建設業なんか入るもんじゃない?
つい先日、たまたま入った飲食店でこんな会話が聞こえてきた。
「建設業なんか入るもんじゃない。ましてや、施工管理などもってのほかだ。残業も多いし、体や精神的にも良くない。」
これを聞いた私の率直な感想は、いまだに建設業や施工管理はこのようなイメージを持たれているのか、と悔しい気持ちになった。
建設業なんか入るもんじゃない。本当にそうだろうか?
印象に残っている災害復旧工事
これは、土砂崩れを復旧する工事に当時手元として配属されていた時の話だ。
土砂崩壊した場所の真上にある家に住む住人から、「自分の家ももたないので、今回の工事と一緒に何か措置をしてくれ」と言われたことがあった。
確かに、住人の家の真下は土砂が崩壊して断崖絶壁状態。次に大雨が降れば、家が崩壊してもおかしくないような状況だった。
しかし、我々が受注していたのは公共工事で、当然発注者は「民間の土地の補修はできない」とキッパリと断っていた。災害で苦しむ人を目の前に何もできないのかと、心が痛くなったことを覚えている。
所長が驚きの行動に
発注者が帰宅した後、当時の現場責任者である所長が住人の家を訪ねて、こんな提案をした。
「さすがにお金はかかるが、材料費だけで吹付の復旧をするのはどうですか?」
これには驚いた。自分の工事とは関係のない仕事を提案し、当たり前のように人助けをしようとしていたからだ。
所長には古くからの土建屋の知り合いがおり、災害がひどい時には土建屋と手を組んで、慈善活動をしていたそうだ。
自分の仕事が大変な状況の中でも、こういった機転が利くのは素晴らしいことだ。
土木は人の命を守る仕事
その時所長に言われた、「土木は人の命を守る仕事」という言葉を今でも鮮明に覚えている。
災害が発生した時にはいち早く現場で災害復旧をし、次に災害が起こらないように工事をする。間違いなく世の中のインフラを守っているのは、我々土木従事者だ。
日々の作業では単なるモノづくりと感じてしまうことも多いだろう。だが、完成した構造物は、自分自身も含めて多くの人々の命を守っていることを、完成してから実感することも多い。
本当のやりがいを見つけることはどの仕事においても簡単ではない。しかし、土木の仕事は、やりがいを感じやすい仕事であることは間違いない。
生活に欠かせないインフラを整備している私は、自分が施工した現場を車で通ったり、見たりするたびに誇らしく思うし、当時の現場を思い出す。
土木は楽しく、やりがいのある仕事だ。これは、土木従事者の私が胸を張って言えることである。