鉄筋挿入工のピニング効果(根串効果)とは?|初心者でも分かる移動土塊・不動土塊と設計の考え方

皆さんこんにちは。

エンタです。

9月も今日で終わりですね。

もう一気に年末!!!

1年もあっと言う間・・・・

早い!早すぎる!!!

一瞬ですよね

私毎年この時期に同じ事言ってる気がしますwww

老害まっしぐらです・・・w


閑話休題

今回は、鉄筋挿入工の「ピニング効果」の話です。

「根串効果」と呼ぶ人もいますね。

動こうとする土の塊に鉄筋を串のように刺して、奥の動かない地山に縫い付けておく。

イメージはこんな感じです。

言葉はよく聞くのに、「設計ではどう扱われているの?」と聞かれると、答えられる人は意外と少ないです。

しかも、「ピニング効果」という言葉そのものを説明している資料は、基準書にもネット上にも、私が調べた範囲では見つかりませんでした。

でも根串効果と書くとピニング効果と出てきます。

Googleでは、

斜面の安定工法である「鉄筋挿入工(ロックボルト工)」や、地盤に打ち込む「杭」などが、すべろうとする土塊を不動地盤に文字通りピン留めして固定する力を指します。植物の根が果たす「根串効果」も、力学的にはこのピニング効果の一種です。

今回は、「地山補強土工法」と「斜面安定工指針」に書かれていることを土台に、ピニング効果が設計の中でどう扱われているのかを、できるだけ簡単な言葉で書いてみます。


鉄筋挿入工のピニング効果(根串効果)とは|図で分かる基本

まず、言葉を2つだけ覚えてください。

  • 移動土塊:崩れて、斜面の外へすべり出ると考える土のかたまり
  • 不動土塊:その奥にある、動かないと考える地山

この2つの境目がすべり面です。(今の日本の切土補強土工での一般的な考え方ですね)

鉄筋挿入工の鉄筋は、このすべり面を貫いて、移動土塊から不動土塊まで刺さっています。

みたらし団子の団子の玉(移動土塊)に串(鉄筋)を刺して、串の先を動かない地山(不動土塊)まで差し込んでおけば、団子は下へ転がっていきません。

ピニング効果、根串効果のイメージはこれです。

移動土塊と不動土塊に鉄筋を串刺しにしたイメージ図

続いて、土が動こうとした時に、鉄筋にどんな力がかかるのかです。

書籍では、次の4つに分けています。

  • 引張り:綱引きの綱のように、引っ張られる
  • 圧縮:突っ張り棒のように、押される
  • せん断:ハサミで切られるように、横にずらされる
  • 曲げ:定規を曲げるように、しなる

どの力が主役になるかは、鉄筋とすべり面の角度で決まります。

水平に近い向きの鉄筋には主に引張りが、鉛直に近い向きの鉄筋には圧縮が、すべり面とほぼ直角に交わる鉄筋には主にせん断や曲げの力がかかる、と書籍には書かれています。

鉄筋に掛かる主な圧力は角度で変わる

せん断と曲げのどちらが出るかは、地山の硬さ次第です。

岩盤のように硬い地山では、すべり面の所だけで鉄筋がスパッと段違いにずれます(せん断)。

緩い土砂では、鉄筋全体がしなやかに曲がります(曲げ)。

書籍では、実際に回収した補強材の変形の仕方から、せん断や曲げの効果を推定できるとしています。

ピニング効果、根串効果とは、このせん断と曲げのことだと解釈してイイと思います。

あくまで私の解釈ですw

串が横から押されて、踏ん張っている状態ですね。

鉄筋にかかる4つの力(引張り・圧縮・せん断・曲げ)


設計で計算するのは「引張り」だけ|引き止め効果と締め付け効果

設計では考える補強効果を引張りだけにしています。

せん断や曲げは、実際には働いていても、設計計算には入れていないんです。

書籍に書かれている理由は、次のとおりです。

  • 安全側で考えたいから
  • せん断や曲げは、研究がまだ足りないから(研究の進展を待ってから取り入れる扱い)
  • 効き方がバラバラで、単純に足せないから

3つ目が大事です。

硬い地山なら、せん断は土が動き始めてすぐ効き始めます。

ところが軟らかい地山だと、曲げはかなり動いてから、じわじわ効いてきます。

しかも曲げが効くには、鉄筋に押された前の地盤が踏ん張るところまで、大きく変形する必要があります。

書籍には、変形が許されない場所で曲げの効果を期待するのは危険、とまで書かれています。

自治体が公開している鉄筋挿入工のマニュアルにも、引張り・せん断・曲げは複合して働くと考えられるが、原則として引張りだけで評価する、と書かれたものがあります。(まぁ参照している書籍はほぼ地盤工学会?)

