退職理由として多い人間関係。建設現場においても、現場所長と職人のギスギスした関係性に悩んでいる新人も多いのではないだろうか。
全ての現場がそうというわけではないが、所長も職人も人間だ。馬が合わないことだってある。
今回は、現場所長と職人の板挟みにあった実体験を話していこう。
初現場で感じた違和感
建設業界に入ったのは約8年前。23歳で就職し、初現場は元請けの現場監督として河川工事に携わった。
河川工事の進捗中に配属されたのだが、配属初日にして、私はある現場の違和感に気付いた。
現場所長が職人への指示出しに私を「使う」のだ。
新参者の私はそれが普通なのだと思っていたが、指示を伝えに行くたびに、職人の舌打ちが聞こえる。
「所長は?ええよな、涼しいところでPCカタカタやってんの?」
そう強い口調で言われた。私は戸惑いながらも指示を伝える役割を続けた。
板挟みになっていることを自覚
そんなことをしばらく続けていると、職人との仲が深まり、徐々に休憩中などに一緒に飲み物を飲んだり、話す機会が増えていった。
休憩中には決まって現場所長の愚痴大会が始まる。
「あの所長は終わってるな。現場のことを全く分かっていない。お前もそう思うよな?」
私は返事に困った。私にとっては所長は悪い人間ではなかったからだ。
ここでようやく所長と職人がいがみ合ってことを理解し、同時に、今いる自分のポジションがとても窮屈なポジションであることを自覚した。
しわ寄せがきて事件勃発
ある日、私がどうしても許せない事件が発生した。
「おい材料の数が足らねぇぞ。発注ミスしてるぞ!」
朝礼後、職人の怒号が鳴り響いた。
何度確認をしても、確かに設計数量との差異がある。すぐに所長に確認すると「後で対応する」と言われ、現場に戻ると、ピリついた職人たちが一斉に私に罵声を浴びせてきた。
「どうなってんだ!所長にお前も確認しろ!ふざけるな!」
頭に血がのぼった。私からすれば、所長と職人のコミュニケーションが取れていない腹いせを、全てぶつけられているような気がしたからだ。
理不尽を受け入れる必要はない
耐えきれなくなった私は、すぐさま現場であったことを会社の上司に報告することにした。現場の状況を知った上司はすぐに対応してくれて、状況が落ち着くまで現場に顔を出すようにしてくれた。
結果、元請けの上の人間が出てくると、職人も今までのように私に対して言っていた愚痴も言える状況ではなくなり、なんとか穏便に現場は完工することができた。
当時、新入社員の私としては、現場のことを会社の人に報告するのは非常に勇気がいる行動であったが、結果的に環境が改善されたので良かったと思っている。あのまま現場の不満を我慢して何も対応しない状態だったら、確実に良くない方向にいっていただろう。
――このように現場で所長と職人の板挟みになっている新人は多いように思う。ひどい状況になると、ミスの責任を全て若手が取らされて、謝罪しているカオスな現場も見たことがある。
現場で発生する問題の責任は現場所長にある。それがどんなことでも、部下のミスであったとしても、責任を取るために所長が存在しているのだ。
そのことを理解できていない所長も意外と多いので、勇気が必要だが、見て見ぬふりをせず声を上げる姿勢を忘れないようにしよう。新人だからといって理不尽を受け入れる必要はない。
施工の神様