施工の神様

面倒な仕事は下請けに押し付け、発注者の仕事に奔走するゼネコンの矛盾

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「面倒な仕事は下請けに押し付ければいい」というゼネコンの傲慢

以前働いていた、あるゼネコンでの現場でのこと。私は工務を担当していて、上司とともにこれから行われる工事の計画を検討したり、出来高検査など必要な書類の整備を行う仕事をしていた。

その折、現場からの提案で、ある工法を採用することになった。その工事の最中に、設計と現場条件が一部合わない箇所があり、施工計画のやり直しが発生した。

そのため、変更となる図面の修正を下請け会社にお願いしに行った。すると、上司は下請け会社にこんな言葉を投げかけた。

「竣工図に必要なので、横断図にも反映してほしい。それと土工計算書にも入力をお願いしたい」

横断図はだいたい30枚ほど。一つの図面に4、5の横断図が描かれているので、作業断面は約150にも及ぶ。

当然、その下請け会社の担当者は嫌がった。構造図や展開図の修正は「もちろんやります」という反応だったが、横断図や土工計算については「それはこちらの範疇ではない」と反論した。

だが、結局その下請け会社は折れた。横断図と土工計算書の修正までやってもらった。

上司は「それが当然」という態度だったのだが、私としてはとても申し訳ない気持ちだった。

このままだと下請けから見切られる

該当工事の資料を作ってもらうのは、これまでもあったことだし、下請け会社側も「そこらへんはやります!」と快諾してくれることが多かった。

しかし、本来業務から一歩範疇を超えた仕事は、もうやってくれない。下請け会社にしても経費がどんどん出ていくばかりで、実入りがないからだ。

さらに、昼間に現場作業をやり、作業の合間や作業終了後に図面や数量の修正を行うことになるので、身体的な負担も大きくなる。

もし費用をみてくれるなら、引き受けてくれる可能性は高くなるかもしれない。

だが、元請けから強引に押し付けるようなやり方をしていては、いずれ引き受けてくれなくなるだろう。いつか「御社の仕事はもうやりません」と言われる時がやって来る。

発注者の仕事をゼネコンがやるように

こうした背景には、ゼネコンの役割が変わってきていることに理由がある。

ゼネコンの抱える仕事は膨大だ。最近では、役所がやるべき仕事もゼネコンがやるようになっている。例えば、発注図や発注用数量の作成、工事変更指示用資料の作成を現場担当者がやることは当たり前だ。

本来、これは発注者側の仕事であり、ゼネコン側は発注図や工事変更指示書などを基にして施工計画を立て、現場で工事にあたるのが仕事だ。

しかし、発注図や工事変更指示用資料の作成までやらなければならなくなると、現場は混乱しかねない。普段行っている進捗管理や今後実施予定の工事の施工計画や施工法検討、あるいは写真整理や報告書作成等々やることが盛りだくさんなのに、役所側の仕事までやらなければならなくなると、人手は足りなくなる。

そうなると、ゼネコンとしては「下請けでできることは下請けに!」という姿勢に変わってくる。かつて、「民間でできることは民間に!」というお触れ?のもと、数々の仕事が公共機関から民間に外注されたが、それと似たようなことが起きているのだ。

下請けに仕事を任せきりだから、ゼネコンの技術力が落ちる

昨今の情勢に漏れず、大手のゼネコンでも人手は足りない。ただ人が足りないというよりも、「真に仕事ができる人」と「熱き心を持って仕事に取り組む人」がいないと感じている。

名の知れたゼネコンで働いているとき、「こんなに安易に妥協する人をみたことがない」という人を複数見た。「まぁ、こんなもんでいいか」とばかりに、テキトーに仕事に取り組んでいたのだ。

わからないことがあっても「まぁいいか」と流し、品質管理についても「こんなもんでしょ」で、それ以上の改善・向上など望まず。その結果、注文する材料を間違えたり、ある施設の基礎杭をおかしな場所に打ち込んだりすることもしばしばあった。

さらに、上がってくる施工管理書類の質が悪い、というよりまったく上がってこなかった。こちらから声をかけても上がってこないというありさまだった。

下請け会社から上がってくる資料をチェックせず、客先に横流ししているだけの人も多い。こういった、妥協する人の増殖も、不当に仕事を押し付ける要因の一つかもしれない。

ゼネコンたちは、いいかげん自分たちがやるべきことは自分たちがやる!という姿勢を持つべきだ。それは会社のためならず、自分自身のためである。

昨今、ゼネコン側の技術者のレベルがどんどん落ちているという話をあちこちで耳にする。下請けに不当に作業を押し付けていては、そうなるのは当たり前だ。

まずは自分の頭と手を動かしてほしい。自分でやってこそ、経験値もスキルも向上し、大きな信頼を得られるはずだ。


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