未経験にも関わらず、研修なしで現場配属に
これは私の部下の話です。彼女は、大学卒(文系)の40代で土木未経験者。前職は期間業務職員で、今年で入社3年目です。
業界未経験の場合、新卒・中途入社に関わらず、研修期間を設けている会社が多いと思いますが、中途採用の場合、経歴によっては即戦力として期待され、なんでもできるでしょとすぐに現場に配属になる人もいると思います。
彼女は土木未経験者なのに、なぜか即戦力として、採用後の研修もなく、現場配属に。現場に出たものの右も左も分からず、当時の上司は何も教えてくれなかったので、毎日上司がしている仕事を聞いて、どういったことをしているかを自分の中で理解し、どうにかこうにか業務を覚えていったそうです。
3年目になっても基礎的なことが分からない
3年目になった彼女は、人事異動により、私の部下になりました。年上の部下で、最初はどうしたものかと悩みましたが、3年目だからある程度のことはできるだろと思い、どんどん仕事を振ることにしました。
すると、こんな質問をしてくるようになりました。
- 図面の見方が分からない
- CADの使い方が分からない
- 書類の作成方法が分からない
何度も何度も聞いてくるので、怒りそうになることもありました。過去の資料を見れば同じようなものがあるので、なぜ見ないのか?なぜ調べないのか?と疑問に思っていました。
例えば、舗装の構成です。表層が5cmのところと4cmのところがあったとします。彼女に説明を求めても「申請書に書いてあるから」と言われ、その他は?と聞くと黙ってしまいます。
どういった意図で図面を描いているのか、検討方法、どうしてこうなっているかなどは一切考えず、申請書の図面が正しいと思い込んでいたようです。
5cmは車道、4cmは歩道と舗装の仕様書及び設計便覧などに記載されています。彼女にはそういったことを理解してほしくて、申請書が出ている施工中の現場に連れていき、舗装の構成について説明をして、自分用の勉強資料としてノートに残すようにと教えています。
また、橋梁の耐震工事で吊り足場の検討についても同様で、過去5年と10年の水位より算出された水位と足場の下端との余裕高さの2mはどうして必要なのか?と問うと、彼女の回答は「申請書にあるから」でした。
しかし、河川管理施設等構造令や河川法の解説などから検討していることを伝えると、理解してくれたようで、そこから彼女はさまざまな仕様書を読むようになりました。
よく「図面の見方が分からない」と言っている彼女に、私は「現場に行って図面と現場と見て来なさい」と伝えています。それでも分からない時は、私と一緒に現場へ行って、説明して理解させています。
図面はプラモデルの説明書と同じで、この図面を基に施工しているので、時間があれば現場の進捗と図面を比較したら一番理解できると伝えています。
残業はするな、部下は時間をかけて育てなさい
私の会社では、何も知らないまま現場へ派遣されるため、新人教育に時間がかかり、忙しい上司の仕事を増やしてしまっているように感じます。
現に、私も部下の育成・指導をおこないながら、自分の仕事をしていますが、自分の仕事がほとんどできないので、残業して今日までにここまでやらないと間に合わない…となっているのが現状です。残業規制が厳しい中、私自身もサービス残業となってしまいます。
残業はするな、部下は時間をかけて育てなさいと言われても、矛盾していると思います。職場に人材が豊富にいればいいのですが、コスト削減で人が減らされて、必要最低限の人数で仕事をしている中で、新人教育など無理ではないでしょうか。
これは建設業界全体の問題だと思っています。皆さんのご意見、ご感想をお待ちしています。