同じマニュアルには、岩盤ではせん断に対しても確認を行う、という記載もあります。

では、その「引張り」で、設計は何を見ているのか。

ここで出てくるのが、引き止め効果と締め付け効果です。

  • 引き止め効果:すべり落ちようとする向きに、真っ向から逆らう力
  • 締め付け効果:すべり面を押さえつけて、土同士の摩擦を増やす力

式にすると、次のとおりです。

引き止め力=T×cosβ

締め付け力=T×sinβ×tanφ

Tは鉄筋の引張り力、βは鉄筋とすべり面のなす角度、φは土の内部摩擦角です。

今は「cosが引き止め、sin×tanが締め付け」とだけ覚えておけば設計計算書みたときにフムフム出来ます。

引き止め効果と締め付け効果の違い

ところで、鉄筋挿入工は、最初から理屈がハッキリしていた工法ではありません。

民間の地質コンサルタントの技術レポート(1999年)によると、1980年代より前は「差筋」と呼ばれていて、原理は分からないけれど確実に崩壊を抑える効果がある、という理由で使われていたらしいです。

その後、実験や研究が進んで、「2㎡に1本」という目安が生まれたとされていました。(そのレポートでは)

「2㎡に1本」は、斜面安定工指針の経験的設計にも載っています。

ただし、この経験的設計は、深さ2m程度の浅い崩壊に限った話です。

そして、「2㎡に1本」はさも実験や研究とされてますが、実際は適当って作った本人が言っていたので、実は適当。

ただ、それで滑らなくなったからと言う経験的手法とはまさにコレですねwww

 

「原理は分からないけど効く」から始まった工法だから、今も計算に入っていない力が残っている。それがピニング効果?。

同じレポートには、想定したすべり形状が合っていれば、施工した対策工が壊れた例はない、とも書かれていました。

一方で、すべり面の形や壊れ方を見誤った崩壊例はいろいろある、とも書かれています。

つまり、計算に入っていない分は、あくまで「おまけの保険」です。

逆に言うと過剰設計でもあるし、それのお陰で助かっている山も有るという事ですねw(保険に保険を掛ける日本の設計)


移動土塊と不動土塊で決まる許容引張り力|T1paとT2paとはなんじゃ?

では、鉄筋1本がどれだけ引っ張りに耐えられるかは、何で決まるのか。

鉄筋は、すべり面をまたいで2つの土に刺さっています。(あくまでも想定では)

だから、壊れ方も2パターンあります。

  • 引き抜け:鉄筋が不動土塊から抜けて、移動土塊と一緒に崩れる
  • 中抜け:鉄筋は抜けていないのに、土が鉄筋と鉄筋の間をすり抜けて崩れる

斜面対策の技術指針でも、この2つの壊れ方に備えて設計しています。

引き抜けと中抜け

設計は、この2つの壊れ方に備えて、次の3つの値を調べます。

  • T2pa:不動土塊側の抜けにくさ
  • T1pa:移動土塊側の抜けにくさ
  • Tsa:鉄筋そのものの強さ

T1pa、T2paは、書籍で「許容引抜き抵抗力」と呼ばれています。

「何kNまで引っ張られても抜けない」という数字です。

T2paとは|不動土塊側の「抜けにくさ」

畑にネギを刺して、引っこ抜くところを想像してください。

深く刺さっているほど抜けにくいですよね。

土が固いほど、これも抜けにくくなります。

T2paは、これと同じ考え方です。

T2pa=L2×Tpa

L2は不動土塊に入っている鉄筋の長さ、Tpaは鉄筋1mあたりの抜けにくさです。

Tpaは、次の2つのうち弱いほうで決まります。

  • 鉄筋とグラウトがくっつく力(付着)
  • グラウトと地山がこすれ合う力(摩擦)

例で考えてみましょう。

長さ3mの鉄筋を打つとします。

すべり面が深さ1.0mにある設計なら、不動土塊に入る鉄筋は2.0mです。

もし実際のすべり面が深さ1.5mだったら、不動土塊に入る鉄筋は1.5mになります。

地質が同じなら、T2paは2.0mから1.5mへ、つまり75%に減ります。

鉄筋は斜めに刺さっているので、実際の数字は少し違います。

考え方だけつかんでください。

書籍の式で計算に入っているのは、鉄筋の周りの付着と摩擦だけです。

不動土塊に入る鉄筋の長さと抜けにくさ

T1paとは|移動土塊側の「抜けにくさ」

移動土塊側は、鉄筋が入っている長さが短いので、鉄筋の周りだけで見ると、抜けにくさはどうしても小さくなります。(抜けやすい)

