施工の神様

公共工事が安い、安すぎる! だから、談合と人材不足は止められない!

公共工事の元請負金額が安い

公共工事は安くて良いのが当たり前?

低入札での落札は、税金の無駄遣いを減らす?

いやいや、ちょっと待ってほしい!建設業の実態を知らないにしても、あまりにもヒドい考え方だ!

国民のライフラインが無駄ですか?安くて良いものがありますか?

いい加減にしないと、この国から建設技術者はいなくなってしまうのではないか。

そんな危機感から、一人の土木技術者として、この業界の給与が安い構造について真剣に考えてみた。

設計単価が市場に追いついていない

土木業の給与が上がらない原因は、単純に「工事の元請負金額」が安い、この1点のみだと考える。

そして、その理由は3つある。

1つ目は、設計単価が市場に追いついていない点だ。

年々設計単価は上がっているのだが、市場単価も上昇しており、追いかけている状態がここ数年続いている。そのためタイムラグがあり、結果的に合わないのだ。

また役所は市場単価の調査をする際、並行して実勢調査を行っているのだが、この性質が悪い。

「実勢調査」とは、簡単に言うと大手などが大量購入した時の、実際の仕入れ値である。つまり設計された時点で市場単価より安くなっており、最低制限で落札して見積をとると、実行予算が組めない事態に陥る。

(この問題は土木業界の週休2日阻害の一因にもなっているのだが、今回の内容とは少しずれるので、またの機会に触れたいと思う。)

2つ目は、設計者が歩掛をいじってしまう点だ。これは「施工の神様」の他の記事でも度々見かけるが、予算ありきで、ありえない機械設定であったり、標準歩掛では無く独自の積み上げで数量等をいじってしまうケースがある。

そもそも、標準歩掛自体びっくりするほどの好条件で設定されており、第三者等の様々な要因が絡む実際の現場では無理をしないと厳しいのが現状である。

安全と利益を考えた時、誤った判断をしてしまい危険作業の事故が減少しない一因でもある。

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直工費と経費の見直しは必須

工事の元請負金額が安い3つ目の原因は、設定工期が適正で無く、それに伴って技術者経費が合わない点だ。

設定工期については言うまでないが、現実に厳しい声しか聞こえてこないのだから、適正とはとても言えない。

技術者は歩掛の中に世話役として入っているのだが、協力業者ごとに上がってくる施工費は、その分を食いつぶしているので、現場管理費、一般管理費等から捻出せざるを得ない。

わからない人は、自分の月給×工期に、本社の経費やその他諸々を組んでみて欲しい。工期が長くなれば、かなり厳しくなるはずだ。

つまり、設定工期を見直すのと同時に、直工費と経費の見直しは必須だろう。

公共工事が安いから、談合やダンピングを繰り返す

公共工事が安すぎると、単純に利益率は上がらない。

建設業を知らない人が何億何千万という金額を見聞きすると、そんな儲かっているのかと感じるが、何億何千万という金額で先行して材料等を買っているのだ。

利益率が上がらなければ、次工事を受注できなくなり、真面目にがんばっている中小零細の建設会社は持ちこたえられない。

するとそこを狙って、新規参入を目論んで入って来る不良不適格業者によるダンピングの横行や、その結果、市場の減少により敵対的競争のための談合、その逆に対抗策としての談合などが発生する可能性すらある。

ただ、どのような状況になったとしても、現状安い工事からさらに価格競争をしているので、当然至る所にシワ寄せが行くのだが、やはり協力会社や資材メーカーとの調整役でもあり、実行予算を行う技術者の悩みは想像に難くない。

働き方改革は必要だが、追い打ちに…

楽な仕事など無いが、やはり相対的に考えて知識の量や体力、精神的にもハードな建設業界には企業ごとに働き方改革が必要だろう。

だが、もう少し現場を観てから判断してもらいたい。

正直「必要か?」と言いたくなるような書類が多々ある中、仕事量は変わらないけど残業するな、は少々無理がないだろうか。

たとえば、コンサルタント料が貰えるなら別だが、現地と設計に相違があり変更する場合など、測量や設計、変更図面の作成、どれも本来発注者の仕事だ。

とはいえ受注者が行うことでのメリットも当然あるので、そこだけに関して言えば、そこまで私は気にしていない。

では何が言いたいかというと、このように通常量+αの現状、でも会社からは残業禁止、終わらないから技術者二人体制等の模索、結局予算が圧迫、給与が上がらないというような状況になりかねないか不安を覚える。

役所も「理想」では無く「現実」を見ろ!

いくら誇りや、やりがいがあっても、このような状況では若手は土木をやりたいとは思わない。

ライフラインが充実している今だからこそ、その大切さを「理想」では無く、「現実」を踏まえて考えるときではないだろうか。

もちろん官民どちらも必死に働いている人達がいるのは理解している。

それでも働き方改革や若手確保の施策を見ていると、「役所は変わるの嫌だから現場で何とかしてよね」のようにどうしても見えてきてしまうのだが、どうかわたしの勘違いであってほしい。

※みなさまの現場はどうですか?コメントいただけると幸いです。

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