“存在する”だけでも大きなプレッシャーが伴う
みなさん、新人時代の記憶はありますか?
僕には、同じ部署の同期が1人いました。お互い4年生の大学を卒業し、建築業界に入りました。僕はぱっと見マジメに仕事をしそうなタイプ、もう1人はやんちゃなタイプでした。
見た目のスタート地点では、僕のほうが有利に見えましたが、実際の仕事ぶりを見ると、彼はコミュニケーション能力も優れていて、現場監督らしい動きをしていました。一方、僕はコツコツと知識を積み重ね、理屈で攻めていくタイプでした。それでも、両方ともそれなりに仕事ができたと思います。
現場に配属されるとき、どんな先輩に付いて、どんな環境になるかわからない不安から、毎日ドキドキしていました。最初の2、3ヶ月は、「本当にこのままで大丈夫か?」という不安に駆られながら行動し、毎日緊張とストレスでめちゃくちゃ疲れたことをよく覚えています。
新しい環境へ飛び込むとき、人は必ず一定の勇気を必要とします。特に、専門的な分野で、知識が深いプロたちの中に入るときは、ただそこに「存在する」だけでも大きなプレッシャーが伴うものです。
当然何をしていいのかわからず、あたふたしていても、現場が淡々と進んでいくのです。新人は、常に自分だけが取り残されるような気持になり、非常にストレスが溜まるものだと思います。
「悪いが土曜日出てくれないか」
ご存知の通り、過度に働くことは生産性を低下させると言われています。残業が増えれば、仕事の効率は落ちていくわけで、これは長時間の集中作業と、持続的な思考による疲労から生じるわけです。
先ほどから述べているように、新人は、単に職場に存在するだけで、体力を消耗します。仮に先輩より早く帰ったとしても。仮に先輩よりも若く活きが良かったとしても。新人の体感は、あなたのそれとは全く異なるのです。
そんな中、たとえば1年生に「悪いが土曜日出てくれないか」と言った場合どうでしょうか。
その消耗は計り知れないものであり、嫌になるでしょう。だからこそ、仕事に慣れている先輩や上司側は、新人が早く帰れるようにしたり、強制的に休憩を取らせたりすることが大切なのです。
とはいえ、単に「休んでいいよ」と言われても、新人は休憩のルールさえわかりません。どう過ごして良いのかわからず、結局休まらないこともあります。先輩であれば、自由にゲームをやったりスマホを見ることもできるでしょう。でも新人にはその判断ができないのです。ここを理解してあげてください。
「この時間は○○をしても、△△をしても良い」という、具体的なメッセージを伝えることで、やっと安心して休めると理解しましょう。最初だからこそ、やっていいこととダメなことを、自信をもって行動できるようにサポートすることが重要なのです。
新人は思っている以上に疲れている
改めて言いますが、新たな環境に慣れるには時間がかかります。それをできるだけ短くしてあげるよう配慮するのが、先輩や上司の役割だと思います。そこからが、ようやく力を発揮できるようになるのですから。
そして将来、先輩になり後輩ができた時、彼らも同じような配慮ができるようになっていくのです。
過保護だという人もいるでしょう。ですが、それではパフォーマンスがさがりますよね。お互いに。相手の気持ちを汲み取り行動できるのが社会人。それを、新人に対してやってあげれば、きっと学んでくれることでしょう。・・・何とも言えませんが。
改めてお話ししましょう。新人は、皆さんが思う以上に疲れます。疲れはストレスを呼び、余計なことに悩む気持ちを生みます。結果、定着しづらい環境が整ってしまうのです。
まずは素早く慣れてもらう。そして本来の力を発揮してもらう。全てはそこからです。何より、そのほうが皆さんにとってもメリットは大きいのではありませんか?