皆さんこんにちは。
エンタです。
前回は鉄筋挿入工の基本構造と原理を書きました。
まぁよく分かっていない方向けなのでプロは飛ばして下さいw
現場では鉄筋挿入・ロックボルト・ボルト・「ソイルネイル(英語圏)」なんて呼ばれることもありますね。
法面や崩れそうな切土に「鉄筋をぶっ刺して」「セメントで固める」ってのがこの工法の大まかなイメージですが、
ちゃんと理屈を知っておかないと、応用やトラブル対応ができません。
というわけで、さっそく中身をチラ見していきましょう!
■ 鉄筋挿入工とは?
地山(じやま:自然のままの土や岩)に鉄筋を斜めに挿し込み、モルタルなどで固めることで「地山を動かせないように抑え込む」工法です。(抑止工)
自ら力を出す「能動的」じゃなく、地山が動こうとしたときに「それ以上動けなくする」受動的安定工法です。
■ 基本構造(構成部材)
部材名 | 説明 | ポイント |
---|---|---|
鉄筋 | D19~D38の異形棒鋼が一般的。(D51経験あり) | 長さは2〜6m程度。引張力に耐える役目。 |
削孔(さっこう) | 地山に穴をあける作業。 | 削孔角度は10〜45度下向きが多い。 |
注入材(モルタル等) | 鉄筋と地山を一体化。腐食防止にも。 | セメントミルクやモルタルを使う。(樹脂もある) |
定着部+自由長部 | 鉄筋全体で定着するので分かれていない | 鉄筋全体で摩擦力を発揮。(移動土塊・不動土塊) |
頭部プレート | 鉄筋の頭に付ける鋼板。 | 吹付け面に力を分散させる・引込まれ防止 |
■ 力の流れ(原理)
鉄筋挿入工は「引張材全体で地山を支える」という発想。
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地山がちょっと動こうとする
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鉄筋が引っ張られる
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鉄筋と注入材が摩擦で地山とガッチリつながってるので、引張り力がかかる
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結果、地山がこれ以上動けなくなる(変形抑制)
つまり、「崩れたい地山」に「引っ張って止める抵抗力」を与えるのが、この工法のミソです。
どうやって効くのか?3つの補強メカニズム
その1:引張補強効果
地山に打ち込んだ鉄筋が引張材として働きます。すべり面を貫通させることで、地山がバラバラにならないように押さえつけるイメージ。
グラウトのおかげで、地山→グラウト→鉄筋という順番で力が伝わっていきます。
その2:せん断補強効果
これは「ダウエル効果」とも呼ばれる現象。
すべり面に対して鉄筋が杭のように抵抗するんですね。
地山が動こうとしても、鉄筋が突っ張って動きを止めるイメージです。
その3:土塊の一体化
たくさんの鉄筋を適切に配置すると、補強材同士の間の地山も拘束されます。
結果的に、疑似的な擁壁みたいな構造ができあがるわけです。(疑似擁壁化)
設計で押さえておきたいポイント
配置計画について
- 水平・鉛直間隔は1.0~2.0mが標準(それ以上はグラウンドアンカーか?)
- 千鳥配置にする方が中抜けの心配が少ない
定着長の考え方
- 実際の地山に境目(移動土塊+不動土塊)は無いので基本試験をオススメ
■ 施工手順(ざっくり)
手順 | 内容 | 備考 |
---|---|---|
① 削孔 | 所定角度で孔をあける | どうしても角度が取れない場合、(鉄筋を)長くして対応 |
② 鉄筋挿入 | 孔に鉄筋を差し込む | 泥や油が極力付かない様に、クリップスペーサーなどを使用し鉄筋を真ん中に |
③ 注入 | モルタルやセメントミルクを注入 | 最底面からしっかり注入し、基本は注入口から上がるまで注入 |
④ 頭部処理 | プレート取付、吹付けコンクリートなど | 鉄筋がしっかり力を伝えられるように、緩まない程度にナットを締める |
現場でよく聞かれる「グラウンドアンカーとの違い」は、「鉄筋挿入工=受動」「アンカー=能動でジャッキで緊張力を与える」
鉄筋挿入工はグラウンドアンカー工に比べて「施工性の良さ」と「コストパフォーマンス最高」
工法 | 一言で言うと |
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鉄筋挿入工 | 「地山が動いたら止めに入る」受動的 |
グラウンドアンカー工 | 「先に引っ張って構造を支える」能動的 |
■ どっちを選べばいいか?
条件 | 向いてる工法 |
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狭い現場、住宅街、軽量法面 | 鉄筋挿入工 |
大きな切土、仮設擁壁、強い土圧 | グラウンドアンカー工 |
コスト重視、簡易施工希望 | 鉄筋挿入工 |
高い安全率と即効性が必要 | グラウンドアンカー工 |
■ 補足
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鉄筋挿入工は、モルタル吹付・コンクリート吹付、法枠工との組み合わせが一般的
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グラウンドアンカー工は、緊張力の確認試験(引張試験)がる場合が多く、施工・管理ともに高レベルを要求される。(法枠工、受圧板での施工が一般的)
- 法枠工よりも受圧板を使用した受圧構造物の方が施工性が高いがコストは上がる。
それではまた。