そこで、頭のプレートやのり面工が土を押さえ込む力(T0a)を足して考えます。

法面が硬いほど、この押さえ込む力を多く見込めます。

指針では、高速道路の基準の考え方を使って、法面工の種類ごとに、下記の数字(法面工低減係数μ)が書かれています。

法面工の種類 μの目安
植生工 0
コンクリート吹付工 0.2〜0.6
のり枠工 0.7〜1.0
擁壁工(連続した板タイプ) 1.0

数字が大きいほど、移動土塊側の抜けにくさを多く見込めるということです。

書籍では、擁壁のような硬くて連続した壁を使う場合、移動土塊側は抜け出さない扱いになります。

斜面安定工指針にも、吹付枠工相当以上ののり面工を使えば、移動土塊側の検討を省いてよいと書かれています。

ただし仮設でも安定を十分に考えることと書いてます。

許容引張り力は3つのうち一番小さい値で決まる

鉄筋1本の許容引張り力は、次の3つのうち、一番小さい値で決まります。

  • 鉄筋そのものの強さ(Tsa)
  • 移動土塊側の抜けにくさ(T1pa+T0a)
  • 不動土塊側の抜けにくさ(T2pa)

吹付枠や擁壁のように硬いのり面工を使う場合は、移動土塊側を除いた2つで決まります。

輪が3つつながった鎖を思い浮かべてください。

引っ張ると、一番弱い輪から切れますよね。

鎖全体の強さは、一番弱い輪の強さで決まります。

これと同じです。

許容引張り力は3つのうち一番小さい値で決まる

だから、3つのうち1つだけ強くしても、他が弱ければ許容引張り力は増えません。

たとえば不動土塊側(T2pa)が一番小さい設計なら、鉄筋そのもの(Tsa)を強くしても、許容引張り力は増えません。

ただし、T2paがいつも一番弱いわけではありません。

どの輪が一番弱いかは、現場ごとに違います。

設計書を見る時は、この3つのうちどれが一番小さいのかを知っておくと、ちょっと知れた気になれますw(最初はその位で良いんです)


ピニング効果を支える頭部と法面工|受圧板の役目

串が串として働くには、頭を押さえる必要があります。

書籍の参考資料に、移動土塊が緩い条件での模型実験が載っています。

鉄筋の頭に支圧板がないと、鉄筋の頭が回転して土の中にめり込んでしまいます。

支圧板があると、鉄筋が曲がりながら踏ん張ります。

つまり、頭を押さえて初めて、鉄筋は串として横からの力に耐えられるわけです。

ワイヤやネットでも、鉄筋の頭の回転を抑えて土の塊を引き留める効果(引留め効果)があるとされています。

実験では確認されているものの、数字で評価するところまでは至っていなかったそうです。

ただし、実際の受圧板サイズは30㎝×30㎝程度で十分だとは個人的には思っていますw

支圧板の有無で変わる鉄筋頭部の動き

頭部の施工にも、ピニング効果を効かせるための決まりごとがあります。

指針では、次のように書かれています。

  • ナットは、グラウンドアンカーのように緊張力を入れるためのものではありません。ただし、緩みが出ないよう、人力で十分に締め付けます。
  • 締め付け力の目安は、トルクレンチで設計引張り力の50%程度とする。(この考えはイマイチでトルク低い時もある)
  • セメントミルクは流動性が高く、孔口に空洞ができやすいので、硬練りモルタルなどで充填します。空洞を放っておくと、孔口の付近の地山が緩んだり、鉄筋が錆びたりします。(シースを入れると空洞になる為リスクでメーカー責任)

監督が現場で大事な部分|設計とつなげて考える

すべり面の深さは、ボーリングやパイプ歪計などの調査で「たぶんこのあたり」とあくまでも推定したものです。(明確に出る場合もありますがw)

本当の位置は、誰にも分かりません。

実際、浅い表層を削孔していても、土質が変わったなんて手応えでは、ほとんど分かりません。

だから現場での施工で大事な部分はココ。

  • 設計どおりの位置・角度・長さで削孔する
  • グラウトをきちんと正確な配合でしっかり底部から注入する
  • 頭部処理を正確に行う

実はこの3つ、さっきのT2paやT1paの話に、そのまま出てきた項目です。

削孔の長さは、T2paの「L2」です。

注入の出来は、鉄筋1mあたりの抜けにくさ「Tpa」を左右します。

頭部は、移動土塊側の「T0a」と、ピニング効果の土台になります。

こうして設計とつなげて考えると、「なんでここを見るのか」が、若い監督さんにも説明しやすくなります。

トルクレンチ

打った鉄筋1本1本の抜けにくさは、見た目では分かりません。

そこで、引抜きの受入れ試験があります。

指針では、任意に抽出した全本数の3%かつ3本以上を、設計引張り力まで載荷して確認する。

って有りますが、ぶっちゃけこれも絶対に抜けないですし、鉄筋は伸びませんw

伸びているのはカップラーの緩みw(昔は無かったこの管理・・・)


なんかこ難しい事ダラダラと書きましたが、設計書の中身を説明しつつピニング効果(根串効果)を書いてみました。

簡単に書きますね。

柔らかい地盤に硬い鉄筋や杭などを入れると地盤全体が強くなるって事だけですw

こんな事を面倒くさく書いてみました。

最近はAIも手伝ってくれるので、私がダラダラ書いた記事を綺麗にしてくれます。

ただ、長い。。。

 

それではまた。

 

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