令和になってもなくならない威圧的な言動
建設業の生産性をどう上げていくか、頭を悩ませている方は多いのではないだろうか。そのためにICTやDXを取り入れようとしているのだろうし、きたる残業規制に備えようとしている会社もある。
一方で、相変わらず建設業では威圧的な言動を働く人が多いように思う。大手の会社の中には、「ハラスメント」と捉えられる言動を集約して、会社のイントラに公開しているところもあるようだ。ただし、名前は公表していないようだが…。
昭和の時代はそれでもよかったのかもしれない。それでうまく仕事が回っていた側面はあるし、ここまで市場は大きくなった。高度経済成長のさなかで、欧米に追い付け追い越せの時代だった。
しかし、時代は変わった。今の時代は、威圧的にこられると委縮してしまったり、心を病む人も多い。というよりも、昔からそういう人は一定数いたのだろうが、公に出ることはなかった。それが、インターネットの普及により数の多さやハラスメントのひどさが知れ渡ることとなったのだ。
仕事とは無関係なところを一生懸命?責め立てたり、中には「死んでしまえ」といった言葉を投げかけられる人もいる。私自身も、かつては「死ね」と言われたり、現場に一人置いていかれた、といった仕打ちを受けたことがある。
当時は「自分が悪いし仕方ない」と思っていたが、それを知人に話したら「そんなのは時代に関係なくアウトだ。懲戒罰を受けてもおかしくない」と言われ、ハッとした記憶がある。
委縮させてしまえば、生産的な仕事はできない
威圧的な言動は相手を委縮させてしまうだけでなく、自分で考えることができなくなっていき、人に従うだけになってしまう。たとえ間違ったことを指示されても、それに抗うことができなくなる。それでいて、間違った指示のもと仕事をして間違った結果をもたらしてしまった場合は、責任を押し付けられることも少なくない。
人は委縮してしまうと、生産的な仕事はできない。創造性も失われてしまう。目線が社内にだけしか向かなくなり、顧客が求めていることを見失いがちになる。間違った仕事をしてしまうことに直結するのだ。
これは聞いた話だが、航空機を操縦するパイロットは、機長・副操縦士という立場の違いはあるものの、操縦席に座ったら同等の立場になるそうだ。出発前に計器類や入力値などをくまなくチェックするのだが、副操縦士は機長の指示に必ずしも従うのではなく、おかしなことはおかしいとハッキリと発言する。機長は決して威圧的な言動をとるのではなく、相手の言い分を尊重しつつも自分の意見を言う。そういう風に仕事をしているそうだ。
ある機長経験者は、「腕はもちろん大切だが、人間力がそれ以上に大切である」という旨のことを話していた。相手を委縮させても何の利益にもならないことを航空業界の人たちは知っている。だからこそ、大きな事故をほとんど出さず、これまでやってこれているのではないだろうか。
建設業は「おかしなことはおかしい」と言える業界か
建設業は言わずもがな安全第一が求められる。利益を出すことは大事だが、それ以上に優先度は高い。だからこそ、威圧的な言動は控えたほうがいいだろう。
相手を委縮させてもメリットはほとんどない。安全上間違った指示があっても、それに異を唱えることができず、事故を誘発する要因の一つにもなりうるのだ。
もしかすると最近、相次いで発生している大きな事故は、威圧的な言動によって引き起こされている側面があるのかもしれない。今一度考えてみてほしい。私たちのいる建設業は、「おかしなことはおかしい」と言える業界だろうか?