても調書として議事録を残すようにしましょう!
その調書を工事打合せ簿として「提出」する時は、この3枚構成程度で十分です。
- 工事打合せ簿の鑑
- 立会打ち合わせ調書
- 立会時の手元資料
内容は簡易的で良いので、現場で人と話をするたびに作成して記録するイメージです。これ簡単そうでなかなかできないので、これができるだけでも工事点数にもつながると、ぼくは思っています!
「設計照査」及び「基準点測量」
ここも結論ありきで、簡単にわかりやすくまとめると、
設計照査
- 工事打合せ簿の鑑
- 照査チェックリスト等
- 疑義事項をまとめた別紙
ここでのポイントは、この別紙に「発注者の回答を加筆できる箇所をあらかじめつくっておくこと」です。
基準点測量
基準点測量のまとめ方は、こんなイメージです。
- 工事打合せ簿の鑑
- 測量した内容と結果を簡単にまとめる
- 貸与基準点・水準点の確認
- 施工用の基準点・水準点の設置
- 中心線及び縦横断測量結果のまとめ
- 用地境界あればそのまとめ
これに付随する書類で、測量の精度関連書類、手簿等は提示にするのをおすすめします。ぼくは、施工プロセスチェック時に提示していました。
なんせ、基準点測量は添付書類が多くなりがちなので、必要最小限にして、あとは「提示」ってスタンスで良いと考えています!
おわりに
今回は、土木工事では日々作成する「工事打合せ簿」のお話でした。
いつも作成しているとマンネリ化するので、ぼくの意見を参考にして、少しでもマイナーチェンジしてみてください!
※この記事は、『ジョウ所長のblog』の記事を再編集したものです。
【土木】工事打合せ簿知ってる?【失敗しない つくりかた教えます!】 / YouTube(ジョウ所長の土木技術者サポートチャンネル)