新入社員が辞めていくのは根性がないだけなのか?
新入社員が入社し、私たちの現場も活気づいてきた。若い世代がこの業界に飛び込んできてくれることは、この上なく嬉しいことだ。その一方で、早い段階で辞めてしまう人も少なくない。
そんな彼らを見て「根性がないだけだ」と決めつけずに、彼らの声を発信することも大切だと思い、今回は、早い段階で建設業界を辞めてしまった新入社員に匿名で話を聞いた。
入社してすぐに仕事を辞めてしまった理由
A君 早い段階で辞めてしまったのは、将来に絶望したというのが本音です。私は、入社して1ヶ月で退社しました。会社は土木の管理会社で、配属先では主に安全管理の書類や、現場の見学といったことをやっていました。
根性がないと言われればそれまでですが、私にとって、建設業界で現場監督をするということが、将来的に全く想像ができませんでした。
毎日のように職人に怒鳴られる日々、所長も経験だからと言って教育はほとんどなく、毎日言葉の意味も何をしているのかも分からず、時間だけが経っていきました。自分が現場を請け負って、多くの人の指揮を執ることは無理だと早い段階で悟ってしまったのが、大きな原因ですね。
ずっとこんな環境が続くのかと将来に絶望した
B君 この業界は、続く人も辞める人もどちらも1回は絶望するものだと思っています。所長と協力会社の関係が良い工事現場であれば、あまりメンタルがやられることはないと思いますが、ここがうまくいっていない現場だと本当に辛いです。
職人の当たりは当然厳しくなります。いわゆる、とばっちりってやつですね。これが本当に辛くて、板挟みになるんですよ。所長も職人もお互い言いづらい関係なものだから、自分が間に入って意見の交換が行われるんです。
例えば、所長が現場で設計の説明をすれば済む話も、雰囲気の悪い現場では僕を通してやり取りが行われる。所長の指示を僕がそのまま伝えると、僕が怒鳴られることも珍しくなかったですね。
そんな雰囲気の悪い現場に最初からぶち当たってしまい、将来ずっとこんな環境が続くのかと絶望してしまいました。
“新人は作業を手伝うのが当たり前”という風習に納得できず
A君 僕の場合、最初に描いた業務内容と現実とのギャップも大きな原因ですね。現場に出たらとにかく図面を一生懸命覚えて、管理業務を1日でも早く覚えようと意気込んでいました。
しかし、実際は現場の職人たちと混ざって作業の毎日。管理業務どころか、言われた道具を取りに行く始末。管理業務などほとんどさせてもらえなかった。会社の先輩方に相談すると「そんなもんだよ最初の1年は」と言われ、私の場合はどうしても納得できませんでした。
管理業務を行うために会社に入っているのに、現場での雑用、それを口にすると根性がないと言われる。業界の風潮は変えるべきだと切実に思います。少子高齢化で業界の人手不足が嘆かれている中、悪い風習を一切変えないのはどう考えてもおかしいですよね。
新人現場監督はあくまでも現場管理が仕事であって、作業が仕事ではありません。そんな当たり前のことが、新人だからという理由で無視されているのは問題ではないでしょうか。
建設業界の問題点が浮き彫りに
この彼らの声を聞いてどう思っただろうか。彼らの考えが甘い部分も確かにあるとは思うが、今回話を聞いたことで、建設業界の問題点が浮き彫りになったなと感じた。
確かに新人の彼らにとって、雑用同然に扱われることはこの上なく苦痛だろう。更には、それを守ってくれるはずの現場所長までもが黙認しているというのは、冷静に第三者から見れば異様な光景だ。
「自分たちが昔そうだったから」と言って、それが正しいとは限らない。建設業界で働く先輩として、少なくとも入社早々に絶望させるようなことがあってはならないし、せっかく建設業界を選んでくれたのだから、新入社員が長くこの業界で働いてくれるように彼らを育てていくべきではないだろうか。
施工の神様より