今年も各地で相次ぐ豪雨災害
今年は梅雨明けが早かったと思っていたら、8月に入って豪雨災害が相次いだ。橋梁が流されたり、斜面が崩壊して土石流が発生したり、床上浸水が発生するなどの被害が各地で起こった。
その中でも、新潟や福井で発生した豪雨による災害は甚大なものとなった。各地で斜面崩壊が発生して道路が寸断されたのだ。
国道8号では福井県内のトンネル両坑口で斜面崩壊、北陸道でも斜面崩壊が発生し、いずれも通行止めとなる事態となった。上記以外にも国道で通行止めが発生し、北陸から関西にかけて大きく迂回していかなければならなくなった。
新潟県村上市では、55年ぶりに床上まで水に浸かった。過去の水害を教訓に死者や行方不明者は出なかったものの、多くの住宅が水に浸かることとなり、被害は大きい。農作物への影響も甚大である。
豪雨時の斜面崩壊に対する災害復旧事例
豪雨による災害はここ数年、各地で発生している。そして、その都度、災害復旧に追われている。災害復旧の事例は枚挙にいとまがない。
その中で、ある報文に目が留まった。地盤工学会の学会誌に掲載された報文で、令和元年の台風19号豪雨による災害復旧事例だ。
高速道路の脇の斜面が崩壊し、道路に土砂が流れ込み、通行止めとなった。応急復旧により一部車線の早期解放を行い、1車線を規制して本復旧を行った事例である。
復旧工事の詳細はこうだ。まず、資材を比較的容易に手配できる工法である親杭横矢板による土留めを施工し、さらなる斜面崩壊に備えた。それにより本線を早期解放した。親杭横矢板による土留めの背面には、土砂崩壊に備えて、崩落した土砂を貯留するスペースを確保していた。
次に本復旧として、グラウンドアンカー等による斜面補強を実施。斜面崩壊の原因として地下水位の上昇が考えられたため、地下水位の上昇を考慮し、飽和時の安全率を設定してグラウンドアンカーの設計を行っている。
さらに、未崩落部分には水抜きボーリングを施工して、地下水位上昇の抑制を図った。法面勾配は、グラウンドアンカー施工範囲は急勾配、下部の法面は緩勾配としている。
過去事例の活用も検討すべき
災害復旧は、スピードが求められる。施工はもちろん、設計も同じだ。正確性は必要だが、それ以上にスピーディーな仕事をする必要がある。できるだけ早く検討、設計、積算を終わらせて、施工に入らなければならない。
そのために、過去の事例の活用を検討してみてはどうだろうか。「いやいや、そんなのもうやってるし!」という方もいらっしゃるだろうが、案外やれていないものである。
目の前の仕事に追われて、過去の事例の把握まで目がいかないのかもしれない。それはわからなくもない。ただ、忙しい時こそ一歩引いて、過去の同様の事例があれば、どうやっていたのか?を活用することは有効ではないかと思う。